ホーラに捧ぐ3(最終回)~人類最古の愛の歌~
幾年月が流れただろう、村長ネアンデルの祝福を受けた二人は幸せな時を過ごした。
草原には雨が降り、また渇き、また雨が降り、また乾いた。
…そして、ホーラは死んだ。
ポロポロと乾いた大地に雨が降る…大粒の涙だ。ボイパは彼女の亡骸の前で三日三晩を泣いて過ごした。
(ホーラw)
彼女は悪戯好きであった。大きな木の実が獲れたと渡されら…中身はすっかり食べられていた。
(プフッ…ホーラ!w)
大きな貝が獲れたと渡されたら…中身はすっかり食べられていた。
(ホーラ…)
まだ余裕があると渡された木の実が、実は最後の…彼女の分の食事であった。
「ホーラァアアアアア!」
悪戯好きであったホーラ…嘘つきだったホーラ!あぁ、これも悪戯なんだろう?嘘なんだろう?
ボイパの心を現す言葉はこの時代には無い、だからボイパは獣のように叫ぶしかなかった…!二人の愛の洞窟に、悲哀に満ちた叫びが響く…そして彼女の残した木の実や頭蓋が反響した音に当てられ震え、不思議な音を重ね響かせ…
ポン
「ボイパ…サイナラーダ・ホーラ」
(ボイパ…別れの時間だよ)
仲間達がボイパを支え、ホーラを外に連れ出した。
ブンブンワーワーの頂き、サイナラーダへ彼女を埋葬する為だ。吹き抜ける青空、眼下に見下ろす草原…頭上を舞うコンドル…ふぃにボイパはあの日の事を思い出した。
彼女に告白をしたあの日だ。幸せだったあの日だ。
死んでしまった彼女はあの日を忘れてしまっただろうか?…いいや、それは無いだろう…あぁそうだ、彼女は僕の歌が好きだと笑ってくれた。
「♪ヤー ヤーヤー」
ヤー…それは歓びを現す叫び、原始人は獲物が獲れた時にその叫びを上げ己の幸福をアピールした。
「♪ヤー ヤーヤー ウソ ヤーヤーヤー」
(♪ヤー ヤーヤー ウソヤーヤーヤー)
ごくごく当たり前の話をしよう、どんな時代にも「音楽家」は居た。
(♪ヤー ヤーヤー ウソヤーヤヤー)
彼は何を歌ったのか?言葉の拙い原始の時代…それは本当に歌だったのか?
(♪ヤー ヤーヤー ウソヤーヤーヤー)
ボイパは歌った、嘘っぱちの歓びの歌を…彼女と過ごした幸せを想い、彼女が喜んでくれた歓びの歌を…
(♪ヤー ヤーヤー ウソヤーヤヤー)
言葉が拙いからこそに、音楽は…その音色は、心を映し出す必要があった。
最初は震える呟きであった彼の声は、やがて透き通る音となりブンブンヤーヤーに響きわたった。
「♪ヤー ヤーヤー ホーラー ヤーヤヤー」
人類最古の音楽家ボイパ
これは、彼が作った最古の楽曲「ウソヤー」誕生の物語。




