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母屋で舞子は母に呼ばれていた。
「お話があるのです。
あの離れに住む天人についての」
「知っています。
彼のことは私が一番分かっています。
だから説明は必要ありません」
舞子はそう言って立ち去ろうとした。
「お待ちなさい。
あなたにお話があるのです。
お座りなさい」
舞子は大人しく座った。
テーブルには紅茶があった。
舞子は紅茶を一口飲んだ。
母は大きく息をすった。
「代々この家は女性が当主を務めました。
それは血を絶やさないため。
この家に生まれる天女を隠すために」
「隠す?」
「天女は年頃のなると気が狂いました。
だから私たちは隠すしかなかった。
でもある時、一人の男が現れました。
美しい男でした。
その男が現れてから天女が狂うことはなくなったのです」
そうだ、トオイが見つけてくれるまでは待つしかなかった。
「そして天女は死んでは生まれることを繰り返しました」
それが罰だから。
「そして今、離れにいる天女はあなたの姉」
「え?」
離れに天女がいる?
そんな馬鹿な。
天女は、アツキは、私だ!
「嘘よ、トオイと一緒になるのは私だわ!」
「舞子さん、彼はもう選んだのです。
十年前に貴女の双子の姉を」
「嘘、嘘よ…!」
そんなことあるはずがない。
どうして、アツキが二人いるの?
「舞子さん、あなたは正志さんと結婚するのです。
そうしてこの家を継ぐのです。
血を絶やさないために。
天女の血脈を継ぐために。
離れを守るために!」
「嫌よ!トオイの傍にいるのは私だわ!」
「舞子さん!」
舞子は立ち上がったが、視界が回った。
「あなたのためなのですよ」
遠くで母の声が聞こえた。
それきり舞子の意識は途絶えた。
目が覚めるとそこは座敷牢だった。
ここはかつて閉じ込められた場所。
悲しい場所だ。
舞子は格子を揺さぶって声を上げた。
「母様!誰か!ここから出して!」
どんなに叫んでも誰も来なかった。
そうだ、ここは母屋の奥の奥。
普段は人が入るようなところではない。
使用人は存在さえ知らないだろう。
舞子は絶望した。
やっと会えたのに。
どうして?
どうして邪魔をするの?
「助けて、トオイ」
舞子は泣き崩れた。




