表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/328

ファイルNo.2 真夏の夜の夢 21

「明日の私の誕生日にね、紫苑さん達が、パーティー開いてくれるって」

 紫苑達ということは、紫苑と東大寺の二人以外にいない。仕事がまだ残っていると言うのに、紫苑もご苦労なことだ。

 羨ましいという思いが、巴にそんな意地悪な感情を抱かせた。

 喉の奥を鳴らす独特の笑い方で、いつもの如く綾瀬がちゃちゃをいれる。

「子供じゃあるまいし」

 愛美は機嫌がいいのか、気にしたふうもなく、

「いいんです。子供だから」

 と言って、なぜか自慢げに胸を張った。

 それを見る綾瀬の表情は、巴などには見せたことのないような優しさを湛えている。

「そうだったな。で、幾つになるんだ」

「十七です」

 若くて結構と綾瀬は皮肉るように呟いた。

 その若さを妬んでいるようにも、とれないことはない。

 愛美と一回り以上、綾瀬は年が離れている。愛美は、無邪気に綾瀬に向かってねだった。

「プレゼント欲しいなー、なんて」

 もっと大人の女が同じことを言えば、媚を含んで嫌らしく聞こえるが、天真爛漫な愛美の様子は、見ていても微笑ましい。

 しかし、案の定綾瀬は眉を顰めると、吐き出すように言った。

「人に催促するものか」

 愛美が屈託なく笑う。返事もいたって分かり易いものだった。

「一番高い物、くれそうだもん」

 綾瀬は、何を考えているのか、顎に手をやったままで黙っている。

 突然、何を思いついたのか、綾瀬は皮張りのアームチェアーから立ち上がると、愛美の背後に近付いた。

 愛美がきょとんとした顔をしながら、首を捩じって綾瀬の行動を見守っている。綾瀬が身を屈め気味にしながら、愛美の耳許に低く囁いた。

「やるからには、見返りが欲しいものだな」

 さりげなく、綾瀬は愛美の肩に手を置く。愛美は肩に触れている手に、自らの手を重ねた。

 見てはいけないものを見たような気がして、巴はそれとなく二人から視線を外す。

「じゃあ、綾瀬さんの誕生日にケーキ焼いてあげます」

 愛美は結構、どころか本気でそう言った。一気に巴の気が抜ける。

 綾瀬もそれは同じらしく、心境を表すかのように複雑な顔になった。

「それは、いい」

 綾瀬も、愛美が料理が苦手なことを知っているらしい。チャットなら、ここで、巴もw(笑い)の文字を送るところだが、実際には吹き出すことすらできなかった。

 愛美は、なぜか分からないといった顔をしていたが、断られた理由に思い当たり、どういうことよとプリプリ怒り出す。

 愛美は、巴にも失礼だと思わないかと聞いてきたが、巴は肩を竦めただけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ