35.晩餐の前に②
(1)0歳編
サイモンSide
今日は知らないことをたくさん知る日だ。
ちょっとどころではないかもしれないが、キャパオーバーだ。
「父:なぜ教えてくれなかったんだ?」
すると、またきょとんとした精霊たち。
『キティア:教える必要ある?私たちは他の属性の魔法は使えないのよ?それに、主は今に不満があるの?』
闇の中位精霊キティアが言う。
人と精霊では考え方が違うのだろう。
確かに今まで不満はなかった。
魔法が使え、ありがたく思っていたし、恩恵に感謝もしている。
それに、キティアの言う通り、精霊には属性外の魔法は使えない。
教える必要がないことは、口にしない。
理に適っている。
『イオン:ちなみにで教えておくと、精霊や神獣、聖獣の類以外の生物は、魔力を体に取り込み、体の中で練り、放出する。所謂、“魔法”が使える。主が私たちを通して使っているのは正確には“精霊魔法”だな』
さらなる爆弾発言が飛び出した。
もはや、教えないで欲しかった……。
こんなに情報過多になるくらいなら、知らない方が幸せだったのではないか……。
否。
真実を知らねばならない。
それが、魔法を、いや精霊魔法を使う者の義務なのではないだろうか。
何も知らずに力を使うことは簡単だろう。
だが、知ってしまったのに、知らないふりをして今まで通りなんてことは許されないだろう。
家族のためにも、色々と学び直さねばならないだろう。
「父:私たちは今まで何も知らずに、力を使っていたのだな……。すまない、皆んな。これからはしっかり学ぶことを約束する。だからどうか、見捨てないでくれ」
深く頭を下げ、懇願する。
みっともない、貴族のくせに、男のくせに……。
頭を下げる貴族男性をきっと世間ではそう言うだろう。
だが、間違いは認め、改められる人間でなければならない。
何かしてもらったら“ありがとう”。
何かしてしまったら“ごめんなさい”。
自分に非を認めて謝れる人は多くないかもしれないが、生きていく上で何よりも大事なことだし、そう育ってきた。
自分の子供達にも教えていく上で、まずは私自身が精霊とのこれからの関係を断たないように、行動したい。
『イオン:よくわからんが、今の主を見捨てることはしないさ。精霊と人の間には埋められない溝はあるし、仕方のないこともたくさんある。私たちが伝えてどうにかなることは伝えるし、主の問いには誠実に答えよう』
イオンがそう言うと、精霊たちが頷いた。
これからさらに忙しくなりそうだが、精霊たちも協力してくれると言うし、頑張ろう。




