表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/328

ファイルNo.2 真夏の夜の夢 30

 しかし、そう聞かれると考えないようにしている分だけ、余計に刺のように刺さって抜けなくなってしまう。

 近藤愛美は、SGAに入ってまだ一年にならない。昔のことは何も知らない筈なのに、時々巴の過去を刳るかのような発言をする。

 本人には他意も深い意味もない。それと同じだ。

 キクの言葉も、自分を念頭に置いて話しているに過ぎない。

〈俺はさ、親とかに言ったら馬鹿みたいって言われるの間違いないけど、アメリカとかいって恐竜の化石の発掘に携わりたいと思ってる訳。小さい頃から夢だったんだ。今なんか夢なんて言ったら、友達にだって馬鹿にされるもんな。夢は寝てみろって。現実は甘くないけど、それでもさ。やりたいことの為にあがくのって馬鹿かな。結局は無駄になったとしても、それはそれでいいと思うのって、人から見たらやっぱり馬鹿なんだろうか。でも俺は、自分は何にもしない癖に、夢を語れる奴を馬鹿にはしたくない〉

 夢。

 子供の頃から夢だと?

 巴は、薄ら笑いを浮かべようとしてやめた。

 今、巴は自分の部屋で一人パソコンに向かっているのだ。何かを取り繕うことも、誰かを意識することもない。

 夢。夢か。

 巴に夢の話をした人は、一人だけだ。その人は自分の夢を語ってくれた。

 その人にも、自分の夢は話せなかった。話せばよかったと今となっては思う。もう聞いてもらうことはできないけれど。

 夢なんて言ったら、大概の人が嘲笑に近い表情を浮かべるだろう。

 表情は変わらなくとも、心の底では嘲るだろう。夢は寝てみるものだって。

 確かにその通りだ。

 どうしてキクは、たった数度メールをやりとりしただけの相手にこんな話をしたのだろう。

 まだ続きがある。

〈けど、なんか集まって縮こまってるのもムカつく。ゲームでもマンガでも他の何かでも、打ち込めるものがあるのはいいけど、周りが分かってくんないから、分かってくれる奴だけで集まって、それで満足してるのは嫌だ。本当はあんたも、そういうのが馬鹿げたことだって思ってるんじゃないの。違うかい。あんたも俺と同じじゃないかなって言うのは、そのへんな訳。俺は、今の現状を打ち破りたい。無駄かもしれないけど、何かをしてみたい。あんたは、今で満足してるの?〉

 満足。

 満足ならしてる……筈だ。

 そう思い込んでいる、思い込もうとしているだけかも知れない。

 巴が属しているインターネットのバーチャル空間は、それ自体が一つの閉じた世界だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ