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〇×クイズの場合(二)

「正解っ!」「あたったぁ~」「ニャー」

 余り知られていないが、明人が出す『〇×クイズ』は全て〇が正解である。小さい薫は勿論、薫の真似をしているだけの椛も、薄々感付いてはいるかもしれないが、実は〇の方が言い易いからってだけ。

 何か面白そうなことがあったら、考え無しに『まる』とコールしているに過ぎないのだ。兎に角大きな声で。子供なんてそんなモンそんなモン。元気なら別に構わないではないか。


「だめです。おしっこだけでも、石鹸でちゃんと洗いなさいっ!」「えぇえぇー」「ニャー」「えぇえぇじゃないでしょ!」

 美雪は構わなくはないらしい。洗い物がてらに横槍を入れた。

 別に美雪だって『潔癖症』てな訳じゃない。単に『教育上よろしくない』と思ってのこと。しかし普段から口煩く言っていれば、子供だって反抗的な態度を取ると言うもの。だって『正解』だもの。


「おとぉうさぁん」「もう正解って言っちゃったモン」「ホラァ」「ニャー」「正解でもダメなモンはダメ」「〇×▽◇!」「ニャー」

 抗議だ。猛抗議。これは言葉にもならない程、熱の入った抗議だ。

「じゃぁオナラだけのときはぁ?」「オナラだけでもですっ!」

 屁理屈を持ち出して言い合いに発展しているが、美雪は一歩も引かない。しかし薫は知っている。だからこその『攻め』だ。


「おかーさんだってオナラしたとき、手、洗わないジャン!」

 何と言う爆弾発言であろうか。美雪は独身時代から今まで、明人の前でオナラなんかしたことはない。万が一の場合、明人の記憶を都度消しているから、薫の指摘には堂々と『否』であると言える。


「お母さんは、オナラなんてしません」「ホラァ」「うそだぁっ!」

 人間は屁をこく生き物である。誰が言ったか知らないが、薫の記憶の中にある母親像に『オナラ』は切っても切れないようだ。

 幾ら美雪が『美の女神』と言われようが、人間である以上出るモンは出る。しかしそれは、外出先の『女子トイレ』でのこと。大音量で掻き鳴らそうが、とやかく言われる筋合いはない。


「じゃぁ、トイレに行っただけで、手、洗わないといけないの?」

 顎を上げて論戦を張ったつもりなのだろう。薫の圧が凄い。

「そうですよ。トイレに行ったら、石鹸つけて、手洗って下さい」

 正に正論。大だろうが小だろうが、若しくはそれ以外だろうが、トイレに行って手を洗わずに出て来るなんて、教育上論外なのだ。


「お母さんだって、洗わないことあるジャン」「それはアンタをトイレに連れて行ったときでしょ? お母さん何にも出してないもん」「えぇえぇ、ズルい。今、何にも出してなくてもって言ったジャン」「アンタそんなに言うんだったら、今度からお父さんとトイレよ!」

 さて、母対娘の対決の行方は如何に。父だけが呑気に『うんうん。一緒に行こう』と娘を誘っている。実際『ピンチ』のときは、明人に連れられて『男子トイレに駆け込むのも有り』な年齢である。

 しかし三歳にして、父とトイレに行くのはちょっと恥ずかしい。


「えぇえぇ」「ズルッ。ダメなんかい」「ほら。じゃぁどうすんの」

 薫の悔しそうな顔ったらない。美雪は吹き出すのを堪えるのに必死だ。美雪からは見えないが、明人の方が表情暗し。されど、深刻に捉える必要はない。どうせ明日になれば、全員忘れている。


「次の問題!」「えぇ? あっそぉ。じゃぁ第二問!」「イェーイ」

 明日を待たずに、早くも全員が忘れてしまったようだ。

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