54.学園への旅立ち
(1)0歳編
ミハイルSide
4の月の初め、妹リアが生まれて半月経った頃ーーー。
僕は、王立学園の中等部に、妹のセレスは初等部の始業に向けて旅立つ。
この春から僕は中等部に入学し、全寮制の寮に入ることになる。
同じ学園の敷地にいるセレスとは、たまになら会えるだろう……。
でも家族と、生まれたばかりのリアとはしばらくのお別れだ……。
成長を見守れないのは悲しいが、僕にはお祖父様や父様のような立派な大人に、立派な貴族に、立派な領主になるために仕方ないこと。
それに、一緒に王都に行くセレスは僕より弟妹愛の強い子だから、さっきからずっと目に涙を溜めている。
と言っても、今回は父様も母様も一緒に行けないし、お祖父様もお祖母様もリアと精霊様のことでバタバタしていて行けないから、身の回りのことをしてくれる使用人と、この春から僕の従者になったアルバート、セレスの侍女見習いのクロエの総勢7名での移動なのだ。
しかも、領地の屋敷の部屋から王都の屋敷の部屋への転移での移動。
ものの一瞬で、遠く離れた王都に着ける。
時間をかけずに王都につけるから、長旅をする必要がなくてギリギリまで家族と居られた。
リアも日に日に成長するし、念話でおしゃべりもできた。
僕たちも原初の精霊様に魔力循環から魔法の使い方、歴史に魔法の基礎などたくさん教えていただいた。
そのおかげで保有魔力量も増え、魔力回路が太くなったそう。
強い力が使えるようになったのに、制御はしやすくなった。
正しい使い方を学んだことで、利がたくさんあった。
家族とも、弟妹ともたくさんいられたし、勉強も頑張った有意義な時間だったが、しばらくお別れしなければならない。
悲しいけど、僕は皆んなのお兄ちゃんだから、しっかりしないと……。
「ミハイル:お祖父様、お祖母様、父様母様、可愛い僕の弟妹たち。皆さん、いってきます!」
「セレスティーナ:行って参ります……。」
セレスは元気がない。
初等部2年生になるセレスは帰ってこようと思えば、転移魔法で週末には帰って来られる。
弟妹たちのためにも元気な笑顔で、行ってきますをして欲しい。
「ミハイル:セレ?そんな顔ではリアに笑われちゃうよ?」
僕がそういうと、ハッとしたように顔をあげ、涙は溜めているがにっこりと笑い家族を見た。
「セレスティーナ:シア、ヨシュ、リア。私のこと忘れないでね?お姉ちゃん頑張ってくるね!」
行ってきますと2人で言うと、部屋に集まったみんなが行ってらっしゃいと返してくれる。
転移の魔道具に魔力を流し、魔法陣が光る。
と、同時に僕らは転移した。
気がつくと、王都の屋敷の転移部屋で王都の執事長が迎えてくれた。




