育成期間0年5ヵ月4週間
朝日が窓を通り抜け、部屋へ光を差し込む。
気付けば一晩中、本に噛り付いていた。
調べ、そして覚えなければならない事は山積みだ。
座学で学んだ知識だけでは、まるで足りない。
無知は、自身に危険を招く。
が、だからと言って、ただ知識だけを持ち合わせていても駄目だ。
それを知ることができたという点では、あのクエストは俺にとってプラスだったのだろう。
・・・しかし、同時に魔物と対峙する事への恐怖を「思い出して」しまった。
俺は、勇敢じゃない。
恐怖を感じれば、臆病風に吹かれる。
そういう人間だ。
そのせいで、前々から考えていた計画は間延び状態。
いや、これは言い訳か・・・。
活字から視線を魔獣コッコへ移す。
寝息を立て、熟睡するニワトリモドキ。
今だ敵を打ち倒すことも、身を守ることも敵わない脆弱さ。
満足いく仕上がりとは無縁の存在。
一体、他の魔獣との格差は、どの程度埋まったと言えるのか?
・・・訓練、生命の奪取によるステータス強化は少なからずコッコを変えた。
そう、確かにこいつは変わったのだ。
しかし、それは他者から見て「変化」と理解されるだろうか。
否。返ってくる答えは、きっと肯定の言葉ではない。
変化が理解されないならば、周囲は俺を怠慢だと言うのだろう。
他者が求めるのは、結果。決して、努力などではない。
そして、今の俺が出せる結果は、あまりにも小さすぎる。
・・・足りないな。何もかも。
少し、寝よう。
一睡もせず、本と睨めっこしていたんだ。集中力はもう底をついている。
睡眠をとっておかなければ、訓練に支障をきたすかもしれない。
思考を止め、ベッドへ身を投げ出す。
微睡はすぐ訪れた。
徐々に意識が薄れていく・・・。
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・・・・・・・・・・いて・・・
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・・・?
・・・意識が消える一瞬。何かが聞こえた気がした。
いや、これは耳で聞いた言葉か?
分からない。
今の俺では分からない・・・。