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エピローグ

「…申し訳ない、魔の者は姿を消しました」


 騒ぎが静まり話せる状態になるとイリアはため息を吐きながら言う。


 あれからイリアが魔の者との繋がりを断ち切るとティルローゼは糸の切れた人形の様にその場に倒れ伏した。


 そしてそこから混乱を鎮める為に、皇帝側が走り回り、揃って話し合いの場が持てる様になったのは深夜も過ぎた頃だ。


「仕方があるまい。相手の方が何倍も上手だったと言う事だ」


 皇帝陛下もため息を吐く。


「しかし、今回は良い経験になりました。魔の者には龍族の結界が通じず、またああして発狂するまで力が分からないと」


 難しい表情でラドルフが言う。


「だよな…。俺らだけだったらロディア国の姫さん斬るしか止める手立ては無かったよな」


「皇帝陛下の力は魔の者に直接相対しないと効かないと言う事ですか」


「その通りだ。だが、今回は運が良かった。彼の国の宝剣を使いこなせる姫がいたのだから。… …しかし流石だな、その剣は」


「カタナの存在は自国でも知る者は極僅かだと言うのに、知っていらっしゃるとは流石ですね」


「昔聞いた事があっただけだ」


 イリアの言葉に皇帝陛下がそう答える。


「兎も角、イリア姫には度々ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


 ラドルフが口を挟みながら頭を下げる。


「いいえ、気にしていませんので。まさか魔の者が出現するだなんて誰も思って居なかった事でしょう。それを放置したままではこちらも気掛かりでしたし」


「そう言って頂けると有り難いな」


 頭を掻きながらクノーラも困惑した様に言う。


「しかし、今回の騒動で后選定の時期は延ばす事になりました。既に各国にはそう通達致しました。この雰囲気で后を選べる筈もありませんし」


「それは仕方が無いでしょう。不満の声が至る所から聞こえて来る様な気がしますが…」


「既に不満を述べている国はおります。ですが、こうなった限り止む終えません。それに…」


 言いながらラドルフは皇帝陛下を見ながら言葉を続ける。


「我が陛下は未だ后を取るおつもりが無いようですし」


「俺は最初から乗り気では無かった」


「そうだよな~。乗り気ゼロも良い所だったよなぁ~」


 皇帝陛下の言葉にクノーラが次いで口を挟む。


「そうだ…。が、お陰で面白い姫にも会えた。それには感謝しようか」


 皇帝陛下はそう言いながらイリアの方を見る。


「それは運が良いと言うべきか悪いと言うべきか判断に困りますが……。こちらも貴重な体験をさせて頂きました」


「シュッセルは面白い国だ。今後はもっと交流を持ちたいものだ」


 その皇帝陛下の言葉にラドルフとクノーラはおやっと言う表情を作る。イリアの後ろではリンディとエクレアが顔を見合わせながらもにやにやとした視線をイリアに送っていた。


「それは我が国にとっても大変有り難い言葉です」


「くく…っ。やはり面白い姫だな。改めて自己紹介をしておこう。イシュベル・デュオニュース・ボルスティアだ」


「……イリア・シュッセルです」






 こうして二人の出会いはひとまず幕を下ろした。



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