ファイルNo.1 パンドラボックス 39
身長は、180㎝はあるだろう。
彼は、部員に二言三言何か言うと、入口に駆け寄ってきた。それが、結城直哉だった。
愛美は少年を見上げて、ペコリと頭を下げる。
「ごめんなさい。突然。お邪魔して」
愛美は、相手に自分が何者であるかすぐに分かるだろうかと不安に思ったが、彼は分かってくれたようだ。
「もしかして、遥の?」
愛美は頷いて、自己紹介をする。電話では、こちらは名乗っていなかった。
「近藤愛美と言います」
結城は頷くと、後輩達に指示を出した後、体育館の外へと愛美を連れ出した。
結城が、バスケ部の部長のようだ。日に焼けた、見るからに逞しい少年だった。
短く刈り上げた髪を所在なさそうに掻いている。
「電話くれるって言ってたけど、昨日の今日で、実際に来てくれるなんて。それで、遥のことなんだけど。どうなってるんですか?」
結城のそれが、迷惑そうな口振りではなかったことで、愛美は安心した。
「東大寺さんが、どうして学校にあんまり来ないのか、その理由を知っていますか?」
愛美は、一か八か賭けてみた。何も言い訳は考えていない。
行き当たりばったりでもなんとかなるだろうという大雑把さで、ここまで強引にきてしまったのだ。
結城は、落ち着かなげに、頭にやった手を、今度は顎にもっていった。
「学校には家の事情としか言ってないけど、俺らにだけはちょっとだけ教えてくれた。何か、妹が病気で、金がいるからバイトして稼いでるとか」
そうして、急いで付け加えた。
「あんま話したくないようだし、俺らも深くは聞いてないんだけど」
口ごもった結城に、愛美は勿体振って頷いた。
「そうなんですか。東大寺さん、ちゃんと話してるんですね。その妹の病状が悪化して、彼、今実家に帰ってるんです」
我ながら最低な嘘だ。もっと他の言いようがなかっただろうか。
――何だそうだったのか。
結城の顔に、安堵の色が浮かんだが、すぐにまた心配そうな顔になった。
今度は東大寺ではなく、彼の妹のことを心配しているのだろう。東大寺は、優しい友達に恵まれているようだ。
「それで、当分こっちに戻って来られないんで、部活のこと迷惑かけるって言ってました。あの、東大寺さんから頼まれたんですけど、渡辺新吾君ってどんな子なんですか。ゲームを返しておくように言われて、それで今日はここにきたんです」
結城の不安は、払拭されたようだ。




