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女性は可愛い物には激しく目が無い。

大変お待たせしました。

 女が三人寄れば姦しいという言葉が昔あったらしいけれど、意味は良く知らない。

 ……だけど、意味は今この現状と同じような感じなんだろうなとオレは思う。


「きゃ~~~~っ!! 可愛いです可愛いですよぉ!!」

『これっ、樹! 落ち着くが良い! 興奮しすぎておるぞっ!!』


 鼻息荒い樹之命さんがオレを抱き抱えて頬ずりしており、そんな彼女を咎めるように下級神である半透明の命さんが叫んでいるのだが、聞く耳を持っていない。

 とか思っていると、オレの体は誰かに引っ張られるようにして……樹之命さんから離れて行った。


「ぎゅえ……!」

「うぉ! だ、大丈夫かエルサァ! あの女の締め付けが苦しかったんだな! 安心しろ、わたくしが大事に天然記念物並みに大事に扱ってやるからよ!!」


 どうやら、サンフラワーさんが樹之命さんからオレを奪い取ったらしい。

 しかも、彼女が引っ張って呻き声を上げたというのに、樹之命さんに責任がある風に取っている。

 当然その売り言葉に買い言葉、自分では愛らしいとか何とも思っていないのに、愛らしい幼女の可愛らしさに魅了された樹之命さんがギロリとサンフラワーさんを睨み付けた。


「サンフラワーさん! いきなりエルサさんを奪い取ってどういうつもりですかっ!? エルサさんだって、うちと一緒のほうが安心していたじゃないですか! それを横から奪い取ったくせに、うちが悪いみたいなことを言って!?」

「あぁんっ!? てめぇ、わたくしに意見しようと言うのか!?」

「しますよ! 可愛いエルサさんを独り占めなんてさせるわけには行きません!!」


 おぉ、サンフラワーさんのメンチを正面から受けても樹之命さんが立ち向かっている!?

 男のオレでさえも怯えるような虎の威圧を感じるのに! それなのに、樹之命さんはぁ!!

 そんな一矢即発しそうな状況の中、パンパンと手を叩く者が居た。


「ハイハイ、そこまでにするネ! 今は食事とって、英気養うのが先ヨ!」


 そう言ったのは、チャイナドレスが眩しい嵐牙さんだけど、こんな感じの喋りかただったんだなぁ。

 というか、いったい何を作っているのだろうか?

 ――いや分かる、餃子だ。理由は彼女が自信満々に答えていたからだ。

 そして、その隣のコンロでは米が炊かれている。……良い香りだぁ。


「いや、食事なんかよりもエルサをだな!」

「そうです、エルサさんのほうが大事です!」

「ごはんたべりゅの、しゃんしぇいだ」

「「ですよねー! 今はご飯を食べましょう!!」」


 オレの言葉に手の平返しよろしくと、樹之命さんとサンフラワーさんが笑顔を作りながら椅子へと座った。

 ……ちょろいぜ。

 そう思いながら、オレは改めて周囲を見渡す。

 何と言えば良いのか分からない表情をしたブシドーと、瞑想しているのか目を瞑っている流星さんの2人は既に椅子に座っていた。

 イーゼ? 彼女も、まだ意識がフワフワしているのかボーっとしながら椅子に座っている。

 ……そして此処はイースの集落の中に残っていた民家の一軒で、そこでオレたちは休んでいた。

 ジ・ゴールド? あのクソジジイは家の前に簀巻きにして、地中に首以外を埋めている。

 時折声が聞こえるから逃げていないだろう。というか、逃げれないような対策をしているはずだ。

 とか思っていると、嵐牙さんの食事の準備が終わったようでテーブルへと料理が載った皿が置かれていく。


「はい、お待ちどうさま! 熱いから気をつけてネ!! それと、ごはんはどれだけ欲しい!?」

「おーみょり!」

「食べきれないでしょ? 半分にするヨ!」

「うゅ~~……」


 オレの願いは届かず、嵐牙さんにおにぎり1個ほどの量をよそわれた。

 そんな中、他のメンバーたちも食べるご飯の量を口にしていく。


「拙者は普通でお願いする」

「我も普通……いや、大盛りで頼む」

「普通サイズで頼むわ」

「うちも普通でお願いします」

「我も普通の量でお願いするのだー……」

『わしは――

『『お前には聞いていない!!』』


 外から聞こえたクソジジイの声にツッコミを全員がいれ、食事が開始される。

 炊き立てごはん、焼き餃子、鶏がらベースの塩スープの水餃子だ。

 まるで、辛抱たまらない。という風に周りからゴクリと喉を鳴らす音が聞こえる中で、声が上がった。


「それじゃあ、食べようヨ! イタダキマス!!」

『『いただきます!』』


 パンと手を合わせ、一斉に挨拶をすると食事を開始する。

 ……が、問題が一つあった。その問題とは……、小さくなっているオレの手が長い箸を上手く掴めないことだった。

 更に言うと、周りの女性陣が超絶過保護になっていることもある。

 その結果どうなっているかと言うと……。


「エルサ、餃子食べるか? わたくしが食べさせてやるからな!」

「サンフラワーさん! その餃子は熱々すぎてエルサさんの可愛い舌が火傷するじゃないですか! ほら、うちの餃子は皮を開いているので中も冷めていますから安心ですよー!」

「く、くそう! そうだったぜぇ!! だったら、こっちだ! ふ~、ふ~~! ほら、エルサ! スープだスープ!!」

「ひ、ひとりで食わしぇてくりぇえ……!」

「「器をひっくり返したりして火傷したら困るだろ(じゃないですか)!?」」

「うぅぅ…………」


 サンフラワーさんと樹之命さんの2人がオレにご飯を食べさせようとしているのだが、口に入ったころにはかなり冷たくなっていて何というか餃子のうまみが台無しである。

 そんな中で、我関せず……とはいかないまでも気にしないようにているのか、流星さんとブシドー、そしてイーゼの3人はモクモクと餃子を食べていた。

 ああ、きっと彼女たちが食べている餃子はパリっとしていて、噛んだら脂がジュワっと口の中に広がるのだろう……。

 ああ、熱々が食べたい。食べたいなぁ……。


「もぐもぐもぐ…………?」


 そんなオレの熱視線を感じたのか、ボーっとしながら食べていたイーゼの箸……いや、彼女の場合はフォークだ。フォークの手が止まり、オレのほうをジッと見てきた。

 いったい今のイーゼが何を考えているのかはわからない。分からないけれど、理解してくれ! オレは、その餃子を……熱々の餃子を食べたいんだ!!

 そして、その願いが叶ったのか……ジッと見続けるのが餃子であることに気づいたイーゼがオレと餃子を見比べている。


「……これを食べたいのか?」

「食べちゃい!」

「なるほど、わかったのだ。(あるじ)の言葉に我は従うのだ」


 イーゼはそう言って一人納得し頷くと、餃子が突き刺さったフォークをオレへと向ける。

 そんな大胆な行為だというのに、オレを膝に乗せているサンフラワーさんは現在の敵は樹之命さんだけと思ってるようでこちらに視線が向いていない。

 だからオレは安心して、熱々……とまでは行かないけれど程好い熱さとなった餃子を食べることが出来た!

 皮のパリッとした食感とモチッとした食感が口の中に広がり、もっちもっちと噛み締めるとジュワ~~っと肉の脂が口の中に広がっていくのを感じる。

 残念なことにタレは付いていないけれど、塩が利いていてとても美味しく感じられる。

 その味わいを感じながら、オレはごきゅんと噛んでいた餃子を呑み込んだ。


「…………う、うみゃぁ~~い!」

「「へ? あ、あーーーーっ!!」」


 オレの雄叫びでようやくイーゼがオレに餃子を食べさせていたことに気づいたらしき二人が大声を上げる。

 その顔は、大きくショックを受けている顔だった。


「ちょ!? イ、イーゼさん! 何でエルサさんにごはんを上げちゃってるんですかぁ!?」

「そうだっ! これはわたくしたちの仕事なんだぞっ!?」

「お前たちが全然口論をやめてなかったから、主が凄くお腹を空いていたのだ。だから我はお前たちに代わり、主の世話をしたのだ」


 イーゼに痛いところを突かれた。とでも言うように二人はなんとも言えない表情を浮かべ、しょんぼりと落ち込む。

 そんな彼女たちの様子を見ながら、オレは聞き違いかも知れないけれど……とっても嫌な予感がするワードが聞こえた気がしたのを感じた。

 あ、主って……言わなかったか? イーゼが、今さっき……。

 き、気のせい。気のせいだよな? というか気のせいであってくれ。


「あの、イーゼ……さん、で良かったな? 拙者の耳にはあなたがエルサのことを主と呼んでいるように聞こえるのだが?」

「間違いではないのだご同類。我は我々から切り離されたが我々は側に居ることを知り、そして主の血によって主のために生きることを誓ったのだ」


 ブシドーの質問にイーゼはスパっとそう返事を返した。

 ……それを聞いて、ブシドーはどう言えば良いのか分からないけれど……「この女の敵め!」と言っているような瞳でオレを見ていた。


「わ、わぁ~~を…………」


 だからオレは、舌足らずな声でそう言うしか出来なかった。

色々とやってて、遅れました。

申し訳ありません。

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