表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだってあなたが私を強くする  作者: 泥んことかげ
【第1部~出会いと約束】
53/111

第52話【子育て日記二日目】(アイナ激闘編その5)


 羽を無くし失落しているミフィレン達を発見してから約0.3秒と短いながら、我が子の様に接していたニッシャが導き出した答え、それは―――【死ぬ気で助けること】だった。


 刻一刻と迫る決断の時が迫り、小さな命を救うため、呼吸に回す体力全てを【火速(かそく)炎迅(えんじん)】に費やす覚悟を瞬時に決め、全身全霊の魔力を指に込め、床に突き刺すと落下地点で円状に広がる炎の渦が周囲を焦がしながら出現した。


【炎武4の段-昇火(しょうか)流炎(りゅうえん)


(生物の様な螺旋状の炎は、対象を中心に上昇と共に廻ってゆき、熱風を纏わせながら宙へ浮かす)


 この時、ニッシャが最後に見た景色は、仇を討って高笑いするアイナでも、事態が収束出来ず慌てふためく弟子達でもなく、調整したお蔭で丸焦げにならなかったミフィレン達が、炭で顔を汚し涙で服を濡らしながら走り寄ってくる姿だった。


(こんな所で、()()魔力調整(さらあらい)が役に……立っ……た……な―――)


 子を思う気持ちで救った【命の灯火】は消え、力なく手がぶら下がると、役目を終え壊れた人形の様に、行き場をなくして床に転がっていった。


「ヤってやったわ!!ついにこの時が―――」


 アイナは、怨みを晴らせた喜びに心が踊っていた―――だが、その喜びは一瞬で崩れ去る。


 ミフィレンは真っ先にぐったりと血を流しながら倒れているニッシャを仰向けにし、小さな手で顔を綺麗にすると涙で声を押し殺す様にして話しかける。


「あなたは、笑顔が一番似合うってあの時言ってくれたよね?……それが嬉しくて、心強くて、自分に自身が持てる様になったの。でもね―――ニッシャが居なきゃ笑顔になれないよぉ……」


 アイナは自分の愚かな選択を今更ながら後悔してしまった。

 人の命を奪うということ、そして残された者の気持ちを一番側に居て解っていた筈なのに、何一つ理解出来ていなかったのだ。


 全てを奪ったニッシャは私の大好きなパパを殺した。

 だから、私は仇であるニッシャを殺した。

 でも、ミフィレンの唯一の母となる存在を消してしまった。


 同じ過ちを犯してしまった事に対して、謝罪の言葉も後悔の念も最早手遅れであり、二人の間を割って入るような事は今の()には(こく)だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ