愛せよカラオケ文学部2~文楽改名編~
Woo<ウー>
1:求婚する、求愛する
2:同意を求める
3:懇願する
Yeah<イェー>
YESの砕けた感じ
「つまり…歌で出てくる、woo yeahって…くだけた感じで相手に同意求めてる…って事?」
「せやな!…つまり、woo yeahは“せやろ?”って意味だ!」
ここは勝負高校カラオケ文学部、音楽を音として追及する吹奏楽部や軽音部と対極に位置し、歌詞をターゲットに文学として追及する変わり種部活動なのだ!
今回のテーマはノリノリの曲に出てくる謎の歌詞「ウ~イェ~」一見意味など無いただの音、それも酔っ払いが気持ちよくなって「ウウィ~ww」とか言っているのと同類だと思ってしまうが…俺達の尊敬するアーティスト様が酔っ払いと同レベルなわけなぞ無いのでみんなで必死に調べているところだ。
「woo…ねぇ、じゃぁウーマンって同意する人って事?女性軽視も甚だしいわ」
「ウーン…あっ!woo・nなのかな、僕は悩んで唸ってただけで同意はしてないんだけど」
話が歌から逸れて行く、しかしまぁまぁ面白い話題である。文学というジャンルにおいて古語、語源に想いを馳せる事は避けては通れない道である。woo yeah?(せやろ?)
「じゃぁ次のお題、チェケラ!!」
チェケラ=check it out
チェックしとけよ!よく見とけよ!とくと見よ!!
「スラング…ですか、沼ですね。」
「音楽に国境は無いとか言いながら、使う言語は同郷の人でも通じるか定かではない…いや、むしろ通じないように身内だけで広がった暗号みたいな単語で組み上げるこの矛盾…良い」
「パトカーの事をパンダって言ったりするんだっけ?」
「え?パ〇ダヒーローってじゃぁ普通に警察なの?」
「多分違う」
話題というのは広ければ広いほど多くの人に受け入れらるが浅く、狭ければ狭いほど深く、そして面白いものなのだ。身内ネタや、解る人にだけ解る物まねなどその際たる物…では、スラングを多用するような音楽はどうなのだろうか?音として聴いて心地よい物はインディーズから成り上がり大衆にも人気が出たりもするが…本当に、それだけが正しいのか?
聞く方の我々が浅すぎるが為に分からないだけで…実はもっと深く深くその曲を構成する世界に足を踏み入れ、もう一度聞いたなら…全く違う聞こえ方がするのではないだろうか?
音楽を楽しむには音楽のみならず、その背景にまで溶け込まねばならない…フフ、なんとも深く楽しく、高尚な娯楽なのだろう…文学研究のし甲斐があるってもんだ、woo yeah?(せやろ?)
「最後はoli oli oli oh!」
「忍者の奴!」
「え~っと オリオリオー…オリ…ハワイ語であった!」
oli…ハワイ語で歓び、幸福
音楽に国境はなく、様々な人々の間を流れ流れて育った文化だ。日々生まれる多くの歌の背景で人種も国籍も、宗教も職業も階級も…陰キャ陽キャも無く様々な人が好き勝手に好きを詰め込んで詩を書いている。
日本語に紛れ込む唐突なハワイ語、渋い歌詞の合間でwoo yeah(せやろ?)唐突なチェケラ、文法という名の鎖からも外れた、しかし多くの人々の心を確かに魅了する自由な文、詩。国語の先生が採点したらどうなるか?知らん…しかし、もし赤ペンを振るうような人が先生だったなら私は国語が嫌いになるだろう。
学問という名の鎖で縛られた崇高なる文学、しかし私はもっと自由に楽しく文を語りたい。音楽が音学でなく音楽であるように、文学も文学でなく文楽であっていいのではないか?
こうしてカラオケ文学部は「カラオケ文楽部」へと改名申請をだした。
改名理由を熱く語る生徒のこの熱い想いに涙を禁じえない担当教員以外は、職員室に居合わせた面々は全員がきょとんとした顔であった。