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育成期間0年9ヵ月3週間

魔獣の育成。それが俺の日常であり、卒業課題を成し遂げるための手段でもある。


今日も俺の魔獣コッコは能力アビリティを駆使し、獲物を探す。

能力「疾走」と「空射エア・ショット」を併用することで、最早走り回る必要すら無い。


目標を発見次第「疾走」を発動させ、一気に距離を詰めれば

後は「空射エア・ショット」を当てて気絶させるだけ。

相手を逃がすこともなく、自身が無駄に動き回ることも無い。

見事なものだ。


コッコのくせに、どこか猛禽類を思わせるものがある。

・・・・・その姿は何時ぞやと同じ、包帯まみれではあるが。


今もまた、コッコのつぶらな眼光に見つめられた野ネズミが狩られている最中だ。

動きを止めた獲物に対し、コッコは黄色く小さな嘴にて止めを刺す。

そして、そのまま死に際の相手を喰らう。


生命の奪取は、コッコへ僅かなステータスの上昇をもたらしたが、

当の本人はそれで満足することなく、更なる獲物を探し始める。

これは食い意地から来るものではないだろう。

その場に残された野ネズミの死骸がそれを語っている。


コッコが求めている物が、餌ではなく力であると。


・・・・そんなコッコを見つめる俺は、心ここに在らずといった有様だ。

もう時間も残り少なくなっているというのに、なんて体たらく。

それもこれも、あのクエストで・・・・・。



・・・・・・・・・・ちっ。



俺は言ったぞ。逃げようと。

それをあいつらが無視したんだ。

人の忠告を無視するから・・・・ああなる。


あの時、瀕死のブラストベアーが去ると同時に俺達は業火に撒かれた。

そのまま、訳も分からず俺は死ぬはずだったのだろう。


・・・・だが、死ななかった。

体のあちこちを炙られはしたが、五体満足で俺は生還できた。

何故、あの時死なずに済んだのか。

まるで見当もつかない。


あの場で死なずに済んだのは俺とティ、それにコッコだけだ。

その1人と1羽にしても、全身に大火傷を負い死に体の状態。

他のメンバーは、あの炎によって文字通り燃え尽きていた。


体を丸め、横たわる3人の男達。

炎は3人を黒一色に染め上げ、その姿形を奪った。

彼らに触れると、まるで灰を崩すように体は砕け散り空へと舞っていく。

それは彼らが数秒足らずで、骨まで燃やし尽くされたことを示していた。


これ程の火力が辺りを覆ったにも関わらず、

辺りの木々は枯れ枝1本として燃えてはいなかった。


明らかに唯の炎ではない。能力、スキル、魔術・・・。

考えられる攻撃手段はいくつもある。


だが・・・・恐らく、あの攻撃を行った者こそ、危険種ボスだったのだろう。

あの場で、人間が俺達を襲う理由はないはず。

人間でないなら、魔物の仕業だ。



・・・・・・・・・。



結局、魔物の正体は分からず仕舞いに終わった。

つまり、死んだ彼らは無駄死に、か。


・・・・ほんの数時間程度の繋がりではあったが、

今俺が呆けている原因の1つは、間違いなく彼らの死だ。


まさか、赤の他人の死で感傷にひたるなんて、思ってもみなかった。




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