閑話 : 紫陽花が咲きました。
閑話
紫陽花が咲きました。それは見事に。
特に世話をしていたわけじゃないから、植物って逞しい、なんて思いながら
縁側に座布団を持ち出して座っていたら、近所の猫がやってきた。
よく分からないが、俺が縁側にいるといつもやってくる猫
名前は知らない。
窓は閉めてあったのだが
硝子越しにカリカリと手を動かすので
俺も真似してカリカリと両手を猫の手にして上下に動かしてみた…。
「クサキ、開けてあげたら」
気がつかないうちに、後ろにキヨが居た。
「おおおおっおま!」
此方が動揺しているうちに、キヨは窓を開けてしまう。
すると、猫がサッと入ってきた。
そして恨めししい顔で俺を見てきた。
「悪かったよ…」
猫はのそりと、俺のあぐら座りしている足の中に入ってきて
丸まった。結構重いよな、猫、と思っていたら隣でキヨが笑っていた。
「この子、3つ隣の猫だよね。いつもクサキのところに遊びに来るし、この前
飼い主さんから、ウチの猫いつもありがとうね、て言われたよ」
「そうなのか…」
猫を見るが、目をつぶったまま、動かない
「クサキは動物に好かれやすいでしょ」
「ん?そうかね。気にしたことねぇな…草って付く名前だから近づき
やすいのかね」
俺には分からんが、といいつつ猫をグリグリと撫でる。
「お前はどうなんだよ」
「ん〜、どうかな。そもそも動物とほとんど縁がない生活だったから」
キヨも猫を撫でながら答えるが、その表情は硬い
「そうか、まここにいれば嫌でもなんか来るだろ」
「それって、やっぱクサキは動物に好かれるんじゃん」
「あ?、猫も犬も呼べばくるだろ」
「いやいや、普通は来ないよ…なんか流石だね、うん」
重いので猫をキヨに渡す。
猫の体がうにょーーんと伸びて、猫も嫌そうにするが気にしない
気がつけば、梅雨の雨が降ってきた。庭の紫陽花が水を浴びている
「ほれ、猫預かってろ。」
「えええ」
「猫に鰹節と、ちょっと冷えてきたし、俺らはあったかい茶だな」
(後、キヨに座布団だな)
クサキは台所にさっさと行ってしまい
猫は居場所を取られて不服そうに私をみた。
「君もクサキの近くは居心地がいいんだね」
なーーーん
猫は鳴いた。