育成期間0年3ヵ月2週間
(・・・違う・・)
(・・・俺は・・・ただ・・・・)
やめろ。
(・・・お前は・・・なぜ・・・)
(・・・・・どうし・・・・・)
(・・・野垂れ死・・・・)
やめろ。俺は・・・
(お兄・・・・・帰っ・・・・)
(なぜ・・・・)
俺はッッ!!!
・・・・・・・
何度見れば、俺は気が済むんだ?
夢を追いかけている最中に、夢が邪魔してくるなんて。
滑稽じゃないか。
部屋に、乾いた笑いが木霊する。
外は、激しく雨が降り続けている。
この天気の中、外で訓練する気にはなれない。
・・・・なれない?
少し前まで、俺が持っていた情熱はどこへいった?
逆境にめげず、夢を掴もうとする情熱は。
・・・いいさ。
きっと夢のせいだ。
そう、この悪夢のせいに決まっている・・・。
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コッコを連れて、学校に併設されている図書館へ向かう。
この図書館。ここを卒業していった貴族達が多額の
資金援助に行い、建立したんだとか。
貴族の数少ない善行の結晶である。
六角形の特徴的な扉を潜り、館内へ入る。
館内は、中央に設置された巨大な輝水晶の周りを囲うように、
本棚が幾重にも配置されている。
輝水晶近くの机では、俺の後輩にあたる候補生達が勉学に励む姿が見える。
いや、後輩に混じって俺の同期も何人かいるな。
魔獣に本を読み聞かせている奴もいる。
魔獣にそんなことをして、意味があるのかは分からないが。
ちなみに、読み聞かせている魔獣は・・・・・ゴブリン。
・・・・・・・
いや、あのゴブリンは、関係ないだろ。
魔獣である以上。
従魔士との絆がある以上。
命令無しに人を襲う事など、有りはしない。
必要な本を棚から取り出し、一席を陣取る。
本を開くと、次々と内容が「更新」されていく。
マジックアイテムとしての効果が発動したためだ。
効果は、原本の内容が更新されると、
その内容が複製品であるこの本に反映されるというもの。
図書館に収められた蔵書は全てマジックアイテムだ。
常に最新の情報が手に入るので便利ではあるが、一体幾ら掛かったのやら・・・。
余計な考えを捨て、目的のページを探す。
・・・見つけた。
【魔物の能力について】
情けない話だが、ここ最近コッコが修得した能力。
「疾走」以外、どのような効果を有しているのか。
全く分からないのだ。
座学で習った一般的な能力ではないのは確か。
ならば、レアな能力の一種かと考え、こうして調べにきたというわけだ。
本には、今まで発見された能力の名前と効果、
ものによっては能力の修得方法まで記載されている。
しばらくの間、本を睨み付け2つの能力。
「不倶戴天」
「憤怒」
の記述を発見した。
前者は、一度敗北した「敵」との戦闘において、膂力値の大幅な上乗せ。
後者は、一定のダメージを受けた場合、こちらも膂力値を上乗せするというもの。
ここだけを読めば、かなり使える能力に思える。
だが、能力発動の代償が痛い。
どちらも、体力値と耐久値の常時減少が付き纏っている。
救いは、2つとも任意に発動が可能な点か。
・・・発動してしまえば、体力値が空になるまで止まらないが。
使い道は今の所思い浮かばないが、うまく使えば起死回生の一撃に
使えるかもしれない。といった感じの能力だな。
残りの1つについては、名前の記述すら無かった。
よほどマイナーな能力なのか。
それとも、新種の能力なのか。
分からないものは仕方ないので、暫くの間は放置しておく。
従魔士のスキルレベルが上がれば、何れ能力を読み解くことも可能になるだろう。