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1 プロローグ

2050年、世界は3つに分かれていた。

面積が最も大きく大量の資源を持つ新アメリカ合衆国、

資源と人口が豊富なアジア連合国、

そして最も強く発展していた欧州連邦。


しかし、2053年アジア連合国と欧州連邦の間で戦争が勃発。

その戦いは後にウラル戦争と呼ばれた。


2063年8月28日、10年続いたウラル戦争がアジア連合国の敗北によって幕を閉じた。

その後、欧州連邦がアジアの国々を武力で次々と飲み込んでゆき、2070年欧州連邦はティーノス帝国と名前を変え歴史上、最も大きな帝国となった。


新アメリカ合衆国はティーノス帝国に対抗するべく新合衆国連邦。通称、NUS(ニューズ)という組織を作りティーノス帝国に宣戦を布告し第四次世界大戦が始まった。


********


快晴、今戦場の真っ只中ではなかったら良いピクニック日和である。しかしここは戦場、しかも最前線である。あたりに焼き焦げた匂いが立ち込んでいる。だが妙に静けさがあった。


「源武中尉、まだ増援部隊はまだ到着しないのでありますか。」


男は震え声で言った。少し痩せていて迷彩柄の軍服はあまりにあっていない。日本人なのだろう、やけに日本語が流暢である。 軍服の胸にNUSと書いてあるバッチがある。


「仕方ないだろうただでさえヴィア粒子のせいで電波障害をおこしているのに……」


源武中尉と言われていた男は先程の男よりガタイがしっかりしているいかにも軍人という感じである。やはり軍服の胸にはNUSのバッチがあった。


ヴィア粒子。それは帝国が新たに発見した粒子の名前である。

ヴィア粒子は雪のようにひらひらと宙を舞いながら地面に落ちそして消える。

しかし雪とは違ってヴィア粒子を降らせたところは磁場がおかしくなり電波障害が生じる。

そのため本部との連絡が取りづらくなる。

そしてヴィア粒子の最も恐ろしいところであり、最も実用性があるところ。それは、核ミサイルをはじめとし戦車や戦闘機はもちろんミサイルも無効化するのである。

なので戦場は泥沼化するというのがいつものお決まりとなっている。

とある時期までは――


「そんなことより早く状況を報告しろ!」


静けさがある戦場に怒鳴り声が響いた。


「は、はい。現在我々デルタ部隊の状況は第一先行部隊をはじめ第三先行部隊まで誰一人として応答がありません。全滅したと考えるのが妥当でしょう⋯⋯」


言い終わったのとほぼ同時に爆音が響いた。近くの塹壕から砂煙が舞っている。火薬の匂いはしなかったが肉が焦げた様な独特の匂いが砂煙とともに舞い上がる。


「待避いぃぃい!!」


その声とともにどこに隠れていたのか2,30人ほどの兵士が出てきてはバラバラに逃げ始めた。しかしその行く手を阻むようにまた一発の爆音が轟く。

そしてその一発の爆音で死体の山ができた。爆音の主は逃げるという行為を許さなかったのだ。

死体の山から一人の少年。いや、爆音の主がゆっくりと歩きながら姿を表した。気味の悪い笑みを浮かべながら。


「悪魔だ⋯⋯」

生き残った兵士の一人が思わずそうつぶやいた。


「ボンッ!」


少年が言葉を発した瞬間、この戦場に最後の爆音が響いた。



**********



僕の名前は火野鳥雀(ひのすざく)

日本生まれ日本育ちの純血日本人だ。

けれど親の仕事の関係で8歳のときに一度シンガポールに引っ越した。初めてマーライオンを見たときのことをよく覚えている。引っ越して2、3日は新しい生活にウキウキしながら生活をしていた。


しかし、そんな楽しい日はそう長くは続かなかった。


引っ越してから5日目、シンガポールの学校に通い始めた。だが学校に良い思い出はない。それどころか悪い思い出しかない。


学校初日はクラスメイトからよく話しかけられたのだが僕は英語が話せない。親に散々英語だけはしっかり勉強するように言われていたがすべて聞き流していたせいだろう。それが仇になったのだ。


なぜかわからないが2、3日したら突然クラスメイトから陰湿ないじめを受けるようになった。

最初は、通り過ぎざまに悪口を言ったり総スカンを食らったり幼稚な、と言っても嫌な思いをするということには変わりなかったが。まだ我慢できるぐらいのいじめだった。


だが、いつの間にか暴力を振るわれるようになったり、私物をいつの間にか燃やされていたり徐々にエスカレートしていった。そして僕はだんだん学校にいかなくなりやがて不登校になった。


そして学校はいじめがあったという事実を一切認めなかった。


後から聞いた話だといじめの主犯格がお偉いさんの子どもだったらしく学校側も圧力をかけられていたらしい。


学校に行かなくなってから自分の部屋に引きこもり、ぼーっと生きていた。死にたいなんて思ったことは一度もなかったと思う。

親も何も言わなかった。見限られたと直感で分かった。

仕事が忙しいのかほとんど家に帰ってこなくなった。たまに帰ってきてはお金をおいてまたすぐに仕事に向かう。そんな毎日だった。


マーライオンに観光客が群がっているところを「うざい」と感じるようになったとき。

親はいつも通り家に帰って来てはいない。僕はというとやはり学校にはいかずにコンビニに昼食を買いに行っていた。


帰り、何を思ったのかふと空を見上げた。戦闘機であろう影が2,3機、視界に入り込んだ。僕は反射的に茂みに飛び込んだ。その瞬間に後ろの方から大きな爆音がして僕はふっとばされた。さっきまで立っていた場所が跡形もないぐらいに粉々になっていた。


「逃げろ!!!」


そう聞こえる前には体が勝手に走り始めた。とにかく走った。死にたくない一心で。


それからの記憶がまったくない。気づいたときにはもう軍に救助されていた。シンガポールは半壊していたマーライオンも学校もすべて灰になっていた。多分皆死んだ。帝国のせいで。

だが、僕は()()()()()()()()


**********


あの悲劇の日から7年近くが過ぎようとしていた。

僕はというと日本にいた。施設に入れられ中学まではそこから学校に通っている。


高校には自分で部屋を借りてそのアパートから行っていた。お金は施設が少しなら払ってくれるがそれだけでは生きていけないので適当な日雇いのアルバイトなどをして生計を立てていた。


今は、ごく普通のパッとしない高校生として生活をしている。


まぁ問題児共からはよくパシリとして扱われるが中学よりかはマシだ。


中学といい高校といい、なぜこうも絡まれるのだろうか。僕はいじめられやすい体質なのだろうか。

いや、そんな体質なんてあったらたまったものじゃないが。


その日は5時間目の古文の授業。


クラスメイトはおもそうなまぶたを一生懸命に開いて必死に黒板に書いてあることをノートに写している。


僕は窓から外を覗いていた。さながらラノベの主人公のように。


高3だろうか校庭でサッカーの授業をしていた。昼食を食べたあとの体育なので皆死にそうな顔をしてボールを追いかけている。


まだ涼しくとも暖かい春風が窓から教室の中に流れ込んできた。


「春か…」


つい思っていたことを口に出してしまった。は、として急いで振り返ったがもう遅かった。聞かれてしまった。


「何、厨二病?」


こっちを見ながら意地悪そうな笑みを浮かべている。水戸扇みとおうぎ

彼女はどちらかというと僕の嫌いなタイプだ。常にハイテンションでよく話題を僕に振ってきておどおどしている僕を楽しそうに笑っている。

成績はいつもトップクラス、運動もできる。

僕のタイプではないが僕以外のすべて男子から好意を寄せられているといっても違いはないだろう。完璧人間なのだ。僕とは生きている次元が違う。

大事なことだからもう一度言おう、決して僕の好きなタイプではない。


「お前な…盗み聞きして厨二病呼ばわりか?」


「いきなり話し出したのそっちじゃん」


「はいはいソウデシタネ⋯⋯」


そう言いながら僕はまた校庭を見た。


こうなったときは適当に返事するのが一番手っ取り早い。


「ねー聞いているの?」

なんて話しかけられるがもちろん僕は無視を決め込む。これ以上男子から反感を買ったらたまったもんじゃない。しばらく黙り込んでいると、ようやく諦めたのか何も話しかけてこなくなった。


しかし時間が経つのは早いものだ。あの悲劇からもう7年が経ったのだから。そういえば7年は経つがまだ戦争は続いている。といっても子供の将棋のように取って取られての繰り返しなのだそうだ。

うん、あまりこの比喩は上手くないな。もう二度とやめておこう。


話を戻して、この間もNUSの特殊部隊が壊滅したとかってニュースで言っていた。

デル・・・・・・なんちゃら?みたいなそんな感じの部隊らしい。


軍によるとあちこちにクレーターの跡があったそうだ。しかし軍の増援がついたときには敵も味方も誰一人としていなかったらしい。

あったのは粉々になった死体だけ。まぁこんな感じでニュースも他人事のように戦争について報道している。

いつ日本も巻き込まれるのか分かったものじゃないのに。


しかし暇である。授業はつまらないし、めっちゃ眠いし、いっそのこと不審者でも現れないだろうか。

そう縁起でもないことを考えた次の瞬間である、


ピンポンパンポーン「教職員は直ちに2階中央広場に集合してください」


僕は直感で理解した。何かあったのだ、緊急事態が。これは願ってもいないチャンスだ。もし不審者だったらそのままうるさい問題児共を殺してくれると嬉しいんだが。


まぁそんなことは上手くいかないものだろう。さて緊急事態なんてわかるはずのない頭が足りない問題児共はというと、いきなり教師がいなくなったんで好き放題はしゃいでいる。

全く五月蝿いったら仕方がない。

水戸のやつも、なにかあったのかな?大丈夫かな?もしかしたら不審者だったりして。と笑いながら話しかけてくる。


本当にやかましい。


ドォン。その音が聞こえるなり皆は一斉に静かになった。


僕はこの音を聞いたことがあった。そう銃声だ。


「火野!お前見てこいよ」

問題児のリーダー格のようなやつが言った。


「え、なんで僕」


「こういうときはいつもお前だからだよ!とりま早く見に行ってこい!」


「いーけ!いーけ!」とコールが始まる。


くそ、このバカどもが。こうなったら僕が動くまで止まらない。僕は渋々席を立ち、教室をあとにした。


教室から出る直前、水戸が心配そうにこちらを見ているように見えたのだが気のせいだろう。


遠ざかっていく教室から

「不審者に襲われたら大声を上げて教えろよ。線香ぐらいはあげてやるからよ。アハハハ」

なんて馬鹿たちが騒いでいるがもちろん僕は無視をした。

どうやら不審者は2階にいるらしい。他のクラスも先生がいなくなったことで好き放題にはしゃいでいる。どんだけ感が鈍いのだろうか僕はそんなバカどもに呆れた。呆れるしか無かった。


二階への階段を降りている最中に2発の銃声が聞こえた。しかもかなり近くで。

やばい。そう思い急いで階段を駆け下りた。そこに広がっていたのは先生と不審者との攻防戦などと生ぬるいものではなかった。

一人の教師が足を抑えながらその場にしゃがみこんでいる。その足からは血が流れ出ていた。流れ出ている大量の血は先生を中心にして血溜まりを作っていた。


先生たちは一箇所に刺股を持って固まっている。さすがに銃相手に刺股はきついところがあったらしい。


「ちっ。これで分かったか。この俺様の邪魔をすんじゃねぇぞ」


不審者はだいぶ怒っているようだった。返り血まみれ黒色のフードに青のジーンズ片手には銃そして一番目立つのは顔にしている白い狐の面だった。狐の面には返り血が飛んでいてきれいな斑点模様になっていた。模様だと言われれば鵜呑みにしてしまいそうなほど溶け込んでいる。


しかしただの不審者が銃まで持っているとはどこから仕入れたのだろうか。

世も末だな。


「待ってくれ。せめて生徒たちには危害を加えないでくれ頼む」


口を開いたのは校長だった。いつもはつまらない話ばかりしている校長だがこういうときには良いことを言うものだと少し見直してしまった。


「おいジジイ、俺様がさっき言ったことをもう忘れちまったのか脳みそついてるのかぁ」


「分かっている。邪魔はしない、だから生徒たちには……生徒には決して危害を加えないでれ頼む」


そう言いながら校長は不審者相手に土下座をした。禿げている頭部がよく見える。


「なんで俺様が生徒共に手を出さないと思うんだよ。俺様の目的はそのガキにあるんだよ。教師やっているのにそんなこともわからねぇのかぁ。本当に公務員かよぉ。あ゙ぁ」


そう言いながら足を押さえてうずくまっている教師のこめかみに銃口をむけた。

殺される。考える前に体が動いていた。


ドォォン。また銃声が轟いた。


耳元で銃声が響いた。

間に合った。なんとかすれすれで不審者を押し倒し教師の頭に弾丸が直撃することを避けられた。


「火野くん⋯⋯なんで」


さっきまで授業をしていた教師だ。校長の後ろでぽかんとこちらを見つめている。

なんでだろうか。自分でもよくわからない。柄でもないことをしてしまった。


「ガキがぁジャマするなぁァ゙ァ゙」


さっきまでバランスを崩しよれけていた不審者が火野をめがけて銃を乱射しながら向かってくる。

僕は近くにあったパイプ椅子を不審者に投げつけ、不審者が怯んだ隙に距離を詰めた。

焦った不審者は右手の大ぶり、すかさず腕を掴み背負い投げ。不審者はそのままパイプ椅子の山に突っ込んでいった。不審者はガラガラと崩れたパイプ椅子の山の中で動かなくなっていた。


柔道の授業をサボらなくてよかったと心から思った。


「これじゃあしばらくは動かなそうだな」


「火野くん腕が⋯⋯」


「僕は大丈夫です⋯⋯少しかすっただけですから」


右腕からは滝のように流れている真っ赤な血が白いワイシャツを汚していた。

実際はかすったというのは嘘である。不審者が乱射した弾が右腕にもろにあたったのだ。

なんなら貫通している。

超痛い。動かすと骨がミシミシと音を立てる。

血の流れる右腕をかばいながら足を撃たれた教師の方にゆっくりと歩み寄っていった。あちこちに血溜まりの斑点模様が床を汚していた。


「がはっ⋯⋯」


僕は背中にハンマーで殴られたような強烈な痛みを感じ、その場に倒れ込んだ。


「ガキが、俺様に逆らうから⋯⋯こうなるんだよ⋯⋯!」


さっきまで気を失っていたはずの不審者が僕に銃口を向けていた。そして倒れている僕に何発も鉛玉を打ち込んだ。

そして、そのうちカチッカチッと乾いた音がした。

生暖かく赤黒い血が僕を中心に円を作っていく。


「ちっ弾切れかよ⋯⋯」


さっきまで響いていた焼けるような痛みが感じなくなってきた。

代わりに頭のおかしくなるような寒さに襲われる。血でやけどしそうなぐらいだ。


僕はこのまま死ぬのだろうか。

死にたくない。

頭ではそうわかっていた。だが、なぜか、この状況下でどこか冷静になっている自分がいた。

「あぁ、死にたくねぇな」

そして火野の、僕の意識は完全になくなった。




ようやく投稿する準備ができました。

やったね。次回もお楽しみに。

これは転生物ではございません

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