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ファイルNo.2 真夏の夜の夢 28

〈大学はよっぽど勉強したいんじゃない限り、専門学校とかで技術つけた方がいいかも。でも資格持ってても、就職先がなくてフリーターってのも多いからな。適当なことは言えないけど。人は当てにしないw〉

 あくまでトモエとしての言葉である。

 おためごかしなことを言うほどできた人間は気取っていないが、これだって一般論という器用な逃げ道に過ぎない。

〈けど、ゲームの『フェアリィファンタジスタ』なら教えてやれるよ。何かネットで、フェフスタの裏技流してる奴がいるんだよな。なんか昔の怪盗Xみたいで、それが誰かは分からない。別に悪いことしてる訳じゃないけど、変わってるって言えば変わってるよな。サイトの奴ってオタクばっかりって言うけどさ、付き合ってみたらみんないい奴だぜ。チャットに出なよ。紹介するし。オレは、いつものサイトのチャットルームにいるから。〉

 そうしてキクを誘っておいて、巴は言葉通りチャットルームに直行した。

 サイファーはきていない。

 今夜のメンバーとしては、アネゴンとカヲルコの女の子二人と、ナオリン(ネットおかまなので実際は女ではない)とメンフィスの男二人の計四人がいた。

〈メンフィス>女の子四人に囲まれてるみたいです〉

 女性陣を意識しているのか、言葉が妙にですます調になっている。本物の女性であるアネゴンとカヲルコは、全く相手にしていないが。

 それにナオリンは男だし、トモエだって女名前だと決めつけるのはよして欲しい。

 多分フジタさんが言ったのを鵜呑みにしているのか、メンフィスは、トモエのことを女じゃないかと疑っているのだ。

 トモエでは、友絵のような名前を思い浮かべられるのも仕方がない。

 

 キクは、幾ら待っても現れなかった。それが気になって、巴はずっと上の空だった。 仲間との会話も上滑りばかりしている。

 巴は、十時過ぎに調子悪いから寝ると言って、チャットをおりた。それでもキクからメールがくるのではないかと思って、眠らずにいた。

 食事は、階下におりるのが面倒になって栄養補助ビスケットを噛ってやり過ごしたが、喉が渇いて仕方がないので、下に降りた。

 キッチンに明かりが入っている。

 

 珍しい。早く帰ってきたものだ。

 

 巴は親と顔を合わすのは何日ぶりだろうと思いながら、キッチンに足を踏み入れた。

「お帰りなさい。母さん」

 母はテーブルに顔をつっぷしていた。

 居間のサイドボードに入れてあった、ウィスキーの瓶を手にしている。スーツ姿のままだ。

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