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一話

久しぶりの投稿になります。

感想批判くれると嬉しいですので、よければお願いします。

 俺は今、死にかけている。

 信じられない光景が目の前で起こり、内臓から激しい痛みを感じているというのに、俺の体は動くことも声を出すことも出来ていない。

 地面に倒れている俺の上に緑色の肌をしたガタイのいい怪物、人間に似ているのだが、その眼は黒く、瞳は青い。

 そんな化け物が俺を見下ろし、俺の裂かれた腹の中に手を突っ込んで内臓をかき混ぜてくる。

 体から熱が無くなっていくのと共に、俺の意識が遠くなっていく。

 意識をなくせば死ぬことはわかっているのだが、意識を手繰り寄せることも出来ずに、視界が狭まっていく。そんな時、


『生きたいですか?』


 薄れていく意識の中でそんな声が聞こえ、遠のいていた筈の意識を辛うじて戻すことに成功する。


 語り掛けているのは誰だ?


 そんな言葉を口にしようとするが、声に出すことが出来ず、念じるだけになってしまう。


『私が誰と言うのはどうでもいいでしょう?私は貴方に聞いているのです。生きたいかと』


 語り掛けてくるものは俺が声を出してもいないというのに、俺が念じたことに返事をしてきた。

 この時、死にかけているというのに俺の意識は鮮明だということに気付く。


 今の俺の状態は君がやっていることなのか?


『そうです。けれど、その状態はそんなに長く続きません。だからこそ、何回でも聞きます、生きたいですか?』


 どんなに質問をしようと、語り掛けてくるものは行きたいか?と聞いてくる、ゲームでいうところのハイを押さなきゃ先に進まない状態というやつなのだろうか?

 けれど、このままイイエを選んでいても死んでしまう。怪しかろうと、今はこのままハイを選ぶしかないんだろうなと考える。


 俺は生きたい


『ならば私の名前を呼びなさい。私の名前はーー』


「……ーー」


 その時、俺は考えもしなかった。この後に起こるであろう世界の裏側が、俺を逃がしてはくれないということを。

 そして忘れないだろう。

 名前を呼んだときに、そいつが俺の唇を奪った時の感触を。


 ☆☆☆


 春が訪れ、在校生たちは一年繰り上がり、新入生が入ってくる四月。

 桜の花びらが綺麗に咲き、風で舞う美しさを前にして、俺、新城しんぎ誠は心の底から困っていた。


「ねぇねぇ、あの木って何?あんな綺麗な木初めて見るよ!春休み?ってのが終わって学校っていうところにまた行くのはなんでかな?と思ったけどこれを見るためだったりするのかな?でも休みって少なからずあったのに、冬休みとか春休みって言うのは他の休みより長いのはどうしてなのかな?かな?」


 俺の周りをくるくる回りながら、疑問に思ったことを足早に聞いてくるこいつを無視して校舎に向かって歩いていく。

 校門から校舎にかけて桜の木が植えられているこの学校、都立凡才高校。

 名前からして分かる通り、この学校には普通の人間が普通に通っている学校ーーだと思っていた。

 下駄箱に着くと俺に気付いたイケメンが話しかけてくる。


「よう誠!春休みは予定が合わなくて悪かった!」

「仕方ねぇだろ、大事な用だったんだから」

「そう言ってくれるのはお前だけだよ!今日の放課後は空いてるからどっか寄ろうぜ!」

「期待しないで待ってるよ、宗助」


 この話しかけてきたイケメンは東浄宗助、この容姿から女子にはモテモテ、だからと言って男子から嫌われているわけではないのだが、遊びには誘われない。

 なぜかと言えば、遊んでいる途中で退席することや、遊びに行くこと自体を断ることが多いのだ。

 本人の大事な用があることは周知の事実なのだが、今となっては俺くらいしか誘うやつがいない。男子の世界も単純が故の複雑さがある。

 そして靴を履き替え、宗助と教室に向かおうとすると、


「東浄宗助ぇえええええええええええ!」


 少女の大声と共に、こちらに向かって少女が走ってきた。

 俺たちを追い越したと思えば、すぐにこちら、と言うより宗助の前まで戻ってくる。


「おう、木原じゃないか。何が用か?」

「何か用か?じゃないわよ!昨日の事よ!」

「ま、待て!ここには誠もいるから場所変えよう」


 宗助の前に立っているこの少女は木原桜、この学校で男子の人気が高い少女で、見た目が整っており、高校生ではよく見ないツインテールが男子たちの人気をさらに引き立てているらしい。


「誠って……誰こいつ?関係者?」

「初対面の相手に失礼な奴だな」

「う、うるさいわね!そういうのならその鬱陶しい前髪を切りなさいよ!」

「木原!」

「っ!」


 木原が俺の見た目に指摘したところで、宗助が珍しく怒鳴る。

 宗助は性格も穏やかなところがあり、滅多に怒ることなどない。なので怒鳴るということも入学してからのここ一年では初めて見る。

 怒鳴るだけでも周りの視線を集めるというのに、その視線を集める対象が宗助というのにさらに驚きを付与させている。

 視線が集まっているのに気付いたのか、宗助は急に慌てだし、その顔を赤く染める。


「う、あ……あーもう!木原こっち来い!」

「私に命令しないでくれる!?」

「い・い・か・ら!」

「ひゃーー!」


 宗助は木原の手を掴み、その場から逃げるように木原を連れて行った。

 その光景を見ていた周りの人たちはその場で固まっていたのだが、暫くして何事もなく動き出す。

 実は怒鳴ることと俺がいる以外は、こういった場面はあの二人ではごく当たり前で、二人が付き合っていないことも周知の事実だったりするのだ。


 場所が変わって屋上、その場には宗助と木原が着いた。


「もういいでしょ!手を放しなさいよ!」


 屋上に着いた二人は手を繋いだままで、その手を木原が振り払う。


「はぁ、なぁ頼むから学校ではあんまり話しかけないでくれるか?」

「それは貴方が、昨日のようにすぐに居なくなるからでしょ!」

「き、昨日は誠と遊んでいた途中だったから……」

「いくら昨日は雑魚の敵だったからと言っても、すぐにその場から離れる必要は無いでしょ!それに誠ってさっきの根暗ーー」

「誠を悪く言うんじゃねぇ、それ以上言ったら女でも殴るぞ」

「そいつ……関係者なの?」

「違う、一般人だ」

「なんで一般人と遊ぶことを優先しているのよ」

「お前には関係ないだろ」

「ふん、まぁいいわ。あなたが奴らを倒してくれるのなら問題ないわよ」

「そろそろHR始まるから戻るか」

「……どうしてそこまで日常にこだわるのかしらね、と言うより結局話できていないじゃない!」


 話が一段落した二人はそのまま、屋上から教室に戻っていく。その場には誰も残っていないはずだった。

 だが、給水塔の上で寝っ転がり、二人に気付かれることなく、会話を聞いていた俺。

 先程宗助が木原を連れてその場を逃げた時、先回りして屋上の給水塔の上に潜んでいたのだ。

 あの二人は話し合うときは必ず屋上に来るからだ。少し不用心過ぎないだろうか?という考えが浮かんだが、頭の隅に追いやり、給水塔の上から降りることにする俺。


「相変わらず肝心なことを話していかなかったね、あの二人」

「お前だけで来ればよかっただろ。俺以外には見えないんだから」

「吾輩は確かに誠以外には見えないけど、誠から離れたら戻ってくる自信は無いわね」

「そんなことに自信満々になられてもな……」

「けれど二人の会話から、ここ最近の奴らの出現率が高いのは分かったわ」

「それ以外は思い出せないんだろ、アドラ」

「そ、そんなことない」


 俺は先ほどまで無視していたこいつこと、アドラに向かって話しかける。今屋上にいるのは俺とこいつだけだからだ。

 俺の質問が図星だったのか、視線を俺から逸らし、声を震わせている。

 そもそもこのアドラと言う少女は、俺にしか見えないし、声も聞こえないという謎すぎる少女だ。

 そんなこいつと出会った半年前くらい前のの日を思い出しながら、教室に向かっていく。

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