表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/28

第25話:至高の選民、エルフの洗礼

アーク・ペンタグラムが多種族共生連邦の巨大貿易港『バベル』へと入港する。そこは蒸気機関の煙と魔導の光が混ざり合う、活気に満ちた「混沌の街」だった。

 

 だが、接岸しようとする巨大船の前に、白銀の甲冑に身を包んだエルフの儀仗兵たちが立ちはだかった。

 

「止まれ、野蛮な人間共。ここは連邦の玄関口にして、美しき旋律の守り手たるエルフが管理する特区だ」

 先頭に立つのは、長い耳を揺らし、蔑むような目でカズマたちを見下ろすエルフの貴族、セレスティン。彼は連邦内の音楽教育を一手に引き受ける『至高音楽院』の教官でもあった。

 

「……何だ、その下品な鉄の塊は。音楽とは、森の囁き、風の吐息……。そのような爆音を吐き出す装置を持ち込むことは、この街の『品位』が許さない」

 

 セレスティンが指を鳴らすと、港一帯に特殊な『静寂の結界』が展開された。あらゆる音の響きを吸い取り、楽器の音を強制的にこもらせる、音楽家にとっての処刑場のような空間だ。

 

【エリア異常:静寂の結界(消音レベル 90%)】

【敵:セレスティン(エルフ至上主義者)】

【カズマの怒り:急速充電中】

 

「カズマ様……ギターの音が、鳴りません……」

 リナリアが不安げに弦を弾くが、そこから出るのは、湿った紙を叩くような鈍い音だけだった。

「……なるほど。自分たちの理解できない新しい音楽を、ルール(結界)で封じ込めるのが、お前たちの言う『品位』か」

 

 カズマは冷笑し、一歩前へ出た。彼の足元から、黒い魔力の波紋が港の石畳を伝わっていく。

 

「セレスティンと言ったか。……お前は、あの子たちの『声』を雑音扱いしたな。それは、俺の全存在を否定するよりも重い罪だ」

 

「ふん、無能な人間に何ができる。この結界は、数百年の歴史を持つエルフの秘術――」

 

「歴史? ……ただの『古いソフトウェア』だな。……アップデートしてやるよ」

 カズマがコンソールのスイッチを強引に踏み抜いた。

 アーク・ペンタグラムの船体各所に隠されていた**『逆位相・魔力相殺ユニット』**が火を吹く。

 

 ドォォォォォン!!!

 結界を打ち消すどころか、結界そのものを「共鳴」の材料として利用し、街全体を巨大なスピーカーへと変質させたのだ。

 

「なっ、結界が……逆流しているだと!?」

「ベル、メルティ。挨拶だ。……一番『品位』のないやつを聴かせてやれ」

「任せろカズマ! 腹の底まで抉ってやるよ!」

 

 ベルがマイクなしで咆哮した。だが、カズマの設置した増幅装置がその声を拾い、エルフたちの結界を「燃料」にして、王宮を震わせるほどの重低音へと変換する。

 

「――――ッ!!!」

 バリンッ! と、セレスティンたちが張っていた静寂の結界が、物理的なガラスのように砕け散った。その衝撃波で、優雅に構えていたエルフの儀仗兵たちが次々と尻餅をつく。

 

「……美しくないな。地面に這いつくばる姿は」

 カズマは、腰を抜かしたセレスティンの目の前にしゃがみ込み、その胸倉を掴み上げた。

 

「いいか、耳の長いお坊ちゃん。俺たちは招待されたから来たんじゃない。……この街の『古い常識』を、根こそぎ書き換えに来たんだ。……邪魔をするなら、お前たちが後生大事に抱えている『音楽院』ごと、音圧で粉砕してやる」

 

【カズマの過保護レベル:Lv.6(国際問題すら恐れぬ狂気)】

 

「……ひ、ひぃ……っ!」

 セレスティンをゴミのように放り投げると、カズマは背後の五人に、最高に不敵な笑みを向けた。

 

「さあ、上陸だ。……まずは、この街で一番高い場所にある劇場を買い占めるぞ」

「「「「「はいっ、プロデューサー様!!」」」」」

 港に集まっていた獣人やドワーフたちが、エルフを圧倒したカズマたちに、地鳴りのような歓声を上げる。

 

 連邦編、開幕。

 カズマの「異常な過保護」は、ついに種族間の差別という壁すらも、爆音で打ち砕こうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ