3.壊滅
「なるほど……」大柄な兵は納得したようだった。
「ああ、それで、何があった?」ジャニィがペンを取り出した。
「何があったって言われても、我々にもなにがなんだか……」兵士も困り顔だ。
「起こったことを言ってくれ」ジャニィが促す。
「そうだな。明け方だよ。そこの詰所でいつものように寝ていた。当直だったからな。
そうしたらいきなりだ、凄い音と共に吹き飛ばされた。もう何がなんだか分からなかったよ。
気づいたら詰所はバラバラだし、隣で寝ていた部下の姿もなかった」
「詰所がバラバラでよく無事だったな?」ジャニィは大柄な兵士をまじまじと見た。
「あー、当直の交代が近かったから、鎧を装備したまま寝ていた。たぶんこれがなかったら死んでいたよ。まあ、これを着てても外にいたらソタイのようにダメだっただろうが……」
大柄な兵士が涙ぐんだ。
「ソタイ?」ジャニィが聞いた。
「ああ、当直で橋にいたやつだよ。ちくしょー、俺が見に行った時にはもう……」
「そうか、すまない。ところで、あれは?」
ジャニィはペン先で市庁舎のあった方を指した。
「吹き飛んださ。あそこが一番酷い。たぶんあそこで爆発が起こったんだろう。見てみろ、市庁舎を中心に街の四分の一が吹き飛んでる。いったいどんだけの人が犠牲になったのか……」
ジャニィは改めて市庁舎の方に目をやった。
兵士の言うように、どうやら爆心地は市庁舎らしかった。
ユガレスが占領していたムン川東の市庁舎区が壊滅している。
「なあ、ユングル薬剤商は、どうなったかな?」ジャニィがペンを走らせながらつぶやいた。
「うん? 薬剤商? 市庁舎の隣にあったやつか?」
「ああ」
「ダメだろうな。薬剤商どころか、ユガレスは、フッカ王も含めて、ほぼ全滅だろうな」兵士が首を左右に振っている。
「なに? フッカ王も市庁舎にいたのか?」ジャニィは聞き返した。
「そうだ。知らなかったのか? ユガレスが侵攻した後は、市庁舎が王城となっていた。ユガレスの中枢はほとんどここだったんだ。これでは一網打尽だな。他国とはいえ、気の毒なことだ」
「ユガレスは終わりかな?」ジャニィは探りを入れた。
「だろうな。フッカ王亡き後のユガレスじゃオークの餌食だろ。たぶん、このどさくさに紛れてユガレス侵攻の準備でも始めるんじゃないか?」
兵士は壊滅した市庁舎を遠い目で見ている。
ジャニィは急いでペンを走らせた。
「真暦1499年5月フッカ王死亡、またこれと同時にユガレス軍壊滅、オークの侵攻が懸念される。か……」




