自重する気のないお色直し
おまたせしました。
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アイテム名:パラダイスワンピース
品質 :上級(7)
説明 :極楽蜘蛛の糸で織られた布で作られたワンピース。ある程度の攻撃はダメージを通さない上に、魔力を与えることで修復も行う。
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アイテム名:ランドラゴンレザーアーマー
品質 :中級(5)
説明 :ランドラゴンの革をなめして作られた鎧。高い防御力と地属性の耐性を持つ。
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アイテム名:ランドラゴンプロテクター
品質 :中級(5)
説明 :ランドラゴンの革をなめして作られた肘当てと膝当て。高い防御力と地属性の耐性を持つ。
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アイテム名:祈りのネックレス(守護)
品質 :上級(7)
説明 :護りの祈りが込められたネックレス。一度だけ強力な攻撃の身代わりとなってくれる。
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「よし、こんなもんだろう。……ん? どうしたんだ?」
「あ、あのぉ……? これらがあまり強くない防具だと、エルサさんは言いたいのですかぁ?」
インベントリから取り出し終えて、並べた装備を見ながらオレは頷く。
ちなみにこれらの装備は店売りではなく、素材も戦ったモンスターや偶然手に入れたアイテムを使って作成した自作である。
素材が素材過ぎるのだが……極楽蜘蛛の糸は、だいぶ前にショートちゃんのお菓子と交換で貰えたアイテムの中でも激レア品だったりするけれど、ブシドーのケーキと交換で手に入れたのだから、実質タダで手に入れたようなものだから問題は無い。
ランドラゴンもドラゴンと名前はついているけど実際は蜥蜴の一種で、洞窟に潜ってたときに地面を這いずり回って襲い掛かってきたのを倒していたから在庫は正直たっぷりある。
それはそうと、これらの防具を取り出してから樹之命さんの頬が何だかヒクヒクとしているのだが、何故だろうか?
「どうしたんだ、樹之命さん? 何だかプルプル震えだしているけど……」
「お、驚いてるんですよぉ! これの何処が適正装備ですかぁ!! 品質は普通ですけど、素材は一級品じゃないですかーーっ!!」
「え? 普通だろ? だってこれは自作だし、材料となる素材も腐るほどインベントリの中にあるからさ」
「え、えぇーー…………」
怒鳴り声を上げる樹之命さんが何でそんなに驚いているのか良く分からないままオレは首を傾げる。
……が、少ししてようやく理解してきた。
「もしかしてこの素材ってかなり貴重だったりするのか?」
「当たり前じゃないですかぁ! 極楽蜘蛛の糸は当たる確率が0.0001のアイテムですし、ランドラゴンもS級ダンジョン『大地の割れ目』の最下層に出るモンスターですし!」
「極楽蜘蛛の糸は偶然だったけど、ランドラゴンの皮はそのダンジョンのボスドロップのアイテムを手に入れるために何度も潜ってたから豊富だぞ?」
「ボ、ボスドロップのために何度も潜ってたって……、この人、廃ですね。廃なんですねぇ!」
『何とも、残念な人間が神の器に入ったようじゃのう……』
どうやらオレの中のゲームの基準がかなり狂っていたらしく、樹之命さんが驚愕の表情を浮かべながらオレを指差す。
って、指を指すのは止めろ。
「まあ、兎に角だ。イーゼ、今出したこれらを装備してくれるか?」
「分かったのだ」
「ちょっ!? な、何でいきなり脱ぎだすんですかぁ!!」
オレの言葉にイーゼが頷くと、おもむろに服を脱ぎ出したのだが……樹之命さんが驚きながら脱ぎだそうとした服をずり下ろした。
ちなみにオレはそれを経験から予想していたので、向こうを向いている。……まあ、女同士なんだから気にしなくても良いだろうけど、気分の問題だ。
何となく残った男としてのきょうじだったかを護りながら、顔を反らしていると樹之命さんがイーゼに向けて装備の仕方をレクチャーしているようだった。
まあ、この世界の住人って、普通に着替えることでも装備は変更になるんだよね。ゲームでは出来なかったけれど、この世界の住人となって知った知識だけれど。
あ、ちなみに裸から下着を着用というのはまだやるつもりは無い。やれると思うけれど……何と言うか、プライドが……ねぇ?
とか思っていると、背後では二人の姦しい声が聞こえていた。
「な、何でパンツ穿いてないんですかぁ!?」
「葉っぱがあれば大丈夫なのだ」
「ヤッター、葉っぱがあればだいじょう――ぶじゃありませんよぉ!!」
ああ、ようやくツッコミを入れてくれたか……。
オレでは無理だと思っていたノーおぱんつ問題を解消してくれるはずだ。
そう思っていると、「ほら、これを穿いてください!」という声が聞こえたから穿かせているはずだ。
……すぐに脱ぎそうだけど。
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「さてと……、着心地はどうだ?」
「重いのだ。それに、おまたが締め付けられるのだ……」
「…………我慢しなさい。そして捲るんじゃない」
装備を付け終えたイーゼに着心地を聞くと、凄く嫌そうな顔をしながらそう言ってきた。
しかも、ワンピースを捲り上げながらだ……。樹之命さんから貰ったパンツを隠しなさい。
心からそう思いながら、改めてイーゼを見ると……何処からどう見ても物語のエルフといった感じの容姿となっていた。
まあ、これであと少し成長してたら良かったんだけどねぇ……。
「イーゼさんの装備も整えたことですし、うちらも装備を整えたほうがいいですよねぇ?」
「ああ、そうだな」
樹之命さんの言葉でオレの服装は街娘な感じの格好だと言うことを思い出す。
というか、普通に戦闘できてたからすっかり忘れてた。
そう思っていると、樹之命さんが装備を変更する。
すると、覗き見防止のための軽い光が体から放たれるとともに、装備が変更された。
その服装はつい先程から着ている巫女装束だったか巫女服のような衣装と同じようなのだが、接近戦をしやすいように所々変更が掛かっていた。
スカートみたいな袴は剣道着などでよく見る二又な感じの袴となっていて、白い上着は振袖が邪魔にならないようにたすきで結ばれ、長めの髪は解けることがないようにと白いリボンで強く縛られていた。
そして、その上にはオレの出したランドラゴンレザーアーマーよりも品質は劣るようだが、その代わり素早さを追求したであろう薄い革鎧……というか胸当てが装備されていた。
ちなみに下の靴は地を蹴り易いように革のブーツを履いているようだった。……何というか、巫女ってよりも大正時代のハイカラさんって感じだな?
「えぇっと……、マジマジ見られてると……その、恥かしいんですけどぉ……」
「ああ、悪い。けど、それって……完全なオリジナル、だよな?」
「はい、頑張ってデザインしました」
「なるほど、かなりの情熱が込められてるって感じだな……」
マジマジ見られるのは慣れていないようで、樹之命さんは恥かしそうにそう口にするので、衣装の感想を告げる。
というかここまで再現度が高い衣装ってことは、《裁縫》のレベルも相当な物だと思う。
っと、オレもちゃんと装備しておかないとな。……武器は、あれだけのモンスターに突っ込むんだから手数が多いほうが良い、よな?
そう思いながら、インベントリの中を見始める。
「短剣かナイフか……。ナイフだな」
ナイフに決めるとインベントリの中から、眠っていた鉄のナイフを取り出す。
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アイテム名:鉄のナイフ
品質 :低級(1)
説明 :鉄で造られたナイフ。雑な扱いをすると壊れ易い。
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これは《鍛冶》のレベル上げをするときに何本も打った物だからかなりの数がある。
だから壊れたら即座にインベントリから取り出して攻撃を行うスタイルで行こう。
使う武器を決めたから、後は装備だ。
装備欄を起動し、装備を選択していく。
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頭 : ツインテール用青リボン
腕 :
上着 : 布のワンピース(上下一体)
下着 : 布のワンピース(上下一体)
下着 : 布の下着
脚 : 革の靴
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から、こんな感じに変更だ。
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頭 : ツインテール用青リボン
腕 :
上着 : 剣狼のレザージャケット
下着 : ミスリルデニムジーンズ
下着 : 布の下着
脚 : ランドラゴンブーツ
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「よし、こんな感じか」
樹之命さんと同じように淡い光を一瞬放ち、瞬く間にオレの服装は先ほどの物と違って運動に適した格好へと変更される。
って……!
「なんじゃこりゃあっ!?」
驚きに満ちた叫びがオレの口から放たれる。
何故なら、ジャケット自体は普通に革ジャンな感じになっているのだが……、デニムジーンズのほうはショートパンツと言っても過言ではないくらいに脚を惜しげもなく曝け出したようなデザインとなっていたのだ。
ま、まさか……男性キャラと女性キャラが装備するときにデザインが変更されるタイプの装備なのかっ!?
焦りながら装備の詳細を見始めると、表示がされた。
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アイテム名:ミスリルデニムジーンズ
品質 :上級(7)
説明 :ミスリルモスの糸を特殊な薬液に浸して作られたデニム生地で作られたジーンズ。
※性別によって、デザインが変更される。
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……マジだった。
まあ、エルサになってから装備するのは初めてだし、【†SSS†】時代も試着として一回着たぐらいだったしな……。
そう思いながら、視線を感じ背後を見ると……両手で顔を隠した樹之命さんが居た。
えー、何この恥かしい物見ていますって表現は……。
げんなりとした表情を浮かべながら、オレは事を始める前に疲れを感じてしまっていた。




