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この度、獣人世界に転移した普通の人間である私が、幻獣人を束ねる「鍵の聖女」に任命されました。  作者: 阿井りいあ
幻獣人が全員揃う日はあと少しのようです

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それぞれの理由確認が出来ました


 その後、リーアンはマティアスからの拳の制裁を受けた。ゲンコツはとても痛そうだったな……。自業自得だけれど。

 そして、三十分くらいかけて説得してくれたことでようやくジュニアスが同行を認めてくれた。よ、よかった。


「助かる。空からの攻めはリーアンがいるから問題ないが、地上でも戦える者がいて欲しかったんだ。カノアは戦わないし、シルヴィオやジーノはエマの守り重視だろう?」


 なるほど、言われてみれば確かにそうかもしれない。守りと緊急避難は出来ても撃退までは難しいメンバーってことだよね。

 前回は私たちの行き先が二択だったけど、今回は確実にバレてしまっている。だから国王軍も前より人数が多いかもしれないし、禍獣だって活発化しているものね。ある程度は押し返せないと逃げるのも厳しいんだ……。


「でもさー、エトワルさえ解放しちゃえば守りは鉄壁じゃーん。ガウナだったら攻撃力も上がるしー。どっちか解放したら誰か一人は戻れるんじゃね?」


 アンドリューの説明を聞いてリーアンが頭の後ろで手を組みながら口を挟む。話の流れ的に、エトワルは守りの力を持っていて、ガウナは攻撃タイプなのかな?


「それはそうかもしれないが、人数が多くて困ることはない。禍獣の王との決戦に向けて、連携も取れた方がいいだろう? 封印されている間のブランクがあるのだから」

「えー、好き勝手やればよくねー?」

「そうはいかないだろう。禍獣の王がそんなことで倒せる相手ではないことは、貴方たちの方が知っているのではないか?」


 どこか面倒臭そうなリーアンに、アンドリューがとても真剣な様子で告げた。その瞬間、ピリッとした空気が場に漂う。やっぱり、禍獣の王と聞くと緊張感が走るんだろうな……。

 当時の戦いの様子はわからないけれど、今のこの空気感だけで相手が本当に強敵なんだってことが伝わってくる。


「私は当時、まだ子どもだった。そのため以前の戦いがどれほどのものだったのか、伝え聞いた話でしか知らない。だが、とても厳しく辛いものであったことはわかる。子どもながらに感じ取ったものだ」


 そっか、アンドリューもその時はまだ子どもだったんだっけ。当然、子どもであり次期国王でもあるアンドリューが戦いの場にいるわけないものね。


「今回だって、私も共に戦えればいいと思っている。強さにはそれなりに自信があるし、国では戦える方だ。だが、それでも私が足手纏いにしかならないことはわかる」


 そ、そんなになんだ。アンドリューも強そうなのに、それでも足手纏いだなんて。

 さらに、国中の騎士をまとめ上げたとしても歯が立たないとアンドリューは言う。むしろ人が多い分、場所をとるから邪魔になるんですって。今回ばかりは数も多ければいいってわけにはいかないんだ……。


 どんなに強敵でも数が上回れば、みんなの力を合わせれば、っていうのは甘い考えだったみたい。私の常識で考えちゃダメだね。


 たぶん、アンドリューが一番悔しいと思う。ギュッと拳を握りしめているから。


「だからこそ自分に出来ること、国民の守護に専念したいと思っているのだ。偉そうな口をきいているとは思う。だがどうか幻獣人様同士、協力し合って臨んでもらいたい」


 ああ、王太子なんだなぁって思った。国のことを考えて、自分に出来る精一杯を見付けて実行しようと動いている。

 とても尊敬出来る人だ。私も見習わないと!


「もー、アンディーったらクソ真面目ー。オレっちは勝つのが好きだから、そのためなら協力もやぶさかではないよー?」

「本当にね。そんなことわざわざ言うことじゃないし。甘いスイーツが食べられなくなる世の中なんて絶対に嫌。使えるものはなんでも使うのは当たり前」


 リーアンがわかりやすく大きなため息を吐いて笑う。それに続いてカノアが淡々とした様子で付け加えた。


 なるほど、リーアンはただ戦うのが好きなんじゃなくて勝つのが好きなのね。わかりやすい理由だ。


 カノアの理由には思わず笑ってしまうけれど、本人にとっては重要なんだよね。


「アンドリュー。オレたちにとって、国がどうでもいいのは確かです。でも、世界は守りたい。居心地がいいですからね、ここは」


 シルヴィオはサラッと国はどうでもいいって言った! 正直すぎる意見だけれど、国ではなく世界を見ているというのが幻獣人の認識、って感じで妙に説得力がある。


 そうだよね。彼らはこの世界に住む多くの人にとっては神様のような存在だもの。ずっと側にいて一緒に過ごしていると、ついそういう感覚を忘れてしまうけれど。


「そうね、禍獣の王をぶっ倒したいのは共通認識だと思うわ。アタシの顔に傷をつけたお返しをしないと気が済まないわ」

「やられっぱなし。絶対倒す」


 マティアス、ジュニアス兄弟はなんというか、意外と血気盛んといった感じだね……。この前に見た戦いの様子もガンガン攻めるタイプだったし、元々そういう気質なのかも。そ、それもまた、一つの理由だよね!


「ヒヒッ、のんびり引きこもっていられなくなるしねぇ。後でお前は何もしなかったー、なんて文句言われたらうるさくて仕方ないし、このメンバーに借りは作りたくないねぇ」

「禍獣の王を野放しにするなど愚の骨頂。言われるまでもなく討伐には全力を尽くすのは当然のことだ」


 ギディオンとジーノはまた対照的だぁ。ギディオンは自分がのんびりと過ごすのに禍獣の王が邪魔だから。そして後で文句を言われたくないという自分中心の理由だ。まさしくギディオンっぽい。

 ジーノは使命感がある感じかな? 幻獣人には珍しいタイプな気がする。とても助かるけれど。


 つまり、禍獣の王を倒すという目的はみんな一緒ってことだよね。国を守るのがアンドリューの理由で……私は、マリエちゃんを助けるのが理由。

 それぞれ違った理由だけれど、目的が同じならきっと大丈夫。強力だってしてくれるはず!


 もう少しで助けに行けるんだ。そう思ったらほんの少しだけ勇気が湧いてきた。


「では、早速オウに向かいましょう。これ以上のんびりも出来ませんよね?」


 私がそう切り出すと、みんなが驚いたようにこちらを見た。

 な、なんですかみんなして。確かに柄にもないことを言ったような気はしますけども。


「エマチャンやる気じゃーん! オレっちにも解放してねー?」

「が、がんばります」

「無理のしすぎはダメですよ? また倒れてしまいますからね」

「うっ、はい」


 とはいえ、自分がどの程度まで解放の力が使えるのかわからないからなぁ……。

 よし、決戦の時までに自分の限界を知っておくためにも、オウで色々と試させてもらいますっ!


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