44.一方その頃
(1)0歳編
サイモンSide
リアとマリアが食堂から出て部屋へ向かっている頃、食堂に残った家族と精霊達は、今後について話していた。
『風:食事前にも話したが、今後は各々が得意な属性に分かれ、魔力の循環をうまくできるように練習する。それができるようになると、体の中にある“魔瓶”、魔力の貯蔵庫じゃな。これが大きくなる。種族によっては変化しないが、人間はある程度大きくすることができる。魔瓶に一定量魔力を貯め、常に魔力を体に巡らせることができるようになれば、お主らは一回りも二回りも強くなれる。それと同時に知識も身につける』
それができれば、確固たるリアの守りになる。
と、風の精霊様は言う。
もちろん自分たちにも益はある。
疲れ知らず、病気知らずの体を手に入れられるし、守りたいものを守れる。
だが、力を持つものには責任がある。
何も知らずに力を使えば、身を滅ぼす。
歴代最悪の汚点となるかもしれない。
そのためにも、知識も武器として身につけることが何より大事だと教えられた。
私たちはこれから原初の精霊様のご指導のもと強くなる。
力をつけ、大事な家族を守るために。
『風:姫様が起きられ説明が中途半端になっているものがある。魔法についてより大事なこと。愛し子の存在についてを説明しよう。
姫様はこの世界ができた時、最後に神より生み出された稀有な魂。そこまではいいかの?』
私たちに確認をとり、風の精霊様が話し出す。
まず、人間は愛し子を知っているか?と問われる。
精霊の愛し子は知っている。
契約もしていないのに魔法……正しくは精霊魔法を使ってもらえる存在のこと。
でも、世界の愛し子とは?
見たことも聞いたこともない。
それはなぜか、神達によって魂のまま神界で大切にされていたからだと言う。
この世界で生まれてくるのは、初めてのこと。
だから知らなくとも仕方ないのだとか。
『風:詳しいことはまだ話せないが、なぜ姫様がこの国、この家に生まれたのかは説明せねばならない』
確かにそうだ。
引っかかることはあるが、なぜそんな存在がこの家の我娘として生まれてきてくれたのだろうか?




