第26話【子育て日記2日目】(精神の滝編その5)
上空には球体から次々と放たれる落下範囲数百Mにも及ぶ火の結晶は引力に従い下方へと引き寄せられる。
全く対処しようとしない朱色の海星に代わり、外部へ飛散しないように広範囲に渡り魔法壁で覆うと、降り注ぐ結晶は屋敷に衝突することなく塵へと成り変わっていた。
疲れはてたニッシャは、漂流物の様に浮いており、若いとはいえ流石のニッシャでも自然回復に時間がかかるため、眩く光る空と雪のように舞い散る灰をただ呆然と眺めているだけだった。
「まぁ、この時期の「花火」と「雪」も悪くはないかもな……」そう言いながら防水性の煙草を口に咥え、吹き付ける煙は灰と交わりながら綺麗に消え去る。
爆発音と照りつける光が部屋全体を彩る中、微かに聞こえる愛しい声達と嫌みのような言葉が耳へと入る。
「アイナとニッシャすごーい!もう一回見たい!!」
「あら、以外と悪くないわね……どう?綺麗な花火でしょ!?|ミフィちゃんのためにやったのよ」
「キャッキャッキャ!」
子ども達を抱き寄せそう呟き微笑むアイナと、初めての「光景」なのか感動と興奮を押さえきれないミフィレン、それに何でもかんでも笑うお年頃のラシメイナの三人は、火花を出し切るまでおよそ3分程だが、優雅に花火観賞を楽しんでいた。
「さぁて、あの天井は誰が直すんだろうな……」そう小さく呟き、見つめる先にあるのは骨組みは曲がり、硝子は飴細工のように溶解し、直径40cmはある円型の穴が衝撃の凄まじさを物語っていた。
不思議な何かに引き寄せられる様に体はアイナの方へ向かって行き、濡れてくしゃくしゃになった髪の毛を面白がって遊んでいる声が頭上から聞こえる。
時折水飛沫が顔にかかっては拭うを繰り返していると顔色を覗くように蒼色の大きな瞳が私の眼とあった。
「ニッシャ、さっきの花火綺麗だったねー!!」
小さな両手で左右の頬を潰され、揉みくちゃにされて返答し辛かったが、可愛いから許すが……その後ろは、許してくれない気がする。
可愛い顔の裏には、鬼神でも顕現してしまいそうな程恐ろしい顔をしている。
「自分が何したか分かってるわよね?」と睨みを利かせながら何か言いたげな顔をしている女の子がミフィレンの後方で背後霊の様に纏わり付いていた。
「ニッシャ面白い顔ー!!」怯えた顔をしている私に向けたその一言を聞いた途端、音もなく天を仰いでいたのは言うまでもないな。




