ホーラに捧ぐ2 ~人類最古の愛の歌~
青い空を背景に、緑の草原にそびえる灰色の岩山…「ブンブンワーワー」(ハチの巣の賑わい)、山の斜面に空いた無数の横穴はそれぞれプライベートな家と言える。屈強な戦士やゴミ屑な男共は天敵の襲来がある最下層に部屋を持つが、子供や女性達の部屋はもっと奥地山の中腹あたりが割り当てられる。
ボイパが会いたい愛しい女性「ホーラ」の住処は遠くから見ても割と目立つ、「拾い集め」を生業とする彼女の家の前は木の実の殻や獣の頭蓋で美しく飾り立てられている。
ポカポカポーン
「ヤーヤーヤー!!」
木の実・木の実・頭蓋…玄関先の飾りを叩いて洞窟に叫ぶ。これは重要なルールである。いくら文明の浅い原始時代と言えども、女性の部屋にいきなりズカズカ入る男は軽蔑される…コホン、ボイパは獲物を地面に下ろし唾で髪を整え身を正した。
「アララー?」
「フゥー…ヤー・ホーラ」
「ボイパ!」
一糸纏わぬ愛する女性を前にして、ボイパはクールに…極めてクールに挨拶をする。今日は愛の告白をするつもりだが…ガッツいてはいけない。
「ヤー! アレレ?ドッター?」
「フゥ…ソーレ・ヤーヤー」
「…!!ワー!スゴヤー!」
獲物を持って女の所に持っていく、ごくごく自然なプロポーズの流れだが…ボイパはそこら辺の男とは違う。獲物を持って「凄いだろ!俺の所に来い!」ではなく…クールに、冷静に…大したことでも無いように振る舞ったのだ!
「マー…ラクラー・ザ・ヒュルルー…ダーメ・スタタブルルー・ボイパスゴヤーラクラー…ドントト・フンフー・ムンズー」
(まぁ…、対した事無い獲物だけどね。臆病で逃げ足が速く…村一番の瞬足の男、疾風のヒュルルーでも捕まえられない獲物ではあるけど、俺にかかればちょちょいのちょいさ…鼻歌まじりでむんずと捉えたんだ、フフ)
いくら強い男を演じても、自身が無いので早口になる。背伸びをしてカッコつけてるボイパをホーラは優しく見つめ頷いた。
「スゴヤー!」
「…!フッフーヤー!」
赤くなるボイパを前に、ホーラの悪戯心が騒ぎ出す。ホーラは優しい女性であるが…同時に子供のような一面があった。
「…スキヤー」
「…フェ!?」
ボイパの心臓が跳ねる。
「…スキヤー…ボイパ・ドントト!!」
「ドドド…ドントト!?」
「…フフ、ドントト!」
ドントト(リズム・歌)である。鼻歌交じりに兎を捕まえた話をしたからホーラはボイパの歌を褒めたのである。高鳴ったボイパの心臓は、期待が外れてリズムを乱し…不整脈を起こしかけ…
チュッ
頬に感じた熱さと柔らかさに、ボイパの心臓が止まりかけた。
「ホーラ・ウソヤー」
「ワー…ウソヤー…」
獲った獲物を村長に納めなければならない、しかし狩人の特権として獲物の一部は一番最初に狩人本人が選んで食べて良い事になっている。
ボイパは丸禿げ兎の耳を切り落とし、愛するホーラに震える手で渡しこう言った。
「スッキャー」
こうして、ブンブンヤーヤーに新しい夫婦が誕生した。




