育成期間0年5ヵ月1週間
半身が痛む。
ここは医務室のベッドの上。
俺は今、体の半分をミディアムレアに焼かれ、苦痛の真っ只中だ。
別に、火遊びをしていたわけでは無い。
俺の体を焼いたのは、魔術。
下級に属する、ごく一般的な火の魔術。
だが下級と言えど、当たればこの通り、数日間はまともに動けない。
痛い・・・・。
痛みに耐えかね、愚痴をこぼす。
薬草は傷の治癒を早めてくれるが、傷の痛みを消してはくれない。
医務室の専属治療術士曰く『痛みがあるなら大丈夫。』だそうだが、
当事者からすれば全く大丈夫ではない。
不幸中の幸いは、狙いが俺の魔獣では無かった事か。
もし、魔術がコッコを直撃していれば、焼き鳥が1つ出来上がっているところだ。
そもそも、俺にこんな仕打ちを行った馬鹿は誰か?
・・・考えるまでも無い。
ここ最近は、大人しくしていたかと思えばこれだ。まったく嫌気が差す。
おそらく、魔術を発動したのは奴らの魔獣だろう。
連中に、魔術の心得があるとは思えない。
第一使えるならば、とっくに使っているはずだ。
奴らが、手にした玩具で遊ばないはずがない。
現に魔獣という玩具を手にしてからというもの、貴族の横暴は酷くなった。
少なくとも、以前は命に係わるような事まで連中もしなかった。
・・・まあ、どちらにしろ連中が屑であることに違いはないが。
・・・・・・
これでまたしばらくの間、コッコの訓練を行うことはできない。
夢が、遠ざかる・・・。