育成期間0年6ヵ月4週間
1日の訓練を終え、食堂へと向かう1人と1羽。
今日の夕食は固いパンに豆のスープ。
もう何度食べたかも分からない程、胃に収めてきた献立だ。
コッコに至っては、いつもなら豆をくれてやるところだが、今回は違う。
今夜はスペシャルディナーを御馳走する予定だ。
・・・いやはや全く、俺の魔獣は幸せ者だな。
どれだけの大金を積んでも、こんなものは中々食えないぞ?
だから、幸せ者のコッコがそんな恨めしそうな目で俺を見つめるのはやめような?
まるで俺が悪いことしてるみたいじゃないか。
別に飯抜きってわけじゃないんだからさ。
----------------------------------------------------------------
結局、食事中にコッコからの熱い視線が途切れることはなかった。
理解が及んでいないわけでもないだろうに。
全く、食い意地の張った奴はこれだから・・・。
背中に突き刺さる視線を無視しつつ部屋の鍵を開ける。
自室の扉を開けると、室内には擦れ合う音が響き合っていた。
音の主は、籠に詰め込まれた食石虫達。
これが今夜のスペシャルディナーだ。
いつもは大人しくしているのだが、
今日に限って忙しなく動き回っているはなぜだろう?
実に耳障りだ。
これから自身に起こる危機を感じとっているのだろうか?
・・・いや、まさかな。
籠の蓋を開け、手頃な一匹を取り出す。
食石虫は、元の灰色だった外見から一転して全身が赤く染まっている。
俺が食石虫に食べさせ続けた物が物だけに、なるべくして染まった色だ。
さっそく、コッコに一匹与えてみる。
目の前に食い物が現れた途端、先程まで漂っていた負のオーラは一転。
ニワトリモドキは拳大の虫を瞬く間に平らげていく。
食事中のコッコはどこか幸せそうだ。
・・・まあ、表情が変わらないため、あくまでなんとなくだが。
籠を占めていた虫は全部で16匹だったが、ものの数分で完食である。
食事を終え、満足気にその場に座り込むコッコ。
そして、変調が起こる。
魔獣コッコを中心に「熱」が集まっていく。
ただの熱では無い。色を持つ熱だ。
色は「朱」に染まり、周囲を漂う。
人はこれを「火」と例える。
・・・うん。成功だな。
コッコは石を食べることができずとも、虫を食べることはできる。
食べることができるのならば、生命の奪取が可能。
だから俺は「石」を「虫」に置き換えた。
食石虫が都合の良い特徴を持っていたからこそできた芸当だ。
使える品であるにも関わらず、使い道の無かった魔石もやっと消費でき、
コッコの能力の底上げにも・・・・・・?
・・・・・・暑い?・・・・いや、熱いぞ!?
原因は1つしか思い浮かばない。
慌ててコッコへ目を向けると、
そこにはローストチキンになりかけた俺の魔獣がいるではないか。
急ぎ、消火活動に勤しむ。
そして、丸焼きになったコッコを抱え医務室へ駆け出した。
コッコは能力【火性耐性:弱】を取得。
コッコは能力【発火】を取得。
コッコは能力【吸熱】を取得。
コッコは能力【火炎操作】を取得。