689, 終末の日 ―― つまり、量子耐性は、議論が進まないのではなく、入れてはならなかった……ってことなの?
SegWitとAggWitによる秩序の再構築が……展開されていく。
「オリーブの葉と花を編み込んだ花冠」にそっと触れながら、それを眺めるしかない……わたし。
でも……まだ、できることはあった。わたしの神託……。それは、クリプト……仮想通貨で平和実現という、呑気な内容。でも、これが……そうね。こんな形になったけれど、その概念にはつながるなんて……。
もちろんそれは、真の平和ではなく、成り行きで残された平和。そう……でもいいの。それでも、みんなが助かるのなら。もう……贅沢は何も言わないわ。
「ネゲート。もう理解しているはず。機関がどんなに頼み込んでも……クリプトに、量子耐性が実装されない。それは、議論が進まないとか、合意が取れないとか、そんな理由ばかりだった。でも、引っ掛かるのはそこなんだよ。機関が真摯にお願いしているのだから、その間を支えてもらうくらいは、どうにでもなる問題だった。それでも、なぜかそのまま、提案ばかりの放置だった。つまり……別の理由があるのではないか。そういう解釈が生じてしまったんだよ。」
「……それで、量子アリスを頼って、SHA-256刻印の存在を知った。そういうことね?」
「そうそう。その気づき、さすがはネゲートだね。その刻印の内容は、黙示録。なぜハッシュ関数に、そんな内容が埋め込まれたのか。そうなるんだよ。SHA-256は、クリプトの95パーセントを司る暗号だよ。それだけ大事。うん、そう考えがち。でも、そこにも誤った解釈が生じていた。大事だから使われていたのではない、ということだよ。つまり……不変であることが美徳。そんな概念になっていたってこと。そこに、気づいてしまった。」
「不変であることが……美徳?」
「ほら、ネゲートは、そのあたりは気づいてない。実際、そうなっていたよ。つまり、SHA-256に触れることなんて、論外ってことだよ。でも、なぜ、ただのハッシュ関数にそこまでこだわるのか。そこがいまいちだった。実際に問題が起きたら、別に交換すればいいじゃん。そんな話は、大昔にはあったみたいだよ。でも、それはダメ。わかるよね。刻印。そこに刻まれている解釈は……。」
「そ、それは……。」
わたしは、それには気づいてた。量子の問題なんて、量子や暗号を専門に扱う精霊にでも頼めば、それなりの寄付を積むことにはなるけど……余裕で解決可能な問題だった。
でも、ダメ。絶対に、ダメ。
お願いした瞬間に、最初に告げられる現実は、SHA-256を交換しよう。
それになる。
全構造を精査して、最初に危ない場所を交換する。そんなのは当たり前。SHA-256は、量子回路について、必要な量子ビット数が想像よりずっと少ない点。それに、中間状態の脆弱性を突いた古典ハイブリッド攻撃の危険性など……。それらを考えたら、ECDSAなんて、まだまだ強かった。
もちろん、そこには採掘という経済圏がある。それについても、これまで十分に考えてきたわ。でも……時間さえあれば、問題ない。
そう……。
SHA-256にだけは、触れてはならなかった。
だから、量子の問題は、すべてECDSAのショア、ショアで語られ続けた。
その結論に、達するのよね。
その理由は……。
……。
つまり、量子耐性は、議論が進まないのではなく、入れてはならなかった……ってことなの?
もう、わかってる。でも、なかなか心の準備が整わない。でも、それしかない。
「SHA-256刻印によって、クリプトは聖書の一部となった。うん、こんなの仮説であっても、きつい内容だけどね。それでも、その刻印を失うことは、スケープゴートという本来の目的を考慮すると、クリプトの存在意義を失うのと同義。量子耐性など、どうでもいいの。聖書の一部であること。それこそが最優先される。そして、ここで……デジタルスケープゴートとして、黙示録を無事に乗り切って……成就する。」
「……。」
「そう考えると、このクリプト。非常に絶妙な調整が行われていたよ。半減期の概念まで含めて……ね。計算が、ぴったりなんだよ。すごい。ちゃんと合わせてあった。それも、この仮説が……となってしまう怖さ。」
……。わたしは、その怖さに、僅かながら震えていた。
それでも……。それでもわたしは、まだ信じたかった。わたしたちが、神話より先に、未来を選べることを。




