育成期間0年5ヵ月3週間
ある日の午後。
俺は魔獣コッコを引き連れ、カナマラへと向かっていた。
本来ならば、カナマラへ向かう理由など無かったのだが、
まあ向かっている以上、理由ができたわけで・・・。
その理由というのが、俺が使っている斧。
訓練中に柄が折れてしまったのだ。
以前のクエストでボロボロになったまま使い続けていたのは、
やはり不味かったらしい。
便利な物は我慢すれば済むが、必要な物はそうにもいかない。
あくまで俺の価値観上での話だが、この斧は後者に分類される。
なので出費は痛いが、ここは諦めておく。
ケチって痛い目に遭うのは、自分自身なのだから。
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・・・カナマラに到着したはいいが、一体何があった?
建物は、所々焼け落ちているものもあれば、
壁に穴が開いているもの、柱が圧し折れ倒壊したもの。
少しの間、街中を見て回ったが、無傷な建物は少ない。
どれも何かしらの傷を負っている。道行く人も憔悴した顔をしていた。
魔物の群れが襲撃・・・?
いや、有り得ない。カナマラには警備隊がいる。
それに冒険者ギルドの支部にも、腕に覚えのある猛者達が揃っているんだ。
その辺の魔物が群れようと、街に入られる前に撃退できるはず。
ここまでの惨状になる筈がない。ならば、何がどうなって・・・。
『なーにブツブツ言ってるんです?』
・・・背後から聞き覚えのある声がする。
『お兄さんの悪い癖ですよねー。そうやってすぐ考え込んじゃうのって。』
聞き覚えのある声ではあるが、関わると面倒な気がする。
『フフン。大方、この町の様変わり様に困惑してるんでしょう?』
ここは、迅速にこの場を離れるとしよう。
『・・・逃がしませんよ?』
走り出そうとした瞬間、目の前には蒼髪の少女。
振り返り、逆方向へ駆け出そうとすると、また目の前には蒼髪の少女。
・・・そういえば、こいつ滅茶苦茶すばしっこかったな。
初めから、俺に逃げる選択肢は用意されていなかったか。
はあ・・・・・。
取り敢えず観念したふりをしておく。
別に頼んだわけじゃないが、蒼髪の少女ことティ・エルトは饒舌に語り出した。
内容は勿論、カナマラで何が起きたのか。
彼女の語った話はかなり主観が入り混じっており、はっきり言って解り難かった。
人として相手にはきちんと伝わるように話すべきだと思うんだが、
きっとそういうのは苦手なんだろう。
まあ、大事な部分は理解できたし問題ないが。
ティの話によると、カナマラの惨状は魔物の襲撃によるものらしい。
別に、それだけなら俺にも推察できた範囲だ。
問題なのは、これがたった1体の「グール」による被害だということだ。
・・・正確にはグールの亜種「ポイズングール」によるものだったが。
はっきり言って、最初はティの誇張表現だと思っていた。
不死系に属する下級の魔物「グール」に、単体で人間の集落を襲う力など無い。
いや、そもそも知性を持ち合わせていないグールに、
集落を襲撃するという考えが浮かぶわけがない。
だが、グールは来た。
常駐する警備隊を容易く蹴散らし。目に付く建物へ魔術で火を放ち。
ギルドの冒険者達が総出で迎え撃ったが、倒しきるのに半日掛かったそうな。
・・・こんな話、誰が信じられる?
誇張表現だと思われても仕方ないだろ。
普通は、駆け出しの冒険者1人でも充分対処できるような魔物なのだ。
それが、亜種とはいえ倒すまでに半日、ましてや魔術を使ったなど前代未聞である。
グールに限らず、知性を持たない魔物は基本的に魔術を行使できない。
にも関わらず、グールは魔術を。それも中級魔術まで使ったそうだ。
魔獣ならまだしも、ただの魔物がこんな・・・。
『・・・・・で、なんと!その魔物を倒したのって実は私なんですよ~。』
・・・まだしゃべってたのか。
もう語り終えたと思っていたが、ただの小休止だったようだ。
聞くことは聞いたし、さっさと用事を済ませて帰りたいんだがな・・・。
『あ、そう言えばお兄さん。グールには何かを探す特性みたいなのってあるんですか?』
・・・?
こいつはいきなり何を言ってるんだ?
何かを探す?グールが探す物なんて、腹に入れるモノ以外ないだろ。
・・・戦闘中、しきりに何かを探しているようだった?
グールにそんな知能なんてない。
だが、もし本当にそうだとすれば、考えられる可能性はグールという魔物になる前。
つまり「生前」の影響だ。
グールやゾンビなど一部の魔物は、人間の死体を媒介にして誕生する。
その際、生前にやり残した事。「未練」が「執着」に替わり、
魔物の中に残留したとすれば或いは・・・・。
そういえば、グールの強さは媒介になった人間に依存するんだったか。
ならば、媒介になった人間が途轍もなく強ければ、この惨状も合点がいく。
少々、都合のいい考えだが、実際起きてしまっているのだから、
好条件な奴が近くで死んでいたのだろう。
カナマラの住人にとっては、不運としか言えない出来事だ。
そうだな。例えばの話だが・・・・・。
『え?ああ、私難しいこと分からないんで別にいいです。』
・・・・おかしいな。
話を振ったはあっちだよな?
なのに、答えは知らなくてもいい?
何か、考えてた俺が馬鹿みたいじゃないか・・・。
・・・・・・・
やっぱこの娘、面倒くさいよ・・・。




