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理科部冒険記 〜実験結果は異世界転移〜  作者: Taku-3
第1部 理科部冒険記NEXT
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第65幕・終わりなき決着

「ああ…月が…月が綺麗だあ…。」

僕は夜空を見上げ、呟いた。


「それはプロポーズかい?ヨシヒコ君…。」

「もしかして頭も叩かれました?」


…どうやらアレフさんは、かなり錯乱しているようだ。


「今のは良い動きだった。アレフは俺の攻撃を、一発だけとはいえ見切ってみせた。そしてヨシヒコ少年――」


マワリさんは、僕達の傍に歩み寄る。


「――俺が君を認識してから、君の攻撃が俺に当たるまでの猶予は1秒も無かった。もう一歩だったな(・・・・・・・・)。」


再び大地に仰向けになる、僕達の傍に…


「僕の方が、早く攻撃に転じていたハズなのに…。」

「知識を得ても、それがすぐに身に付くとは限らない。お前達の場合、知識を生かすだけの実力が足りていなかったようだ。」


僕達に目線を近づけるためか、マワリさんはその場でしゃがみ込んだ。


「…でもマワリさん、力の差を覆す術がどうこう言ってましたよね…。」

「勘違いするな、アレフ。力の差は、埋まっているに越したことは無いんだ。先程の話は、あくまで0%を0.1%にする手段に過ぎん。」


「ハァ…やっぱり、実力不足って結論になるのか…。」

「さっきの動きは悪くなかった。お前達ならば、知識を生かすのに十分な実力を得る事が出来るハズだ。だから…そう悲観するな。」


…マワリさんはアレフさんを諭すなり、立ち上がってテントの方へと歩き出した。



「――今日はこれで終わりだ。夕飯にするぞ。」


「えっ…良いんですか!?でも僕達、一発も当ててなムググ――」

「そこは素直に"ありがとうございます"で良いんじゃないかなヨシヒコ君!?余計な事は言わずにさあ!?」


…起き上がった僕の口を、アレフさんが背後から塞ぐ。


「丸一日も若者2人の相手をして、流石に疲れた。…これを一発分という事にしてやる。」


「はっ…はいあほうほらいあふ…。」

「ありがとうございます!」



・ ・ ・



【サーバリアン王国湾岸都市 デキ市】


「――周辺のモンスターは片付いた!この付近はもう安全だ!」


リカブは大剣を振り下ろし、叫んだ。

刃を伝う血液が、地面に弧を描く。


「つ…強え…!」

「流石は戦士様だ…助かった…!」


住宅の裏、生垣の中…身を潜めていた市民達が、次々と姿を表し感嘆した。


「戦士様。我々自警団へ助力頂いた事、感謝致します。」


髭の濃い中年の男が、リカブに深々と頭を下げた。


「自警団…警察などは居ないのか?」

リカブが尋ねると、男は気まずそうに目を逸らした。


「先の襲撃で、殆ど壊滅状態に陥ってしまい…今やデキ市民達は、市内を徘徊するモンスターに見つからぬよう、息を潜めて暮らすのでやっとです…。」

「…そうか。何処へ行っても、状況が深刻なのは変わらないな…。」


「モンスターの数は日に日に増え、デキ市の防衛線は後退する一方…。遂にはこの区域も奪われようという時に、貴方は助けて下さったのです。どうかお礼をさせて頂きたい。」

「通り道にモンスターが居たから応戦しただけだ。大した事はしていない。」


リカブはそう告げ、男の横を通り過ぎていく。

しかし男は、立ち去ろうとしたリカブの腕を掴んだ。


「――何でも構いません!どうかお礼を…お礼をさせて下さい!命の恩人に何も返さないなど、私の矜恃が許さないのです!」


「そうだよ!戦士様が来てなかったら俺達、今頃モンスターの餌になってたかもしれないんだし…。」

「言葉じゃ感謝しきれないですよ!」


自警団の男に続くように、市民達は次々とリカブに賛辞を送る。


「港が奪われる前、グラス王国から取り寄せたワインです!どうぞ!」

…中には既に、感謝の品を持ち込んでいる者も居る始末だ。


「いや、しかし――」

「お花、あげる。」


人々を宥めようとするリカブの足元で、小さな女の子が花を握っていた。


「お庭に咲いてた、綺麗なお花…あげる。」

「ああ、ありがとう。嬉しいよ。」


リカブは微笑んだまま、女の子の頭をそっと撫でると、小さな白い花を受け取った。


「見たか!?花を受け取ったぞ!」

「よし皆!戦士様にありったけの花を持ってこい!」

「待て待て違う!持って来なくていい!」


「花じゃない…となると子供の方か!?」

「よし皆!戦士様に小さな子供を――」

「もっと違う!!!早まるな!」


今にも走り出さんとする市民を、リカブは慌てて静止した。


「…ゴホン、欲しい物は無いが…頼みたい事ならある。構わないか?」

「ええ!何なりと!」


市民達は目を輝かせ、リカブの次の発言を待っている。


「交通手段が欲しい。行きたい場所があるんだ。」

「交通手段、ですか…。お尋ねしますが、何処に向かうおつもりで?」


男は首を傾げながら、問いかける。

リカブは真剣な表情を男に向けた。



「国外――ウェザー帝国だ。」



To Be Continued

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