第25話【子育て日記2日目】(精神の滝編その4)
(中心に力を集中し、外へ拡散させる……)
呼吸を忘れてしまうほどに目先へと集中力を費やしているが、徐々に体が滝へと近づくニッシャは、左手を後方に向け同程度の炎を放出させることによりこれ以上の後退を防ぐ手段に出た。
豪爆と放炎が互いにぶつかり合い、力が均衡する中いまだその力が弱まることを知らない【絶望と苦痛の豪球】は、超高温と超高速回転を併せ持つため、それに耐えるニッシャの「体力」「魔力」「気力」を大幅に削っていた。
(さて……修行の成果でソレをどう対処するか見せてもらおうかしら)
華奢な腕を組み合わせ深刻な表情をしているが、子どもたちに頬をつねられており、髪の毛を弄られながら思うアイナだった。
通常火速炎迅-初速で使える技は魔力の回転数により決められており、それぞれに対応した技しか今までのニッシャでは出せなかったが、この2日の修行のおかげか緻密な魔力操作を会得したことにより、少量の魔力でも劣化こそするが使用出来るようになった。
「片手で上手くいくとは、思わねえけどヤらなきゃ殺られるな……!!」
血反吐こそないが、いまある力を出し切る勢いで放つ事を決意する。
【炎武3の段-散火舞炎】
球体の中は小さな火が高速回転により増幅され、舞う様な炎と化す。
ニッシャの魔力が縦横無尽に駆け巡り、まるで鋭利な針】でも入っているかのように「トゲトゲ」しい見た目に成り変わるが、特殊な素材で出来ているボールは尚も割れる事なくギリギリの形を保っている。
「弾けろー!!」そう叫びながら掌を天井に向けることにより上空へ軌道を修正させ、威力を殺す事なく球体はいとも容易く天井を突き抜ける。
内部で爆発的に増幅する火花達は上空200M程まで昇った所で、負荷に耐えきれず圧力が外へと漏れ出し始め、1ヵ所でも空いた後は至極単純な話だ。
1つまた1つと連鎖的に次々と無数の穴が空き始め……やがて――【弾け出す】
頭上を見る子どもたちの目に映るのは、まるで煌めく無数の宝石のように天井全体を覆い、空へと散りばめられた火花が華やかに咲き誇る光景が眼前に広がっていたのでした。