ホーラに捧ぐ1 ~人類最古の愛の歌~
(♪ヤー ヤーヤー ウソヤーヤーヤー)
ごくごく当たり前の話をしよう、どんな時代にも「音楽家」は居た。
(♪ヤー ヤーヤー ウソヤーヤヤー)
これは人類最古の音楽家、原始人ボイパの物語だ。
◇ ◆ ◇ ◆
原始の空はどこまでも青い、凍てつく風を切り裂いて丸禿げコンドルは円を描いて地上を見下ろす。
果てしない緑の草原、その草陰に獲物を見つけたコンドルは急降下…しかけて慌ててストップ!
「グァアアア!!」
怒りに満ちた叫びだ、折角見つけた獲物が猿に取られた!
「ヤー!ヤーヤー!」
地上では直立した猿…否、原初の人類…原人の青年ボイパが丸禿げ兎の耳を掴み歓びの叫びをあげた。
「グァアアア!」
「プハハ!メンゴーヤ!ヤーヤー!!」
ボイパは悔しがるコンドルに謝ると、獲物を抱えて満面の笑みで草原を駆けだした。
丸禿げ兎!常に聞き耳を立てる臆病者な動物で足も速いので中々捕まえるのが大変な獲物だ!しかし、ボイパはその習性を逆手に取った!兎の通り道に罠を仕掛け、大声を出しながらそこに兎を追い込んだのだ!これは一つの革命であった…その実感から再びボイパは歓びを叫ぶ!
「ヤー!」
草原をひたすら北に進めば、やがて終わりの山が見える。その一角…穴だらけの崖こそがボイパの住処「ブンブンワーワー」(ハチの巣の賑わい)である。
獲物を抱え、帰村したボイパにすれ違う人々は優しい。
魚とりの名人サンマ―
木登りの名人マダサール
雷のいびきデブデブデ
「ヤー!」
「スゴヤー!スゴーヤー!」
「ヤー!ヤー!」
獲物が獲れず、手ぶらで帰った時は唾を吐きかけられた物だが…なんと幸せな日なのだろう。ボイパは猫背な二足歩行を、猫背はそのまま胸を張る様に上体を起こして原初のスキップで村を進む、目指すのは村長の横穴だが、その前にどうしても会いたい人物がボイパにはいた。
ごくごく、当たり前の話をしよう…どんな時代にも男女が居て、そこには甘酸っぱい恋があった。
ボイパは村長に引き渡す前に「微笑みのホーラ」に獲物を自慢しに行ったのだ。ボイパはホーラに恋をしていた…ずっと、ずっと昔からだ。