家外戦争(ユウト視点1)
「どうも。リカール、と言えば分かるでしょうか?まぁまぁ。言いたいことは分かりますが、これから一方的に話させていただきます。交渉とか苦手なので。あぁ、皆さん疑問に思っていることからまず説明しましょう。この装置についてですが、これはこちらの様子とそちらの様子を同時に見ることが出来る魔道具です。なので、そちらの様子も分かりますよ。驚きを隠そうとしても無駄ですよ。余談はさておき本件に入ります。私の要求はただ一つ。そちらの勇者、ユークリッドをお預かりしたい。」
ここで間を開ける。
「やはり、駄目ですよね。もちろん、ただで済むとは思っていません。そこで、第一手を打たせてもらいます。」
ここで間を開ける。
「落ち着いてください。衝撃はすごいかもしれませんが被害はほとんど無いはずです。どうですか?気は変わりましたか?」
ここで間を開ける。
「残念です。通信はここで終わりにしますが、必ず手に入れますから」
ここで間を開ける。
「理由はですが、そうですね。商売に利用できそうだからですよ。敵対する国があると都合が良いんですよ。そのために、そちらの最高戦力を奪いたい。というのが本音です」
ここで間を開ける。
「ノヴァイルの勇者はすでに私の味方です。では、こちらの要求を呑むときはリカールの商品、花火を打ち上げてください。それでは」
ふう。録画終了。
え?通信?そんなこと出来るわけないだろ。自宅の外に電波を放ち、動画を送るなんて技術的にも不可能だ。
ただ、商業神リカールの名を使えば信じられないこともない。自分で言うのも何だが、それだけの商品を産み出しているわけだ。信じて貰わなければ困る。
パンパン!
ガラにもなく二回手を叩いて、成功することを祈った。
ーーーーーーーーーー
「風向きは……良い感じだ」
動画水晶は作動しただろうか?
頃合いを見計らって地下に向かった。そして、地下の全てを支える一本の柱を殴り倒し、急いで地上に戻った。
これで、第一手終了。
次は、こいつだ!
ビニールハウスに応用した耐水スライムの皮を使い、熱気球を飛ばすぜ!!
壁という土地の利を逆手に取り、上空から攻め込むと見せかける。……実際はちょっと攻めるだが、多分大丈夫なはずだ。
騎士団長が苦戦すれば超上出来だ。
熱気球を十個飛ばし、そのうちの一つに整備した人形と一緒に乗り込んだ。荷重の問題も無く、熱気球はゆっくりと浮かび始めた。
耐水スライムの皮は見た目はビニールそのものだが、耐水だけではなくある程度の熱にも耐えることが出来る。これを使った商売も考えておこうかな。
熱気球が城壁内の上空に入り、周りの様子が見える様になった。突然現れた熱気球に気が付くものの大して不審感は抱いていないようだ。
上空に佇み数十秒。
予想通りにことが進んでいない。本来なら……
不本意だが仕方ない。こいつを投下しよう。




