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21.ミニスカを履いて過度に動く活動の状況について幼馴染に尋ねる

【前回までのあらすじ】

 気になっている女子に会いに彼女のクラスに行こうとするが、途中で倒れてしまう。そこを先生に助けられ、気づけば放課後になっていた。

 先生から女子の情報を聞き出し、先生立ち合いのもと明日会う約束もしたが、……それはさておき、夕飯の食材を買って帰らないと。




 学校帰り、スーパーに寄る。

 今日はポイント5倍デーだ。

 普段は抑えている購買欲を発散させる日である。


 卵10個入りワンパックを睨み別のスーパーではいくらで売っていたか思い出していると、声をかけられた。


「あんたなにしてんの?」


 夕濵(ゆうはま)ミユ――幼馴染だ。

 同い年で同じ学校で別のクラス。

 気が強い。

 あと情緒が不安定。


「買い物。」


「え? うそ? ……あたしについてきちゃったの?」


 人の話を聞かないやつだ。

 おれがおまえをストーカーするとでも思ってんのか?


「は? いやいやないない怖い怖いジイシキカジョ―……」


 わざと、くちさがなくしている。

 こいつは昔からおれにだけあたりが強い。

 女子には優しくて姐御肌(あねごはだ)でむしろ慕われてて、男子には……おれ以外と話しているのをあんまり見ないからわかんないけど、とにかくおれにだけ容赦がない。

 だからこいつを相手にするときには、普段の7倍辛辣になって対抗してる。

 そのほうが気が楽。

 自分も気が強くて、相手からの言葉になんか全然動じないぞってフリしたほうが、変に傷つかなくて済む。


「はぁ? うっさい。」


 不機嫌に言うくせに、そばに立ったままこっちを見つづけている。


「なに?」


 ミユの視線が逸れて、そのあと言う。


「お一人さま、お一つまでだって。あたしそばにいてあげる。」


 スーパーのかごに10個入りパックを2つ入れた。

 おれは良いなんて言っていないけど、……都合は良いしまぁいいか。


 精肉コーナーに歩きはじめた背中に揺れるポニーテールから『話しかけて』のオーラが出ていて、しょうがないから話しかけてやる。


「部活は? サボり?」


 勢いよく振り返る。


 大きな目でガン見してくる。


「用があったの。」


 おれに当てつけるような言い方をする。


「えーなに? ストーカー? おれについてきちゃったの?」


 冷やかしてみる。

 が、無視される。


 揶揄1に対して暴言10で返してくるミユが、なにも言わない。

 珍しい。

 簡単に部活を休むようなヤツじゃないし、なにかあったのかもしれない。


「そっちはなんで買い物? 用はいいの?」


「うん。もう済んだし。」


「まだミニスカ履いてるの? ミニスカ履いて過度に動く活動してるの?」


「スコートね。」


「楽しい? いたいけな男たちの視線を集めるの。」


「は? 練習は普通にジャージだし。スコートなんて試合のときだけで、観客に男なんて全然いないって。」


「そうなの? 勝ってる? 楽しい?」


「楽しい……かな。」


 部活について話しても様子が変わらないから、部活が嫌で休んだわけではないらしい。


 本当に用があったのだろう。


 小学生のときに高熱を出しても意地になって運動会に出てかけっこで1等賞を取ったあと勢い余って鼻から吐いた負けず嫌いのミユが部活より優先させるんだから、よほどの用だったんだろう。


「……今度試合あるから見に来れば?」


「パンチラを?」


 真顔でふざける。


 怒るかと思ったが、ミユは思わせぶりに笑った。


「可愛い見せパン履いてあげよっか?」


 『見せパン』っていうパワーワードで頭を殴られる。

 そんな隙だらけの顔を、ミユが嘲笑っているのに気付いておれは焦った。


「おまえの生足なんて見たくないんだからねッ! スポーツマンシップに則ってよこしまな動機では見に行かないことを誓いマスッ。」


「安心してよ童貞。あたし普通にスパッツしか持ってないから。」


 ミユはツンとする。


「スパッツも見せパンもエロいのはエロい。」


 おれは正論を言う。


「あんたがエロい目で見てるからでしょ。写真なんか撮らないでよね。」


 ミユはツンとする。


「でも動画は撮るかも。あとで何度も再生してミユの動きをスポーツ科学的な観点から分析しなくてはならンからね。」


 おれはまじめ腐って、ミユが笑う。


「変態じゃん。運営に捕まれよ。てか捕まる。」


 なんて、どうでもいい会話をしながらレジまで行く。


 会計されているうちに鞄を引っ掻き回すが、クソ、見つからない。


「やべ財布忘れた。」


「紙のお金とかまだ存在するんだ。」


 焦るおれをしり目に、ミユはスマホをレジに差し出す。


(ペケ)payで。」


 レジの店員さんがおれのほうに視線を向ける。


「あ、えーっと、」


 借りは作りたくないが、アイスを買ったので溶けないうちになんとかしたい。


「大丈夫です。」


 ミユが語気強めに言うから店員さんは焦って処理する。

 なんだか申し訳ない。『研修中』の腕章をつけているからなおさら。


「すいませんねうちのがツンデレで。普段はもっとおしとやかにしてるんですけど。」


 ミユはポニーテールが水平になるくらいの勢いで首を回しておれを見た。


(ほーらここデレるとこだよ~、デレちゃいなよ~、「『うちの』って、…バッカじゃないの!? ……まぁどうしてもっていうなら、なってあげないこともないけどッ!」とかって言っちゃいなよ~。)


 と、念じながらミユを見つめて反応を待つ。


 普段はツンツンしてばっかだけど、デレるとかわいかったりする。

 ……が、今はまだそのときではなかったらしい……静寂が気まずい。


 店員さんは「ありがとうございました~。」と型にハマった挨拶でおれたちを流すことにしたようだ、接客態度としては100点満点大正解。


 ……ガチのツンツン…ていうかただ辛辣なだけなのにいつかデレるって信じてる痛いヤツっておれは思われたんだろうけど、……まぁ、正解。




【次回予告】

 デレあり〼

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