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も~っとお話しましょう、そうしましょう。

おまたせしました。

 ポカーンと少しアホの子みたいな感じに口を開けている計野さんだが、その視線は『この人は何を言ってるんだろうか?』といったものであった。

 まあ、普通に考えるとそうだろうなあ、いきなりここはゲームの世界です。だけどゲームの世界だけどオレたちには現実の世界だと言っても理解は出来ない筈だ。

 そう思いつつ、オレは如何話をするかと言葉を選びつつ話をしようと――。


「た――大変! 大変ですっ!! ちょっと緊急事態なので手を貸してくれませんかっ!?」


 したのだが、間の悪いことにエルのオリジナル(神さま)が現れた。……そういえば、俺のこの体もエルミリサだけど……他と区別するために何か名前を変えるべきかなぁ?

 そう思いつつ、慌てる神さまだが……計野さんが居ることに気づいていないのか捲くし立てるように話をしているのだが、神さま自体混乱しているからか上手く話が伝わらない。

 一方で計野さんは計野さんで、突然現れた神さまに驚きつつも……女性として完成されたプロポーションに魅力されながらも、誰なのか判らないと言うことで警戒しているようだった。

 ……とりあえず、一度両方とも落ち着かせるほうが先決かな?


「えーっと、とりあえず神さまは少し落ち着いて深呼吸をしろ。それと計野さん、警戒しなくても大丈夫だから」

「そ、そうですね! すー、は~……す~、はー……」

「は、はい……」


 オレの言葉に従って、神さまは変な感じに深呼吸を始めるのだが……何だか一気に残念度が上がっていないか?

 そして計野さんはオレの言葉に返事はするけれど……やはりまだ信用出来ないと言うのか神さまを警戒していた。

 そんな計野さんの様子に気づかないのか、深呼吸を終えて冷静になったらしい神さまはオレを見たところで……漸く計野さんの存在に気づいたようだった。

 あ、しまったって顔をしてる。


「え、っと……この方は……?」

「えーっと……、彼女は計野新那さんで、多分プレイヤーじゃない存在。でもって計野さん、こっちはエルミリサの神さまって感じの存在」

「は……初めまして……」

「こ、こちらこそ、はじめまして……」


 頭を下げる計野さんに対して、神さまは少し戸惑いつつも頭を下げているようだった。

 ……なんだろう、この嫌な予感。


「それで、神さま。いったい何が大変だったんだ? もしかして……この計野さんに関係があるとか?」

「う”っ! そ、そんなわけ……ありますじゃないですか?」

「あるのか無いのかどっちだよ?!」


 あからさまに動揺していますと言う雰囲気の神さまはテンパッているらしく、良くわからないことを口にしたのでついツッコミを入れてしまう。

 うん、間違いない。何か一気にポンコツ度が上がってるよ、この神さま!

 心の底からそう思っていると言うべきか言わぬべきかと思っているのか、体を捻らせて葛藤し始めている神さまが居た。

 ……何というか、酷いな。計野さんも何というか警戒は解いていないけれど、残念なものを見るような目になっている。


「……決めました。お話します」


 そう思ってるとポツリと神さまは呟き、オレたちを見てきた。

 話すことを決めたのか。……で、いったいどんな話をするつもりなんだろうか?


「大変な話、ってことで良いんだよな?」

「はい、その緊急事態の内容を今から話します。まあ、その内のひとつは解決していましたが……」


 ん? 何か計野さんを見ながら言わなかったかこの神さま。

 いや、聞かなかったことにしておくべきだろうか。というよりも、ドヤ顔をさせたいから黙っておくべきか。

 そう思いつつ、オレは神さまの話に耳を傾けることにした。


「実はですね、あなたの体から魂魄を無理矢理引き抜いて、『ユアーショーッ!』的な感じになっていたころに次元に干渉するように大穴が開いていたらしいんです」

「お、大穴?」

「はい、……まあ、普通の人には見えなくて所謂、霊的なトンネルといった感じでしょうか? 吸引付きの」

「あ」


 神さまの説明でオレはイメージが全然浮かばないのだが、計野さんは覚えがあるのかポツリと声を漏らした。

 覚え、あるんだ……。


「私、というよりも私を含めたこちらの世界の神たちがこの事態に気づいたのも、あなたをエルミリサのアバターに入れてからだったので遅れましたが……、その際にあなたの住んでいた家の周囲を浮遊していた魂を纏めて吸い込んだらしいんです」

「…………は?」

「馬鹿じゃないのって顔をしていますが、事実みたいです。……というよりも、その被害に遭った魂のひとつがそこに居る計野さんです」

「あ、あたし……ですか?」

「このようなことに巻き込んでしまい、本当に申し訳ありません。本当ならば、あなたは向こうの世界で四十九日を終えて輪廻の輪へと還るところだったのに……向こうの世界の力任せのマザコンオヤジ神に変わって謝罪いたします」


 呆気に取られるオレと戸惑う計野さんを見ながら、神さまは頭を下げる。

 というか、力任せのマザコンオヤジ神って誰だ?


「ああ、それは日本神話に出てくる有名な神です。特徴としては八つ首の蛇を殺したとかですね」

「あー……。えっと、確か……人が乗り込む巨大ロボの――」

「それは違いますからね」

「違ったか。だったら――」

「先に言っておきますが、元々は日本の高校生だったのですから歴史というか学校の授業ぐらいはキチンと学びましょうね? ゲームに夢中になりすぎるのではなく」

「う”っ!?」


 どうやら浮かんでいたものとは違っていたようだ。歴史って疎いからなあ……。

 しかも、続けて言おうとしたら神さまに先制攻撃を受けて精神的にダメージを追ってしまった!

 心に傷を作りながら、オレは疑問に思ったことを聞くことにした。


「そ……そういえば、神さま。聞いても良いか?」

「何でしょうか?」

「計野さんの猫耳って、神さまがやったってわけじゃない……よな?」

「やりませんってば。多分ですが……元々の魂が世界を渡ったときに何かがあったのか魂が削れたのでしょう。

 そして、見たところ彼女の魂には繋がるように別の……多分猫の魂が繋がれていたんだと思いますよ?

 その結果がこれだと……。まあ、詳しくは調べてみないと分かりませんが……」

「あ、あの……」


 神さまの予想を聞いていると、戸惑った様子の計野さんが手を上げて質問をしてきた。

 いったいどうしたのだろうかと思いつつ、オレたちは視線を彼女に向けると……。


「さっきから、じゅうじんとか猫耳とか……本当にわけが分からないのですが、いったいどういうこと……ですか?」

「「え?」」


 言っていることが理解出来ない。そんな様子の計野さんに、オレと神さまは目を点にする。

 まさか……わかっていないのか? え、本当に?

 信じられないと思いつつ神さまを見ると、本当であることが分かっているらしく頷いていた。

 ま、まじか……。そう思いつつ、オレは計野さんをマジマジと見つめる。

 突然見つめられた彼女は恥かしかったのか顔を紅くしつつ、目を反らした。

 そんな彼女を見ながら、上手く出来ると良いけれど……。


(――スクリーンショット!)


 スクリーンショット。それはスクショと略称されるもので、プレイヤーの見ているものを撮影する機能である。……ゲームやパソコンでは当たり前といってもいい行動のひとつであったりするがあまり使う機会が無かった。

 ちなみにVRだったころは、アバターが撮ったスクショ画像はヘッドセットにセット出来る記憶媒体に保存出来ていた。……だけど、ヘッドセットなんて無い此処だとどうなるだろうか?

 そう思っていると、ほんの少ししてオレの手元へとスクリーンショット画像が現れた。形は一昔に流行っていた紙媒体の写真のようである。

 なるほど、こうなるのか……。そう思いながら、これは人前では行えないだろうと思いつつ出現したそれを計野さんへと差し出した。

 突然差し出された……というよりもマジックとでも言わんばかりにいきなり現れた写真に驚いているようだったけれど、彼女はそれを受け取った。


「これは……、写真ですか? それがいった……え?」

「……一応、今オレが見えているものをスクショ……撮影したんだけど、言わなくてもオレが言いたい意味……分かるよな?」


 信じられないと言わんばかりに自身の姿が映る画像を見ながら、計野さんは固まっていた。

 ちなみに……オレがスクショをしたのは、恥かしがりながら顔を赤らめる計野さんの姿だ。

 ……けれど、彼女の記憶の中にあるであろう自身の姿と若干差異があるのだろう。何故なら、頭には人間には無い猫耳が生えているのだから。

 そう思いながら、オレは写真を見たまま固まる計野さんが落ち着くのを静かに待つことにした。



 ――――― 新那サイド ―――――


 入学式や卒業式にパパが張り切って撮っていたから紙媒体の写真の存在は知っていた。

 出来上がった写真は3人でアルバムに収めていたから、肌触りは覚えている。

 記憶の中にある質感と同じそれを、ジッと見たまま……あたしは固まっていた。

 写真に写っているもの、それはあたしが顔を真っ赤にしている姿なのだが……その姿は懐かしさと同時に違和感を感じるものだったからだ。

 パパとママ、それに先生たちは病室に居るあたしの姿をなるべく鏡に見せないようにしていたつもりだったけれど、ベッドから動けなかったあたしは体を拭いてくれるママや看護師の人の瞳や眼鏡を見て、そこに映る自分の顔を見るという何とも奇抜な方法で自分自身の顔を見てたりした。

 それがベッドの上から起き上がれず歩くことも、何もすることが出来ない……日に日にやせ細っていく腕を見ていくあたしが出来る唯一の顔を確認する方法であったりした。

 ……それで大体の自分の顔が段々と細くなっていくのが分かっていた。

 そして、死んだときに体から切り離されたときに初めてあたしは自身の体を見たけれど、予想以上であったとも思う。

 けれど……この写真に写るあたしの姿は、記憶に残る元気な姿と比べると少し体が細いが女性らしい丸みを体が帯びているみたいなので……本当に懐かしく思った。

 ああ、あたしって普通に成長してたらこうなってたんだなぁ……。

 そうしみじみと感じながら同時に……あたしは自身の頭の上に見えるものに違和感を感じていた。

 何故なら、白と黒の髪をした頭の上には普通の人だったら持っていないものが乗っているのだから。


「ね……ねこ、みみ……?」


 ポツリとあたしを見る2人に聞こえないように小さく呟くと、その言葉が体の奥へと染み込むようにして自覚していくのを感じる。

 そう、そうなんだ……。あたしの頭の上には、猫みたいな耳が生えているのだ。

 そして、恐る恐る髪に触れると……人間として耳がある場所には、何も無く髪が押し込まれるだけだった。つまりは、不通の耳が無いということだ……。

 ……ああ、獣人って呼ぶよね。

 そう思いながら、漸く自分が奇異……まるで芸能人がお忍びでお菓子を買いに来たみたいな感じに視線を浴びせられたわけだったんだ。


「…………はあ」


 理解はしたけれど、どうしてこうなったのかと言うことが分からず……あたしは溜息を吐いた。

 一応現実のほうは、紙資源はかなり無くなっているので漫画や写真など全ての媒体は紙からタブレットなどに移行した感じの世界です。

 あと1回ほど続きます。


「よし、次は#をつけよう!」

「なんでだよ!?」

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アルファポリスでも不定期ですが連載を始めました。良かったら読んでみてください。
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