6 日本の番犬
とある街の外れの廃墟の町に場違いな黒色の車が颯爽と走っていた。その車には4人の少年が車の中で揺られていた。誰も成人しているのだろうかというほど若い。その中の黒髪の少年が口を開いた。
「あの、カイトさん。一体どこに行くんですか」
「あーそのうちわかるよ火野くん。あとさん付けはやめてよね。そんなことより音楽、何ながす?」
カイト、そう呼ばれた赤髪の男はニコニコしながら音楽を流し始めた。
「話をそらさないでくださいよ」
火野と呼ばれた少年は言葉とともにため息を吐いた。火野の隣には茶色のロングコートにメガネをかけている少年がいる。手には上下が逆さまの短めの小説があった。
助手席には銀髪で白いフードのパーカーを着ている少年がスマホゲームをしている。ヘッドフォンからはかすかに音が漏れている。
「カイトそろそろ教えてやれ、可哀想だろ」
さっきまで上下逆さまの小説を読んでいた火野の隣のロングコートの男が言った。
「仕方ないなーじゃあ教えてあげよう。あとバカラスその本上下逆さまだよ」
逆さまの本に突っ込まれたカラスは慌てて本の状態を直した。
「そうだな、どこから話そうか⋯⋯火野くんは僕たちが国の秘密組織ってことは知ってるよね。
僕らはNUS秘密特科特異日本第三課、フォースと呼ばれたりいる。フォースにはいくつもの支部があって僕たちは日本支部と言われている。
僕たちの役割は日本の統率、維持にある。そのためにまずこの荒れている日本をどうにかしなくてはいけない。そこで邪魔なのがケルベロスと呼ばれている。いわゆるマフィアだね。そいつらがNUSにとっては邪魔なんだろうね。ケルベロスをどうにかしてどかすために僕らが動いているというわけなんだ。」
「え、もしかして今から行くとこってその⋯⋯」
「もちろん日本の番犬の本拠地だよ」
まさか向かっている先が反社会勢力の本拠地だと思わなかったのだろう。火野は頭を抱えながら唸っている。一人は車を運転し、一人は上下反対の本を読み、一人はスマホゲームをし、一人は頭を抱えながら唸っている。そんな地獄のような時間が刻々と過ぎていった。
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車を降りた僕の目の前には黒いガラス張りのビルが堂々と立っていた。戦闘で廃墟となった街を抜けて東京についたのだろう。外見はまったく反社会勢力の本拠地だとは思わないだろう。よくある普通のビルだ。少し違うところがあるとするならば。入口に銃を持った黒服の男がいることだろう。
「こ、ここが日本の番犬の本拠地⋯⋯」
「そんな緊張しなくてもいいんだよ。もっとリラックスしていこう」
敵の本拠地の目の前だというのにカイトはニコニコしている。いやニコニコというよりヘラヘラと言ったほうがいいかもしれない。
「なんでそんな皆さん緊張感がないんですか⋯⋯」
「まぁ先月もきたからなここ。でも、そのほとんどが門前嫌いだがな」
「それを言うなら門前払いですよ。」
「ム⋯⋯」
アホなカラスに呆れたのかはたまた敵の目の前だというのにヘラヘラしているカイトに呆れたのか、もしくは両方なのかどちらにしろ僕の緊張は薄れていった。
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東京のビルがそびえ立つ街のネズミがゴミを漁っているような路地裏に少年が座り込んでいた服はボロボロで血もついている。だが少年にはかすり傷一つついていなかった。
「なんで⋯⋯なんでいつもこうなるんだよ⋯⋯」
彼は更に小さくうずくまりながら頭を抱えた。
「誰か助けてくれよ⋯⋯」
彼の耳を澄ましても聞こえない蚊の鳴くような声はゴミを漁っているネズミにも届かなかった。
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2時間前…
東京のいくつものそびえ立つビルの中で最も大きく最も威圧感を放つ黒いガラス張りのビルがある。そのビルは見た目は普通だが何かが異質、そんな異質なビルに入っていく4人の人影があった。
「いやーなかなか入れてくれなかったね。全くケルベロスの新首領はどんな教育しているんだか⋯⋯さぁ気を取り直して行こう」
ビルの入口には銃を持った二人の黒服の男が気を失って倒れていた。
「こんな事をしても良いんですか。一様マフィアですよ」
「いいの、いいの」
カイトはそう適当な返事をし、ビルのドアに手をかけたその時だった。ものすごい勢いで”なにか”が飛んできた。
「あっぶね」
カイトは顔に当たるギリギリで”なにか”を避けた。なにかはそのまままっすぐに進んでいき、直線上にあった木を真っ二つにしてしまった。
「うそ⋯⋯だろ⋯⋯」
「まったく。なんて挨拶だよ。なぁミカヅキ」
飛んできた”なにか”の威力に驚いて立ち尽くしているとカラスに引っ張られ大きめの岩の裏に隠れた。
貫通したドアの向こうには一人の少年がいた。容姿は美形で男にも女にも見える。目は鮮やかな赤と青のオッドアイ。春だというのにマフラーに冬用のコートで完全冬装備だ。暑くないのだろうか。
「やぁミカヅキ、君は相変わらず寒がりだね。今はこんなにも暑いのに」
カイトが声を張り上げて言う。やけにテンションが高い。
「こんにちはカイトさん久しぶりですね。僕は寒がりではないですよ。僕以外のひとがおかしいんです。僕は至って正常です」
ミカヅキそう呼ばれた少年?は感情が乗ってないような静かな声で答えた。
まだよくわからない。カイトさんはミカヅキという人の事を知っているような感じだった。ミカヅキという人も「久しぶり」って言っていたから前まで何かしら関わりがあったのだろうか。もしかしたら前の職業で一緒だったのかも。もしくは同じ学校出身とか。カイトのことをさん付けで呼んでいたし。
「すみませんが。あなた達をこのビルの中にいれることはできません。お引き取りください」
「やだよ。あのジジイに怒られるからね」
「そうですか⋯⋯なら死んでください」
彼の目は冷酷で殺すという行為に何も抵抗が無いように見えた。そしてどこかで見たことがある人殺しの目をしていた。
ジャパニーズマフィアをヤクザっていうんでしたっけ?
ケルベロスはヤクザとは少し違うんですけれどね




