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電波覚醒サイココップス、ネバーハンド米倉

 世界に蔓延る数多の犯罪、それらを取り締まるのが警察の仕事だ、彼らは日々犯罪の研究と鍛錬をしつつ街角で瞳を光らせている。

 足早に過ぎてゆく人波、瞬きの間に過ぎゆく時代の中で犯罪者を見つけるのは容易ではない、血濡れた刃物を持つ気狂いや頭に注射針を差し笑うジャンキーのような分かりやすい犯罪者などなかなか出くわす事はない、犯罪と一口に言えど殺人、傷害、窃盗等のガチヤバ重犯罪から、駐車違反や迷惑行為などせいぜい罰金で済む軽犯罪等様々なのだ…そう、問題は迷惑行為である。

 迷惑防止条例というものがある、列の割り込みやらなんやらしょうもないアホを条例違反で注意する為のものであり、限られた人員で国の安全を維持する警察があまりそっせんして取り締まる事も無かったこの条例違反者達であるがパスタ歴202X年、電波研究所の爆発事件が原因で全国に超能力者が大量出現してから様相が変わった。

 超能力による迷惑行為、たかが迷惑行為だとしても放置すればどれだけ社会混乱が起こるか説明すら不要であろう。

 そして、超能力迷惑防止条例違反者取締課…通称『超迷惑課』が誕生したのだ!


  ◆  ◇  ◆  ◇


 「先輩、ここに張り込む意味がわかりません…どうしてここだと?」

 腰まで伸びる長髪を頭上でハテナマークにしながら婦警、オグシカエルは先輩に疑問を呈した。因みに彼女の能力は『大和撫子七変化』と呼ばれる髪型を変形させる能力であり、凄まじい寝癖と格闘中に怪電波に脳味噌を貫かれ能力に目覚めたのだ。


 「半分感だ、ネバーは変態だからな…そろそろ女子アナを狙う気がする。」

 警備員用のやっすい椅子に腰掛け、あろうことが保安室でタバコを吸いながら目つき犯罪者の先輩婦警、トドメサシミは気怠いトーンで答えた。彼女の能力は公にされて居ないが職場の上司に業務態度を注意され逆ギレし、罵詈雑言で上司を泣かせていた時に電波に貫かれているはずである。

 ギロン、彼女の鋭い瞳を直視するとオグシは蛇に睨まれた蛙の用に背筋が氷、硬直する。


 超能力迷惑犯罪者『ネバー』

 発覚したのは病院からの通報である。市内の皮膚科病院、そこに受診にくる水虫患者が前月比の37倍になったという。ただの流行病の可能性もあったが他人に病魔をばら撒く能力はその危険度の高さから最優先の調査対象となっている。

 水虫患者を詳しく調べると初期の患者は市内の電車、バス等の交通機関乗り合い時に発症、中期はオシャレな喫茶店やデパートの女性店員ばかり、最近は女子高生の患者が瀑増している。


「ネバーは痒さに悶える女性を見て興奮する変態だ、カメラの前で仕事中の女子アナに水虫を発症させ、収録中に必死に声を抑え悶える姿をみたいと考える筈だ」

 ギロンとした目でズバンと言い放つトドメ婦警、オグシは彼女の眼圧以外の原因で背筋が氷る感覚に硬直した。

 「先輩の推理が当るかは疑問ですが…ビンゴなら死刑で良いと思います。」


 「アヒぃいぃい!」


 張り込み調査の為に婦警に居場所を譲っていた中年警備員が気色悪い声を上げながら足を抱えてうずくまった。季節は8月、高い温度と湿度の時期に十数時間通気性ゼロの安全靴を強要されていた彼の足はこの場の誰よりも敏感に、最速でネバーの能力の犠牲になったのだ!


 「現れたな…ネバー!オグシ!全員逮捕だ!」

 「はい!特例開放…!」


 超能力の使用は制限されている、法整備も追いつかない社会混乱の最中である為に細かい部分はまだまだ審議中ではあるがそれでもいの一番に定義された禁止事項があるのだ!


“自己、または他人の生命、身体、財産を侵害する能力の使用は禁止される”


 大和国憲法にある人権の尊重、それを守る最低限の決まりである、一般人から警察まで全ての大和国民に課せられた最上級のルールなのだ!ただし!


“ただし…自己、または他人の生命、身体、財産を守る為の行為は…これを罰しない”

『これを罰しない』


「特例開放!」

大和撫子七変化=縛・包囲毛!


 オグシの髪がうねり伸び、毛の津波となって保安室前を通り過ぎる通行人数十人を捕縛した!そして即座にトドメが走り…

 みんながみんな突然の怪異の最中驚愕したり慄き、泣き叫ぶ中で(あっヤッベ)というリアクションをした奴に手錠をかけた!


「なっ!?なんですかなんですか?」

「観念しろ…ネバー!糞キモ野郎!」

「なっなな…意味わかりません!証拠は!?犯罪の証拠は!?」

「私の目を見ろ!この腐り豆!」

「ひぃ!」


 こうして、犯罪者ネバーは逮捕されたのだ。


  ◇  ◆  ◇  ◆


 ネバーこと、米倉半造24歳アルバイトは彼女に振られた翌朝、死んだ魚の目で朝食を食べているタイミングで電波に貫かれた哀れな男だった。

 無気力過ぎて白米の上に醤油も辛子もネギもかけないどころか、混ぜもしない納豆をどかっと乗せて、モチャモチャと食べながら目覚めた能力は『ネバーハンド』

箸で混ぜることなく納豆を理想のねっちゃりに変える力である。

 あまりにもしょうもな過ぎて自身の能力に気づくまで半年を要した彼であったが、様々な実験をしてみると凄まじい能力であることがわかった。


①ネバーハンドは臨むまま納豆の粘度を上げる

②臨むなら粘度を下げる事も出来る

③水虫に試してみたら一瞬で直せた

④逆に試したら水虫になった


…そして、彼は出会ったのだ。超能力犯罪者組織『タクト』に…


「タクトのアドバイスで範囲を…バスで試してみることにしたんです!…そしたら目の前のOlがモジモジし始めて…興奮して…!」


 死刑

 …にはならなかった、犯罪者を捕まえるまでが仕事であり、罪を量るのはまた別の人間のしごとだ。しかし、やはり死刑にしてほしい。


「迷惑…なんてものじゃないですね」

オグシカエルは髪型を怒髪天にしながら報告書の制作に勤しんでいる、そんな彼女の向かえの席で珈琲とドーナツを嗜みつつトドメサシミは新聞を読む。

「あぁ…超、迷惑だ。」


 超能力犯罪組織タクト

 善良な能力者に能力悪用をアドバイスする超超超超迷惑な奴らである。


 超能力者誕生直後、法整備も追いつかない怒涛な混沌の時代にあって国民の生活を守る警察達、あぁ…頑張れ超迷惑課!行け!僕らの超迷惑課!

 オグシカエルは報告書を印刷し、自身のハンコをペタンと押して、もう一つ四角く大きなハンコを押した!

 ベタン!


【静大華市警察署 超迷惑課】

 

END


 

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