328/387
328
岐阜さんは出会っときから今日まで一貫してる。
変人だし、脅してくるけど、絶対に嫌だと言うラインは超えては来ない。弁えてる。
結局、その線引きを台無しにしたのは私だった。
気の迷いだった。絶対にそう。
ファーストキスなんて黙ってればそこから何も始まることは無いし、無かったことにだって出来た。
そうしなかったのは何故か。その理由は分からない。
岐阜さんに対して名残惜しいと感じてる。
この一人ぼっちの家で、寂しさが紛れたのは事実だった。
唇に触れただけなのに、心がドクンと跳ねたのも本当で、心地良さを感じてる。
だから余計に岐阜さんへ視線が行くし、昨日は柄でもないことをした。
「な、なに?どうしたの」
「え、あ、め、命令!」
岐阜さんの鎖骨をみて、自分が鏡越しに移していたキスマークを幻視したり、岐阜さんの唇にもう一度触れたいと、見ていたのがバレて戸惑う。
馬鹿正直になんて言えるわけないことを考えていたから、私達のやり取りを口にしたけど、その内容は考えて無くて。
奇妙な沈黙が降りる。




