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内省随筆  作者: 近藤 回
本章

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2、書き進め方、物語の構築

 創作意欲が本当にあるときは、登場人物たちが私の頭の中でつらつらと会話をしだす。場面設定はあまりなく、登場人物がひとりの場合は、その登場人物の思考、考えがまるで私の思考のように、私の頭の中で音読される。溢れてくるので急いで書き留めるが、書いてみると意外と文章量は少ない。会話などをそのままつづけさせると、長くてもだいたいA4ノートを二、三頁くらい書いたところで止まり、無理につづけさせると内容が薄く詰まらなくなる(ネタの書き出しはもっぱらノートに書き殴る)。会話や思考の内容はもちろん小説の内容に沿うものばかりだが、中にはいわゆる余談のただの自慢話もあり、何故その話をするのかと首を傾げるときもあるが、面白いのでそのまま話をさせる。


 これらを既存の設定の中に、どう小説の中に埋め込むかがとても面白い。むしろ自作「ミネルバ」はこれありきで話を作っていた。決まっている設定と書き殴った会話以外の空白の部分は、パソコンに向かいワードを開いてからの勝負で、とにかく音楽を聴いて自分の気分を上げて思考に任せるしかない。こうしてこの文章を書いていると、どうやって小説の文章を書いていたのか、よくわからない。時間を置いて見返すと、よく思い付いたな、書けたなと思う。自分がこの文章を書いたのだ、とはあまり思えない。初めて見る文章ではもちろんないが、間というか、デジャヴの反対のジャメヴの弱い反応というのか、自分と他人の間くらいの位置にあるように自分の文章を感じてしまう。いや、むしろなにも感じていないのだろうか。そういえばデジャヴも年に数回ある。この間イラストを描いているときにあったが、あの感覚は本当に気持ち悪いし、こわくなる。まるでそのイラストを描くことはあらかじめ決まっていたことのように思えて、ゾッとする。


 ちなみにプロットは「ミネルバ」の第三部に限っていえば、一章につき平均九行くらいの文章量。六章あるので五十四行ほど。余白もたくさんある。自作「Our Alice」は、一章につき四行から五行しかなかった。


 実際に書いた「ミネルバ」の第三部、第一章のプロット。

(あらすじに書いている内容と被っているので、それほどネタバレにはならないと判断)

挿絵(By みてみん)

 完成したものとは内容の違うところがある。


 ほかには、プロットをもとにして思い付いたこと、これから書くことを箇条書きにして、書けたら先頭にレ点をし、まだ書けていないものは先頭に〇をして後日に持ち越した。あくる日も思い付いたこと、書きたいこと、書かなければいけないことを箇条書きにし、同じように処理、の繰り返し。内容に詰まりそうになったときは、とにかく問題点をノートに書き出し、それらがどういった過程になりそうか複数の候補をフローチャートのように書き出し、内容に筋が通り、かつ自分が納得するほうを採用した。登場人物が頭の中で会話をしても本編では盛り込むことができなかった内容は、番外編でここぞとばかりに採用した。もったいないから。


 昔、話というのは最初と最後を先に作って、あとから真ん中を埋めていくとうまく作れる、というようなことを聞いたが、それを実践できているようないないような、よくわからない。この文章を書くまでそのことはすっかり忘れていた。確かにプロットは決めていたものの、内容は割と流動的で、ある章の半分はボツになり、想定していた結末は変わってしまった。番外編に至っては見切り発車をしてかなり苦しんだ。いや、話の大筋は決まっていた……のか? そういえば最後まで結末のある部分をどうするか悩んでいたのを思い出した。悩みに悩んで、登場人物の性格からくる行動に半分任せた気がする。“登場人物のための話”だったからできたようなものだ。


 結構行き当たりばったりな作り方をしている気がしてきた。それでもなんとかふたつほど完結した話が作れているのは、やはり創作意欲によるところが大きいように思う。私の場合は、周りの期待に応えようとするとかえって自分が潰れる。誰もかけていないプレッシャーに焦り、勝手に負ける。私の創作意欲は、話そのものに対する愛着や使命感など、小説自体に向ける気持ちによるところが大きい。あとは書いていて自分が楽しいかも重要である。趣味であり、半ば特技でもあり、もっと言うとライフワークみたいなものだから、書いていて楽しくないのはつらい。書きたいと思っていて、なおかつ文章が無理なく書けるときは、本当にこころが充実する。書きたいと思っていても何故かことばが出てこないときがあるので、こればかりは運なのかもしれない。

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