591, このまま本当に「冬の時代」なんてやったら、おしまいですよ。ハッシュレートに関わる皮肉論文まで押し付けられて……そんな結末では、目も当てられません。本気になる瞬間、これです。
なんだか、不思議。たったこれだけで、こんなにも気力が回復するなんて。
「女神ネゲート様。温泉といえば、これです。みせつけましょう。」
「……そ、そうなの?」
「はい、そうです。」
言われるがままに……。もう、いいわ。こうなったら……楽しんでしまいましょう。
「……どうかしら?」
「はい。出回っている例の映像なんかより、遥かに良い出来栄えです。こんな可憐な姿を見せられたら、闇はその場で悶絶でもするでしょう。」
「……そ、それはね……。」
それから、わたしの好物が並ぶテーブルへ案内された。……たまには、いいわよね。
「あの……。ここで、お伝えしなくてはならないことがあります。」
「……なにかしら。改まって。」
「はい。それは……このまま本当に『冬の時代』なんてやったら、おしまいですよ。ハッシュレートに関わる皮肉論文まで押し付けられて……そんな結末では、目も当てられません。本気になる瞬間、これです。」
「そ、それは……。」
心の奥深くに絡みついていた恐怖。量子アリスは、それを、ぎゅっと掴んできた。……そうよ。
「女神ネゲート様。この手の話は、よく『半減期』などの概念で包まれていますが、今回は事情が大きく異なります。なぜなら……梯子を外そうとしている勢力が、その原因としてハッシュレートを起因とした採掘を明確に指定しているからです。単なる市場循環ではなく、その概念自体を覆せるかどうか。そこを狙っているのは明らかです。そして、ちょうどそこに狙い目としてSHA-256がぶら下がっていた。……そんな気がするのです。」
「それで……あのような皮肉論文をしっかり準備しておいた、ということね。」
「はい。その通りです。話が出来過ぎているのではありません。この一連の流れは、念入りに準備されてきた。そう考えるべきです。そして、わたしも……その歯車の一つに、されてしまいました。」
……。悔しさが、こみ上げてきた。こんな皮肉な展開で終わるなんて、耐えられない。そうね。この気持ちこそが……本気になる、ということだったのね。
中途半端な覚醒とは違う。理由がわかっていて、それでも震える、この感覚。
……わかったわ。




