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全滅冒険者!!  作者: 大石次郎


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10話 死因 アリカント鳥との遭遇

ウィレム博士の発見前から最下層7層探索を定期的に行っていたパーティ、フガク隊隊長S+級竜騎士職フガクを補助魔法を受けエアステップスキルで宙を蹴り、落下エネルギーを倍加して攻撃力に変換するスキル、ドラゴンハントを発動。


隊員達が拘束魔法プラスバインドと鞭、影縫いスキルでハイサキュバスの動きを封じる中、それでも撃ち込んできた必殺の尻尾の一撃を毒炎の魔槍、ルインの槍で砕きながらソウルメイルで覆われた豊かな胸の向こうの心臓に穂先を打ち込んだ。


「ああっ···ときめき、ましたよ? うふふ、あぁーーっっ!!」


ソウルメイルの砕けたハイサキュバスは毒の炎に覆われ、焼き尽くされていった。


「時期尚早だと思うがね」


フルフェイスの兜を取った壮年のフガクは乗り気な顔ではなかった。


館の本格攻略開始から約一月、ついに7層への大階段が解放され最下層の大規模攻略が始まることとなった。


_____



国の密偵でもないS級連中は騒動以前からこの最下層、星辰宮(せいしんきゅう)に潜っていたそうだがどうかしてるな。


7層は構造自体はシンプルな立方体迷宮だが、一部の部屋を除き胎動するように星の世界を時折映しだす。時空が歪んでいる箇所も多く数時間のつもりが数日経っていたり逆に数分しか経っていなかったりすることがある。


しかも歪みエリアの類いは変動しがち。トラップは比較的少ないがモンスターは強壮。宝箱のトラップに関してはどれも致死的。


悪質な邪神の眷族や交渉困難な天使ども、なぜか場違いな砂漠地帯のモンスターも多く徘徊する異常な層だ。


「S級爆薬を使え! 惜しむなっ」


邪神の眷族とみられる正体不明の鉱石とクラゲと人の臓物の中間のようなモンスター群相手に、ちまちま交戦する傭兵達を私は叱咤した。


「ああ? なら砲兵だけ雇えばいいだろ!」


「こんな規模の攻略団で7層探索やってられるかっ」


「いいからやれ! あんなヤツらに捕らえられたら普通に死ねもせんぞっ?!」


「「「···」」」


さすがに邪神眷族に取り込まれたくはなかったらしく、傭兵達は扱い慣れないドワーフ式の砲筒で国軍横流しのS級砲弾を打ち込み、これを蹴散らし、倒し切れなかった個体群にはおっかなびっくりになるべく触れずに、火属性の矢等で後始末をつけていった。


「素材回収はしなくていいぞ? 邪神素材は扱い辛いっ。斥候班は時空の歪みの探知を怠るなっ、1時間定期連絡できない班は見捨てるぞ?! 移動するっ、早く片せ! 他の眷族が寄る!」


「クソ商人がっ」


「偉そうにっ」


「破産しろっ」


悪態を吐かれつつ私は団を采配する。私はボコサレス商会第18攻略団団長のザラミ。一応C級戦士職と鍵師職の認定は取っている。取りたくはなかったが取らざる得なかった。断続的に合わせて9ヶ月も研修を受けさせられて気が狂うかと思った。私の本業は魔法道具の卸なのに···


とにかくやり遂げねばならない。なにも冒険者ギルドや国軍を差し置いて7層制圧や噂のこのさらに地下のミスリル大鉱床到達を成し遂げようとはさすがに思っていない。それでも7層攻略実績もなく今後の利権に上手く食い込めることはまずない。


ダンジョン利権は『掘ったもん勝ち』の野蛮な伝統があり、掘らずに金だけ出しても中々相手にされないのだ。不穏な渦中ともなればなおさら。


我々商会はそもそも不利で、遅れていた。それでも6層までは資金力に物を言わせて食い込んでいたと思うが、国軍の嫌がらせで先住民のニーベルング族どもの相手を一月余りもさせられた上に不平等極まりない条約をヤツらと結ばされた。


疲弊と資金枯渇で7層へ進出できたのは全28団の内、6団のみ。それぞれが各派閥の利権を背負っている。


一定の実績と可能ならば相応の資金回収。それが至上命題だ。


我々の進んでいるルートはこれでもマシなルートで、冒険者ギルドが抑えているいくつかの安全地帯や開発された野営地の動線にもなり得る効率的と言えるルートだ。


これまで積極的には攻略されていなかった最下層だから我々でもこのルートに入れた。


一部の小規模な冒険者団も脇のルートからチョロチョロしているようだが、我々が通しているのは商会でどうにか買収できた有用な大階段やエレベーターから直通路。これは成果になる。もう一歩だ···


「慎重にゆくぞ?! 通信できるパペット兵はしっかり保護しろ、貴重だ。国軍に筒抜けでも今は構わないっ」


第18攻略団は進行を再開。人員は爆薬のお陰で問題無い。鍵師や忍者、野伏もいてトラップ対策は可能。


ただパペット兵の残数は16体。内、5体は調子が悪くキャンプに戻るまで補修不能。この環境で通信困難になるとそこで撤退確定だ。法外な価格で貸し付けてきたが、元は取ってやる!


···我々は進行を続けた。斥候4班の内、1班と連絡が途絶えたが1つの班から有益な一方が入った。


「このルートは宝飾品が多いようです。これは、あ!」


そこで通信は途絶えた。


この報に、一旦進行を止め、団に同行する商会メンバーや参謀役の学者や元冒険者等で協議になった。我々の7層探索はこの調子でできるのはせいぜいあと9日。復路に余裕を持たせると実質3日間の進行。リスキーでも猶予はない。


議論が伯仲しているとにわかに陣が騒がしくなった。冒険者ギルドの20人程度の小規模攻略団が引き返す形で我々の陣と顔を合わせていた。


互いにモンスターの擬態や幻術だないか確かめてから、向こうから使者がきた。


「このルートを進むなら大回りした方がいいな。やたら宝飾品のポップが多い。これはルート自体が誘ってる。探索には専用の準備が必要だ」


向こうには教えないが間違いなく斥候が途絶えたルートだ。我々は目配せした。


「参考にする。情報量は払おう」


「忠告はした」


小規模攻略団は我々の中で早期復帰困難な重傷者と数体の遺体、他にもうんざりして離脱した者十数名を引き受け、そのままルートを後退していった。


連中は大階段やエレベータからそう遠くもない位置にわざわざ相当なコストを掛けて6層への近距離転送陣を造り始めているようだ。気長だな。商売ではなく、生活なんだろう。


まぁいい。少なくとも士気の低い者と足手まといは片付き、『宝飾品のポップの多さ』の確度は高まった。


「可能な回収しつつ、斥候の消失地点まで進行する!」


方針は決まった。


進んでゆくと宝箱は残念ながらすでに開けられていたが、なるほど有益な鉱物、魔法石の類いはよく取れた。先行の少人数の冒険者達は細々とした物は時間ロスと釣り合わないとみて無視していたようでかなり採取できた。


碑文の類も散見されたが、我々も我々と契約するような学者達ももはや大して関心はなかった。そもそも、ダンジョンの『底の下』から出てきたニーベルングどもと不平等ながらすでに雑多な契約を済ませている。


連中はダンジョンの成り立ちや自分達の背景についてはほぼなにも話さなかったが、地下で大鉱床の採掘をしており、地下世界の交易において優位にある。という情報だけで十分であった。


仮に『宝飾ルート』とするルートに入って4時間余りで目標額の3割を回収できた。リポップも考慮し、腰を据えて活動するとするならばこの時点でも引き返してもいいくらいだ。


まぁ、これで戻るようでは派閥の上役連中から吊るし上げにされてしまうが···


我々はさらに進み、比較的効率のよい鉱物原石の露出したフロアまで来た。


「ここ、だな」


装備品、干乾びた遺体が散乱していた。


「上だ!!」


「蜘蛛だっ」


女の怪人の上半身を持つ蜘蛛の魔物、アルケニーの群れが天井にいた。


それなりに手強いが5層の洞窟や6層で巣食うモンスターだ。物量差と奇襲を受けたんだろう。


位置的に砲撃し辛かったが糸対策に魔法道具で風の結界を張りつつ、結界に開けた穴から火属性の矢を多数射ち込み続け、落下ないし飛び付いてきて地表に落ちた個体には砲撃し数が減れば一気に近接で畳み掛け問題なく掃討した。


「問題ないな。回収が済み、斥候2班と合流次第もうしばらく進行するっ」


物資残量的にこれが最終アタックになりそうだ。この部屋でもそれなりに回収できた。命懸けの仕事をした挙句、吊るし上げになる事態は避けたい物さ。


合流後進んでみると、これは正解だ。途中いくつか脇道もあったがどうやら冒険者達は蜘蛛の部屋のすぐ先辺り通路に顔を出したのを潮に引き返したらしくそこから散見する宝箱は手付かずだった。


最下層7層の宝箱はそれなりの物が出る。しかも換金素材ばかり出た。我々18攻略団は沸き立った。


トラップはよって集って調べればどうとでもなる。ああいう仕掛けは5人前後のパーティで作業員が1人しかいないような条件でしか機能しない物だ。


進む程に通路上に露出した素材類も、宝箱の頻度も上がる。あっという間に目標金額の満額に達した。


我々は斥候を改めて放ち結果次第でここで引き返すか判断することとなった。


果たして小一時間後、2班共に同じ地点で落ち合う形で通信が入った。


「扉です。透視スキルのある者のよると内部に宝飾品の山があります!」


「ただほぼ確定でモンスターが配置されてるぜ?」


···正直マズいと思った。それでもこの情報だけでかなりの高評価だ。団運営としては協議で撤収の方向となった。しかし、斥候の者達が勝手に繋がりのある団の傭兵連中に情報を広めてしまい、興奮した傭兵達は勝手に進行を再開してしまった!


我々だけでは引き返せないっ。


「待て! 落ち着けっ、リスクはわかるな? ···『手に抱えるだけ』だ! それだけ回収したら撤収する! いいな? ここが何層が自覚してるなっ?」


もはや付いてゆくしかないが、どうにかてんでバラバラに突貫する事態は回避した。


斥候2班は鳥の装飾がされた大扉の前にいた。


「なるべく入口付近で作業しろっ!」


言ったのだが解錠されるや内部は宝の山だ。鳥の装飾の魔力灯に照らされ妖しく光る。まず鑑定の必要があるが、


「「「うおおぉぉーーーっっっ!!!!」」」


傭兵達は部屋に雪崩れ込んだ。


探知やトラップ対策に長けた者も多数いるがあまりにもだ。


「落ち着け! 落ち着け! せめて小隊ごとに固まれっ」


呼び掛けつつ後方で取り残されるワケにもゆかず、いくらかまともな連中と当然なんの反応もしないパペット兵達と共に我々第18攻略団運営も内部に入る。トラップは見当たらない。


無造作に積まれた宝飾品の価値は『そこそこ』だったが、量が量だ。これはうちの閥だけでなくボコサレス商会全体としても黒字になるんじゃないか? 思わず一時、狂喜する傭兵達の歓声の中、運営一同宝飾品を手に呆けてしまったが、


バタン! 背後で出入り口が閉じられた。


「「「っ?!」」」


全員驚いた次の瞬間っ、全ての宝飾品が逆巻き、数十の宝飾品の竜巻と化しそれらが圧縮、変化して巨大な黄金の怪鳥の群れが出現した。


「アリカント鳥っっ」


5層で稀に出現する宝飾品の化身の魔獣。しかしサイズが大き過ぎ数十の群れで現れるようなモンスターではなく、7層での目撃例もなかった。


「視線を合わせるなっ、ブレスがく」


遅かった。アリカント鳥達の瞳が暗く輝き我々の大半が酒に酩酊したような状態になり、続けて怪鳥達が一斉に吐いたゴールドブレスを受けるとまともに抵抗もできない我々は纏めて黄金に変えられていった。


耐性や装備で黄金化が不十分な者や、最初の魔眼を避けた者はすぐには終わりを迎えなかったが、動ける数十名でどれだけ対抗できるか? このブレスは無生物にも有効。火砲も多くは黄金と化した。


ヤツらは黄金しか食べない。


パペット兵は魔力障壁を張り案外耐えていたが、戦闘型の個体群ではないから無造作につつかれ、踏まれ障壁を破られ結局ブレスで黄金化されていった。


団長の私は強いアクセサリーを装備しているせいで黄金化は半端だった。


「···」


こういう商売だ、遺言はしっかりしてある。この情報はパペット兵を介して伝わるだろう。


アリカント鳥の遺骸や排泄物は高く売れる、最終的に商材になる。私の人生は非情に哲学的に帰結することになるようだ。


最後の仕事はどうにか動いた右手でネックレスのアクセサリーを引き千切ることだった。


装飾品は個人と結び付き過ぎる。せめて金貨に変えてくれ。世界を巡ろう、人々の営みの中。


そんなことを考えながら。


_____



商会の第18団攻略団の壊滅とアリカント鳥・変異体の部屋の存在は勢力によって時間差はあったが、即座に伝わった。


「対策の必要な魔獣のようですね」


「雇われ兵しか持たない哀しさだ。が、攻略権利は商会に譲ろうじゃないか。彼らはそこで止まってもらう」


本命と思われるルートを最も深く進む国軍のコル・キ団は早速根回しの指示を出し、冒険者ギルドはこの件には構わず緊急離脱用の転送陣設置を引き続き重視した。


しかし、個々の判断として探索を優先しする団には散開せず、1つのルートに集中し、実入りが薄くとも国軍や商会が開拓したルートも使うよう徹底された。


最下層星辰宮における各勢力の立ち回りはそのように分かれていった。


_____



魔法陣には多数の希少な対価素材が正しく置かれている。中心にはわずかに魂の光の宿る至高のハートストーン。


「リィンカーネーション」


私は唱え、全ての素材は消費され、契約により彼女の魂の欠片の宿る至高のハートストーンを核として転生の秘術が発動する。


現れたのは···


「ふぁーーーっ✩✩✩」


しっかり小さなサキュバスの服を着た幼体化したハイサキュバス。


「いやぁ、よかったよかった。やっぱり遺体がないとちょっと手間取っちゃったけどね」


「痛み入ります」


畏まる小さなハイサキュバス。


「うん、『一度倒され復活するまで』という契約だからあとは自由だ。ハイサキュバス、眷族達を引き連れボコス迷宮を出るといい、しばらくは荒れる」


「···名残り惜しいです」


「君にはダンマスの才能がある。マスター会には推薦しておこう。いつか君に相応しい願いの迷宮を築くといい」


「は。···マミーエンペラー様。わたくしは、楽しく務めさせて頂きました。それでは」


「うん」


小さなハイサキュバスは抽象化された多数の蝙蝠に姿を変え、私の周りを一周すると、アークデーモンが開けた扉から去っていった。


「随分お優しい契約ですね。羨ましいですよ」


「アークデーモン君は死んでも本体は魔界でしょ? 気にしなくていいよ」


「···酷い」


門番が拗ねてしまったけど、いよいよ最後の仕上げだ。


私らしくこの迷宮の主として振る舞おうじゃないか。クククク。

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