森を抜けるための準備を
お待たせしました。
「……あの、自信満々に何処から回るかと聞いていますけど……その前にここから出ないといけないじゃないですかぁ」
「う”っ! そ、そういえばそうだった……」
自信満々に訊ねたオレへと、何と言うか申し訳なさそうに樹之命さんが言う。その言葉にようやくオレも状況を思い出す。
そうだったんだ。今現在、このホーム周辺にはモンスターが押し寄せているんだったんだ……。
ウンザリしながら、周囲を見渡すと……居るわ居るわ、大量のモンスターが。
というか昨日よりも増えているよな? もしかすると、樹之命さんが送られる予定だった集落のモンスターも来ていないか?
「とりあえず……、蹴散らして進むしかない……よなぁ?」
「そうなりますねぇ……、けど大丈夫でしょうか」
「……行けるのか?」
ウンザリしながらオレが呟くように言うと、樹之命さんが頷くのだが……不安そうな顔をする。その表情を見ながら、イーゼも不安なのか表情を暗くする。
……そういえば、オレは普通に指先一つで木っ端微塵。なんて芸当が出来るけど、二人ってどれだけのステータスを持っているんだろうか?
少し、というかかなりマナー違反かも知れないけど、聞いておくに限るよな?
「なあ、聞きたいんだけどさ……二人のステータスはどんな感じなんだ?」
「えっ? えーっと……」
「すてーたす? なんなのだそれは?」
オレの質問に対し、樹之命さんのほうはやはりマナー違反だからか言いよどみ始める。
そして、イーゼに対しては何を言ってるのかまったく分からない。と言った様子だった。
あー、もしかしてというよりも、ステータスとかまったく関係ない生活を送っていたみたいだから知るわけが無いってところか。
そう思っていると、燃え尽きていた樹之命さんのすぐ側にいた半透明のそれが罵ってきた。
『貴様は愚か者のようじゃな! 誰が貴様なんぞにステータスを教えるものか!』
「み、命様っ、それは言いすぎじゃないですかぁ!」
「……とりあえず、あんたが何なのか気になるけど、今は気にしないでおく。だけど、ステータスは知っておかないと危険な目に遭ったりしたら困るから聞いてるんだ」
『うっ……! じゃ、じゃが簡単にステータスを教えるつもりは無い! そうじゃろ、樹よ!!』
半透明の樹之命さんは樹之命さんが喋るつもりはないと考えているらしく、自信満々に彼女を見る。
……が、望んでいた答えとは違っていたらしい。
「そう、ですか……。だったら、一応見てもらったほうが良いかも知れませんねぇ」
『なっ、なにっ!? た、樹よ! おぬし、本気かっ!?』
「はい、本気ですよ命様。それに、エルサさんには隠しておくよりも全て曝け出したほうが良い予感がしますので……はい、うちはこんな感じのステータスです」
そう言いながら、樹之命さんはステータスを表示させるとオレに見えるようにしてきた。
オレはと言うと、何と言うかそう言われて恥ずかしかったのか、何も言わずに表示されたステータスを見始める。
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名前 : 樹之命
種族 : 人間
年齢 : 14
H P : 560
M P : 980
STR : 350
VIT : 340
DEX : 250
AGI : 190
INT : 920
MND : 910
LUK : 300
――――――――――――――――――――
…………おお、だいぶ鍛えてらっしゃる。
ステータスを見た限り体力面は弱いけれど、魔法系が強そうな感じの魔法使いタイプだった。
というか、魔法が使えなかったら悲惨なことにしかならないステータスだ。
もしくは魔法が使えて、魔法を使い続けてるからこそのステータスなのだろうか?
「ちなみに魔法のほうは、あのときにも言ったように補助や回復を幾つか使えますからねぇ」
「なるほど、それじゃあ後衛を頼りにさせてもらっても良いか?」
「はい、任せてください。……でも、主武器は薙刀なので、中衛のほうがいいかも知れませんが、どうでしょうか?」
オレの言葉に、樹之命さんは頷くが彼女はそう言ってから「それに、後衛もいますしね」と告げた。
ああ、そうだった。弓を使う後衛が居るんだから、彼女を護るように立って貰うほうが良いか?
そう考えながら次はその弓を使うはずのイーゼだけど……ステータス表示が出来るのだろうか?
そんな不安を感じ取っていると、まったく分かっていない様子のイーゼがオレたちの輪に入ろうとしているのかステータスとはなんぞなもし? とでも言うようにうんうん唸っていた。
だけど、そんな彼女の前に……彼女の意思とは関係無くという風に見えるステータスが表示されていた。
きっと気を利かせてくれたということにしておこう。
で、ステータスはと……どれどれ?
――――――――――――――――――――
名前 : イーゼ
種族 : エルフ
年齢 : 1週間
H P : 150
M P : 200
STR : 60
VIT : 35
DEX : 96
AGI : 85
INT : 105
MND : 80
LUK : 20
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これは……超が付くほどに初期ステータスだな。
もしかして、元々ステータスが無いNPCだったけど、名前を付けられたためにステータスがついた?
前のステータスを見ていないためどうなのかは分からない。
けど、危険危険と口に出して口論してたけど、本当にこれは危険すぎるんじゃないのか?
あのモンスターたちの正確な強さは分かっていないけれど、絶対に一人じゃ対処出来ない類の強さだろう。
「うわ……、これは……」
イーゼのステータスが表示されていることに気づいたらしき樹之命さんからも何とも言えない声が洩れる。
悲惨すぎるステータス画面から視線を外し、樹之命さんを見ると……どうするべきかという判断を聞くようにオレを見ていた。
とりあえず……は、だ。
「オレたちの持ち物から装備を整えさせて、少しでも防御を上げるしかない……か?」
「それしかない……でしょうか?」
オレの呟くように言う言葉に、樹之命さんは頷く。……正直言うと、それ以外で強くする方法は一つだけある。
だけど、それをしたら何というか後が恐ろしい予感がしてたまらないのだ。
だからオレは今は装備で鍛える方法を取ることにする。
「……だけど、装備を整えるにしてもこのホームの設定で、装備を取り出すことが出来ないんじゃないですかぁ?」
「あ、そういえばそうだったな……。でも装備を整えることをせずに飛び出すっていうのは危険過ぎるよなぁ……って、ん?」
【ホーム内の設定が変更されました!
変更内容の詳細はホーム画面をご確認ください!】
突然、オレたちの前に半透明のパネルが表示され、驚いたが……これはもしかすると?
そう思いながら、ホーム画面を表示させてみる。
~・~・~・~・~
エネミーの進入 : 禁止
戦闘行為 : 禁止
装備変更 : 禁止 → 一時制限解除
装備確認 : 許可(ただし装備欄画面でのみ) → 一時制限解除
HAの使用 : 許可
~・~・~・~・~
……これは……。
もしかしてと思いながら、オレは自らの武器である剣を取り出す。
すると、本来はホーム内での武装を警告するメッセージとともに手に痺れが走るということになるのだが、制限解除がされているからかそれらが起きること無く武器が手に握り締められた。
「大丈夫……みたいだな」
「あ……、本当、ですね」
『むぅ……。何故先にこの機能が開放されなかったのじゃ!』
装備を再びインベントリの中へと納めながら、オレが呟くと樹之命さんもインベントリから武器を取り出したらしく手には青い刀身をした薙刀が握られていた。
あの武器は、確か……店売り武器の中でも高レベルの強さを持っている槍武器の青鋼の薙刀ってそのまんまな名前の武器だったよな?
ついでに言うと店売り武器の強さ=販売価格といった感じで、店売り武器の中ではかなりの高さを持つ武器だったはずだ。
「それは……」
「ああ、分かるみたいですね?」
「ああ、うん……。だいぶ、節約したんだろうな……」
「はい……。節約に節約を重ねました……」
苦労したプレイを思い出すように樹之命さんは遠い目をし、そんな彼女を憐れむようにオレは彼女を見る。
まあ……、プレイは人それぞれ。だからなぁ……。
そう考えながら、オレはインベントリからイーゼのための装備を漁り始める。
そんなオレが何かを見始めているのに気づいたイーゼは、ジーッとオレたちを見る。
「お前、何をしているのだ?」
「ああ……、一応お前の装備を整えて少しでも防御力を上げるべきだろうと考えたんだ。……何か好きな色とかあるか?」
「色か? そうだな……我は、今も着ているこの服の色が好きなのだ」
なるほど、緑色か……。
とりあえず、先に服から見繕うべきだろう。
「緑色の服に、軽い金属か革の胸鎧、そして肘当て膝当て、最後に付与がかけられた腕輪か首飾り……と言ったところか?」
「そんな感じでしょうか? けど、うちのほうはあまり強いのは持っていませんよ?」
「まあ、強力な防具って逆に動きを妨げるから……、適正装備が一番って感じだろうけどさ」
樹之命さんにそう言いながら、オレはインベントリを漁る。
まあ、防具は動きを妨げることになるけど、服のほうはステータス関係なしだから……そっちで工夫をすれば良いか。
そう考えながらオレは服を重点的に見始めることにした。
……そして、オレは装備を選び終えると一斉にそれらをインベントリから取り出したのだった。




