第4話 お姉ちゃんと初めて会った時の話
皆が集まっている所に向かおうとした時に
「ねぇ」
後ろから声かけられて、振り返った。
「えっ?」
そこには、すらっと背が高く、凄く美人のお姉さんが立っていた。
ボクと同様に白いタイツに、レオタードは黒だ。
ボクと顔を合わせた瞬間、とても魅力的な笑顔を見せてくれた。
『うわっ』
その笑顔にいきなり、胸がドキンと鳴った。肖像画のお姫様みたいなお姉さん。いきなりで目を逸らせられなかった。
「ねぇ、あなた。今日が初めて?」
「え、あ、そうです……」
声も、とても綺麗。少しおっとりとして、でも綺麗に透き通っていた。
「やっぱり。ここはチケット制だから、毎回必ず同じ人が来る訳じゃないけど、でも多分これまで見た事無かったから、初めてだと思ったの。それに貴方、とても背が高いし」
「い、いえ……」その後『アナタ程じゃナイデス』と言いかけたけど言えなかった。
実際、ボクは身長155cmくらいでクラスでも男子含めて1・2争っているが、彼女はさらにそれ以上、おそらく165cmはあるんじゃないかな。
「姿勢も良いわね。中学生?」
「い、いえ。今度、中学になります」
「そう……」
そう言って彼女は、ニコっと大きく笑った。
「私は今度3年生。だからここじゃ最上級生。この教室は中学生までだし、今年の3年生は全員受験勉強で退会しちゃったから」
「あ、ああ、ソウナンデスカ……」
何か動揺して、自分で何を言っているのかも自覚できない。
「とても歩き方の姿勢が良いからびっくりしたの。やっぱりバレエ経験者?」
「え、いえ。今日が初めてです」
「うわぁ」
そのお姉さんが目を丸くする。
「そうしたら凄い素質ね。ぜひ、続けてちょうだいね」
「あ、いや……」
ママに騙されて、今回限りと言えない。
でも、ちょっと気になった事を聞いてみた。
「あの、ここチケット制なんですか?」
「そうよ。ここは市の設備とかの好意で凄く安いの。券は1枚500円なんだけど、幼稚園中心のテディクラスは1枚。一つ上のジュニアクラスはチケットは2枚。上級のユースクラスは3枚なんだけど、今日はジュニアとユースは合同みたいだから、今日は私も2枚なの」
そう言って、お姉さんはニッコリ笑った。
すると、ジュニアクラスで1回1,000円か。思ったより安いな。
「じゃあ、ボクなんかは2枚なの?」
「ううん」
お姉さんは、ちょっと笑い顔をこらえる様に、顔を横に振った。
「初めてなんでしょ。だったら体験コースで1回だけ、無料よ」
「え~っ!!」
ちょっと待ってよ、レッスン料払ったって。しないのなら、お小遣いから引くって、ママ! また、ダ・マ・サ・レ・テ・タ……。
「ほら、もう始めるよ」
「え? え?」
ボクは、お姉さんに手を引かれながら、真ん中の先生がいるところに小走りした。
「はーい。みんな、揃ったかな?」
中央に、紺タイツにレッグウォーマー。上はTシャツとカーディガンを着た大人の先生が来て、皆に声をかけた。
途端に、それまでガヤガヤとうるさかったのがピタっと止んで、皆がその中央の先生の方を向く。
「あら始まったわ。それじゃ、行こうか」
「あ、はい」
背中を叩かれて、ボクもその中央に向かった。
遠くにいた子も走ってきて、程なく全員集まった。




