111 出自
「親父を問い詰めてようやく本当の話が聞けた。親父は独りもんだったが子供が欲しくて、雀爛の施設から養子を取ることにした。候補の中に一人だけ三日月のないのがいた。それが俺だ」
里子に出されるのは大半がスムの赤ちゃんだ。場所が雀爛となれば、スム率百パーセントでも何ら不思議はない。引き取り手が見付からず、そのまま施設育ちになる子も多いと聞く。
「預けられた時点でもう足はなかったんだと。で、それ以前のことは何もわからんそうだ。大方、何の情報もなしに裏口にでも放置されてたんじゃないか?」
その可能性が高いと、一希も思う。
「親父が医者に聞いたところによれば、足がないのはあくまで後天的なものだが、ぶった切られたって感じじゃなく、外科的な手術で切断された形跡がある、と」
「つまり……少なくともお医者さんがちゃんと麻酔して処置したってことですよね」
「ああ。切った理由については何の証拠もないが……総合的に見て、三日月以外には考えられん」
新藤が養子でありスムである可能性までは、一希も推理できていた。しかし、義足のことは予想外だった。
我が子の足を、一体どんな思いで医者に切らせたのだろう。その子を、どんな思いでこっそりと施設に置いて立ち去ったのだろう。しかし、一希にとって最も気がかりなのは、その親の正体だ。
「恨んでますか? 実のご両親のこと」
「いや。英断とまで言っていいのかわからんが、お陰で順調にきた。俺はむしろ感謝してる」
「でも……捨てたんですよ、先生のこと」
「捨てられない方が幸せだったと思うか?」
一希は答えに詰まった。三日月を抱え、呪われたようにスムとしての人生を生きる新藤を想像してみる。隆之介に引き取られていなければ処理士を目指すこともなかったろう。
「生涯つきまとうことになる忌まわしい重荷をさっさと切り落として、俺の血を裏付ける自分たちの存在から少しでも遠ざけようとした……精一杯の親心だと思わんか? ま、お陰でこの足のメンテナンスには結構な金がかかるがな」
なるほど。一希は、新藤をちょっとしたケチだと思い込んでいたことを反省した。
「しかしまあ、印がなけりゃ自覚なんて湧かないもんだな。『お前にはスムとワカ両方の血が流れてる』……ずっとそう言われて育った。処理士になった時だって、どうかすりゃ混血を誇りに感じてたようなところがある」
(誇りに……?)
「青臭いと笑われそうだが、平和の象徴みたいな気がしてな」
一希が常々混血に不透明感を覚え、引け目を感じてきたのとはえらい違いだ。
いずれにせよ、実際には生物学的な親が何の手がかりも残さなかったせいで、新藤自身、自分の血が何なのか確実に知る術はないわけだ。




