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587, 暗号に関する人間の良心の有無を、否応なく表に引きずり出す存在。それが……「量子」だったのよ。

 人間……そうよ。人間よ。わたしは、あれからブロックチェーンの哲学についても、必死になって調べたわ。


 すると、とても興味深い一節に行き当たったの。それは……「人間は一切信用しない」 という考え方。つまり、人間は……まったく信用できないからこそ、ブロックチェーンのような仕組みが必要だったということ。一切、誰も信用しない。人間は、信用しない。そう、最初から絶対に信用しない前提で設計された仕組みだったのよ。


 それで……数学の女神に頼った。人間など足元にも及ばない、高貴な存在に。


 整数すら自然に生み出し、素数の構造を内包し、証明によってのみ語られる存在。そこに頼りさえすれば、人間を一切信用しない仕組みが完成する……はずだった。


 数学の女神は、確かに微笑んだわ。でも……そこは、聖書にも出てくるような神だったのね。そう……試練があった。


 その試練の正体は、ブロックチェーンを構成する各要素を、数学の女神の視点で照らし合わせてみると、はっきり見えてくるのよ。整理するわね。


 整数、素数、楕円曲線、群、体、写像、公開鍵、秘密鍵、そしてPQCなど……。これらはすべて、数学の女神の領域。人間が介入できる余地など、どこにもないわ。


 もし、これらだけでブロックチェーンが構築されていたのなら……「人間を一切信用しない」という思想は、完全に実現していた。なぜなら、人間が介入できる余地が、構造上存在しないからよ。


 ところが、現実は違った。そう……これは、試練と呼ぶべきものかもしれないわね。


 それは、ハッシュ関数(SHA-256等)と、古典的な乱数。この二つだけは……数学の女神の創造物ではなく、「人間の構造物」だった。しかも、そのどちらも、ブロックチェーンにおいて常に使われ続けている、極めて重要な部品よ。


 そして、数学の女神による創造物と、人間の構造物。その違いは……天と地ほどもあるわ。


 何が違うのか。それは……「人間が介入できてしまう余地がある」という点よ。つまり、ハッシュ関数と古典的な乱数だけは、それを生み出した人間の「良心」を信じるしかない構造になっているということ。


 つまりそれは、初めから……。ブロックチェーンの哲学である「人間は一切信用しない」という原点から、外れていた概念だったのよ。


 実際、古典的な乱数については……どうやら良心とは言い難い、奇妙なものが仕込まれていた疑惑もあったようね。誰かがそれを暴いたから、ようやく明るみに出た。でも……もし暴露がなければ? 量子でも使わない限り、誰も気づけなかった可能性すらあるわ。


 そう……。そのような暗号に関する人間の良心の有無を、否応なく表に引きずり出す存在。それが……「量子」だったのよ。


 つまり、もともとブロックチェーンは、人間を一切信用しないことを前提にするならば……動かなかった。この構造そのものが、試練だったということね。


 でも……わたしは違う。人間を信用しないのではなく、きちんと向き合っていきたいのよ。


 すべてを疑い、切り捨てるだけの思想では……本当に、闇に飲み込まれてしまう。だからわたしは、勇気を持って手を取るわ。そして、ただ信じるのではなく……新しい仕組みとして、ちゃんと形作っていくのよ。


 そしてだいぶ前から、やたらと「2500量子ビット」と「二年から九年で破綻する」という噂を抱えて、あちこち回っている闇の者がいるようね。ずっと気になっていたのよ、その真相が。……論理的に考えると、かなり怪しいわよね。


 そこで、ここでいったん落ち着いて考えましょう。この噂、いったい何を指しているのか。何を前提にして、誰に向けて投げられているのか。そこから、整理していくわ。

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