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近接戦では剣士タイプの方が強いですよ?(仮)&(真)  作者: 墨人
(仮)第二章 夏休み~海魔迎撃戦~
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この夏一番の思い出

夏休み編のおまけ的な話です。

メインストーリーには一切関係ありません。

 ホテルの部屋に戻って昨日の仮眠から敷きっぱなしになっていた布団に倒れこんだ。


「疲れた……眠い……」


 徹夜で八時間近い戦闘をこなしたのだ。肉体的にはともかく精神的疲労はあるし、緊張が解けると途端に眠気に襲われた。このまま布団に潜り込んで眠ってしまえば、さぞかし良い夢が見れそうだ。


「遊びに行くのは無理かなー」

「私はちょっと駄目っぽい」


 成美や沙織もぐったりとしている。

 事前にスケジュールを確認した時、迎撃戦の前後にある程度の自由時間が確保できるのは確認していた。昨日海水浴場に行った時間と、今日帰りのバスが出る午後二時までの時間だ。

 誰が組んだのかは知らないけれど、夜通しの迎撃戦のために睡眠時間を確保したのは間違いない。


 当初は帰りのバスで寝ることにして、今日もこの後遊ぶ筈だった。

 がっつり遊ぶなら体力勝負とは沙織の言だけど、徹夜明けでもそれくらいの体力は残ると思っていた。


 結果として私たちの目算は甘かったわけだけど。

 ……長時間の戦闘状況がもたらす精神的な疲労を過小に見積もっていた。


「でも今寝たらそれで終わっちゃいそう」

「お昼御飯も寝過ごしちゃいそうだね」

「それももったいないような気もするけど……」


 せっかく仲の良い友人同士で海水浴場に来ているのに、残りの時間をただ寝て過ごすのはもったいない。と言って、体は睡眠を欲していて遊びに行くほどの余力も無い。

 話しながらももう諦めムードだった。


「寝るにしても、お風呂くらいは入ってこようかな……」

「あー、大浴場あるんだっけ」


 お風呂という単語に反応して、無意識に髪を触っていた。昨日海で泳いだ後、仮眠前にシャワーを浴びただけだ。何となくゴワついているような気がする。

 うん、お風呂にはぜひ入りたい。


 結局お風呂入ってさっぱりしたら、もう潔く寝ちゃおうという線で話はまとまった。一緒に遊びに行く予定だった男子達に携帯電話で連絡してみると、彼らも疲労には勝てないようで即座に了解した。


 部屋に備え付けの浴衣やタオル類を持って大浴場に向かうと、途中で別部屋の委員長達と合流することになった。考えることはみんな同じらしい。


 *********************************


 眠気で頭が鈍っていたとしか言いようがない。

 重大なミスに気付いたのは、脱衣所で服を脱いでいる最中だった。


 サラシを解いて解放感に浸っていると、背筋に寒気にも似た感覚を得て慌てて振り向く。

 そこには物凄い目で私を見ている沙織がいた。正確には沙織が見ていたのは私の胸なのだけど。


 もしかして、まだ昨日の件を引っ張ってる?


「さ、沙織? 目が怖いんだけど?」

「ああ、ごめんごめん。ちょっと眠くて感情の抑えが……もげてしまえなんて考えてないよ?」

「もげ……!? ひ、酷いっ!」


 徹夜明けで妙なテンションになっているだけだ。そう思っておこう。

 私から見れば沙織のスレンダーなプロポーションは十分に魅力的なのだけど……。

 って、なんで女友達の裸を見て魅力的だとか考えてるんだ私は。


 テンションが変なのは私もだった。

 そう、この徹夜明けのテンションというものを失念していたのが、私の犯した失敗だった。


 *********************************


 洗い場で成美、私、沙織の順に並んで座る。

 脱衣場からここまでできるだけ成美の方は見ないようにしていた。

 視線がエロいとか男子的な視線だとか言われているし、ここでそれを発揮してしまうといささか不味い。なにしろお風呂だし、成美も全裸なのだ。

 いつか見た脱衣データは凄かった。

 あれの現物がすぐ横にあるかと思えば、見てみたい気もしないでもないわけでもなくもない。


 どうという事も無い会話を続けながら、真正面の鏡に映る自分の顔だけを見るようにする。


「ねー、なんか私を避けてるー?」

「え? 避けてないよ?」

「さっきから全然私の方見ないじゃない」

「そんなこと無いってば」


 成美の顔だけを見るように注意しながら視線を向けると、なんだか不満そうな表情だ。

 そのまま顔を正面に戻すと、隣で沙織が忍び笑いを漏らしていた。


「頑張るじゃないの。ナイス自制心」


 気楽に言ってくれる沙織を恨めしく思いながら髪を洗う。

 隣では成美がボディソープに手を伸ばしていた。


「成美って髪より先に体を洗う派なんだ?」

「……普段は髪からだねー」

「ふうん?」


 大量のボディソープで泡だらけになっていく成美を横目に(泡で体が隠れたので見ても大丈夫)念入りに髪を洗って、何度も湯をかぶって泡を流し落とし、ふと目を開けると鏡の中に私の背後に立つ泡まみれの成美の姿があった。


「なにやってるの?」

「次は体洗うんでしょー。手伝ってあげるよー」


 にへらっ、っと成美が笑う。後ろから肩に手が置かれて、成美が私の背中に体を押しつけてきた。


「え!? えええっ!?」

「背中流してあげるー」


 胸からお腹にかけてがぴったりと私の背中に密着している。とても柔らかな二つの物が肩甲骨の辺りに当たっていた。その柔らかな塊は成美が体を上下に動かすにつれて自在に形を変えていた。


 こ、これはっ……泡々天国!?


「ちょっと、あんた達、またそういう!」


 沙織が目を吊り上げている。

 誤解しないで欲しい。この状況は私の意図したものじゃない……気持ち良いけど。

 予想外すぎてもう何が何やら判らない……気持ち良いけど。


「ほらほら! あわあわー!」

「む、胸! 胸が……が……!」


 普段から成美が奇行に走ることは良くあったし、この間のお呪いにしても胸ネタを多用してくる傾向はあった。でもいくらなんでもこれはやり過ぎだ。

 これまでは少なくとも服越しだったけど、今私の背中には直接彼女の胸が当たっている。

 全身の感覚が背中だけに集中して刻々と形を変えるそれを感じ取ろうとフル稼働していた。


「なんか私の方見ないようにしてたけどどういうことなのかなー?」


 むにゅるむにゅる。


「胸がっ! 胸がっ!」

「胸はもういいから。えーとあれかな? 視線がどうこう私が言ったの気にしちゃってる?」


 もにゅるもにゅる。


「む……が……! ……が!」

「もう! はっきりしてよー!」


 むにゅむにゅ。

 かぽーん!


「うきゃっ! 痛ーい! なにするのよー!」

「成美、やりすぎっ!」


 両手で頭を抑えている成美と、黄色いプラスチック桶を片手に持った沙織。


「ほら、あんたも硬直してないで」


 かぽん、と桶で軽く頭を叩かれてようやく体が動くようになった。

 ぎくしゃくと振り向くと、沙織が成美を叱っていた。


「せっかく桜が乏しい自制心を発揮して頑張っていたって言うのに、なんだってそれを台無しにするのよ」

「だってー、桜がー」

「だってじゃありません!」


 どうも沙織は本当に怒っているようだ。

 私を自制心に乏しい人間のように言っているのは頂けないけど、今回ばかりは沙織が頼もしい。沙織が助けてくれなかったら、まだあの泡々天国から抜け出せていなかっただろう。


 成美も徹夜明けのテンションでいつも以上に変になってしまったと言う事なんだろうけど、私のよそよそしい態度が引き金になったのも確かみたいだ。これはちょっとだけ成美のご機嫌を取っておいた方が良いかもしれない。


「沙織、その辺で。成美はこっちに座って。お返しに……」

「待ちなさい! 桜まで、その……あわあわするつもりなの!? あんたの胸でやったら破壊力でかすぎるわよ!?」

「違う違う。お礼に髪を洗ってあげようかと……って、破壊力ってなに!?」


 人の胸を凶器のように言うな!


「桜ー、早くー」


 いつの間にか椅子に座って最速している成美。なんだかもう機嫌が直っているような?

 ほら成美が、と視線で訴えると、沙織も疑わしそうな目をしながらも許してくれた。


 やっぱり多少ゴワついていた髪を優しく洗っていると成美は気持ちよさそうに目を閉じていた。

 このまま寝ちゃうんじゃないかと心配になったけど、それよりも私の目はある一点に釘づけになっていた。


 誰も気付かなかったようだけど、と言うか私自身も気付いていなかったけど、後ろに回って髪を洗っていると正面の鏡にとても良い光景が映るのだ。私の手の動きに応じてぷるぷると揺れるそれはいくら見ていても飽きない。

 たっぷりと時間をかけて念入りに髪を洗ってをいたら、鏡の中、いつの間にか成美が目を開いていた。鏡越しに私の顔をじっと見ている。私が何処を見ていたかはバレバレだろうし、悲鳴でも上げられるかと思ったけど、成美はにへらっと笑ってまた目を閉じてしまった。


 さて、そんな私達を湯船に浸かりながら沙織や委員長が生温かい目で見ていた。


「天音さんと霧嶋さんは本当に仲が良いわね」

「仲が良すぎてたまに引くけどね」


 委員長と沙織がそんな事を話している。

 さっきの騒動を経てなおその会話。

 結局委員長も含めてこの場にいる全員のテンションがおかしかったのだ。


 *********************************


 帰りのバスの車中は静かだった。

 午前中の仮眠だけでは十分な休息とはならず、みんな座席で眠っている。


 私の隣に座っている成美もすーすーと規則正しい寝息を立てていた。

 バスが揺れた拍子に成美の体がずれて私にもたれかかって来た。


 眠っている成美はとても無邪気で、浴場での大胆な行動が嘘のようだ。

 ふうっと一つ息を吐いて、成美に肩を寄せるようにして私も目を閉じる。


 疲れたけど、海魔迎撃戦に参加して良かった。

 この夏一番の思い出ができたと思いながら、私も眠りに落ちていった。

書いてる自分自身のテンションが一番おかしかったかも知れません。


ともあれこれで夏休み編は終了です。

次回から第三章 学園祭~クラス対抗戦~ に入ります。


対抗戦の内容がまだ固まっていないので、少し間が開くかもしれませんが、次回以降もよろしくお願いします。

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