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私は何度も繰り返す、何度も何度も何をしても壊れていく君を私は助ける事が出来ない。
君は何度繰り返しても悍しい過去を覚えている。私から遠ざけ、関わりを避けても君は壊れていってしまう。だが、私は何度も何度も君が壊れてしまわない未来を探し求めて暗闇の中を独り繰り返す。
君を救う。唯それだけが私に残されたもの。ラナ、君の為なら、私は終わりの見えない繰り返しをしても構わない。
ベルフリード公爵家の屋敷を訪ねる。今回のラナも壊れてしまった。どうして、何をしても、しなくても君が壊れてしまう未来が待っている。
ラナは人形の様に窓をぼんやりと眺めている。そんなラナの前に跪き許しをこうようにラナの手を握り額に当てる。温かい、生きて居るはずなのに生きながら死んでいるようだ。
「繰り返しても、繰り返しても君が壊れてしまわない未来が掴めない。君を救う……唯それだけが私の希望なんだ。すまない、君には私の言葉は伝わらないね。でも何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、君の未来を守らせてくれ……何度繰り返す事になっても」
「……ア、デル様」
「ラナ……すまない……今回もまた私は君が壊れてしまわない未来を見つけられなかった……」
「……アデル様……何度……何度、貴方は繰り返しているのですか?」
ぼんやりと窓を見つめていたラナが涙を流す私を光を宿した瞳で見落としていた。
「もう百を越してからは数えていない……。ただ、君が壊れてしまわないように遠ざけたり、裏で全てを終わらせたりもした。それでも君は壊れていってしまう。そして、修道院に君が入りそこで私は繰り返しをしている」
「何故そこまでして私を……」
「約束したんだ、君と。何度繰り返す事になっても、君を守ってみせると。君は知らないだろうけど」
「……約束」
「ああ、約束したんだ。だから私は何度でも君が幸せでいられる未来を探す」
「……アデル様、もう良いのです。もう繰り返す必要はありません。……私も悍しい記憶と向き合い前に進まないと、貴方を解放できない」
「ラナ……」
「ゆっくり、ゆっくりで良いのです。二人にとって幸せな未来をこれから探していきましょう」
ラナの痩せ細った手が頬に当てられ、私の涙を拭ってゆくが、涙が次々と溢れていきラナの手を濡らす。
「君はどこまでも優しいな……」
「貴方が何度も私を守ろうとして、繰り返した事を私は忘れません。……だから私も向き合いたい」
ラナは不器用に私に笑いかけた。また私の目から涙が溢れる。これは何度繰り返しても無かった未来。
「ね?だから繰り返さない未来を探しましょう、アデル様」
ああ、これまでの繰り返しはこの日の為にあったのかも知れない。
「ラナ……ラナ……うあ、ああ、あああ!!」
「辛かったでしょう、寂しかったでしょう、誰も分かってくれないのは……」
ラナは泣き叫ぶ私を慰めるように髪を梳く。何度も何度も頭を撫でるように。
「私は……ただ……君が幸せな未来を……」
「これからは、二人です。もう、繰り返さないよう未来を変えていきましょう……」
これは何度も愛しい少女の未来を守ろうとした王子の物語。
王子繰り返しエンド




