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43.夢 ――希望へと手を伸ばす――

【前回までのあらすじ】

 欲望の火種に薪をくべろ。




 いまなら、“大本命のあの子”の顔がしっかりわかる。

 誰なのか、ちゃんとわかる。

 最初に現れた時、あとを追いかけたあの時には、おれには“大本命のあの子”が、ほんとうには誰だかわからなかったんだ。

 その子はきっと、おれの理想のタイプ――“おれを求めてくれる子”でしかなかったから。

 逆に言えば、“おれを求めてくれる”なら誰でもよかったんだ。

 でもいまは違う。

 大本命のあの子が、おれを求めているんじゃない。

 おれが、大本命のあの子を求めている。

 だから、誰だかはっきりわかる。


 ――とはいっても、どうやら相思相愛だったみたいだけど。


 おれの大本命のこの子は、四つん這いになって近づいてきている。


 おれを押し倒し、覆い被さってきた。


 くすくすと小さく笑いながら、体を、それも下半身を中心に優しく、ときに強く、なでられる。


 素直に変身するリトルサネユキにこの子は微笑む。

 そしてこう言い放った。


「したいこと、なんでもしていいよ。」


 ――えマジで。


(最高かよ。)


 武士は食わねど(下半身が)高楊枝……じゃない、据え膳食わぬは男の恥、とばかりに縮こまった心臓を鼓舞して、この子の胸元へ、震える手を伸ばしていく。


 ……やってやる。


 やってやるぞおれはァ!!




【次回予告】

 最終回、三善実幸のこれから。

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