カレーを持って異世界転移
第一話「トマトカレーと全裸の転移」
世界中で巻き起こったパンデミックの最中、友人の本格カレー屋はカレー弁当屋に変わり、ついにはレトルトカレーの発売を始めた。…そして新商品「トマトカレー」の業務用サイズレトルトパックが段ボール5箱分届いたわけだ…うん、売れなかったのかしら?食費浮くから良いけども。
カレーライス、カレーうどん、カレー炒め、マーボーカレー、カレーグラタン、カレーパスタ、カレーカレーカレーカレーカレーカレー…そして気が付いたら異世界に居た。
針葉樹が茂る森の中、風呂上りの全裸を撫でる心地よい秋風…はくしょん、そして持ち物はカレー…何度見てもカレー、うんこれは夢かもしれない。
あ、僕は年齢32歳のフリーターな中年男性、正男と言います。
異世界に持って行った業務用カレー数:3袋
第二話「猫娘はカレーにハマる」
森を徘徊していると猫獣人の村に迎えられた、襲われるかと思ったが意外と温厚だ。人間が森で死ぬと人族が森を焼きに来るとかあるらしく、とりあえず保護してもらえた。
森の中の秘湯に浸かって居たら服が無くなり、探してて迷ったとか言い訳したら普通に受け入れらた…え?あるの秘湯?時間があれば探してみたいものだ。
自分の面倒はいい年してニートをしている猫青年、猫男くんがしてくれる事になった…二人でザリガニ(朝ごはんのおかず)取りしたり、魚(昼おかず)釣りしたり、カブトムシ(夕おかず)探したり、下ネタ(夜おかず)トークしたり楽しかった。
獣人村=まんま村には長い事いる事になってしまった…というのも、僕が保護されてから初雪が降り始め、結構な山奥にあるらしいこの村と人里を繋ぐ道は閉鎖されてしまったらしいのだ。ラッキー…そして…僕はうっかり食べさせてしまったのだ…ほんのお礼のつもりで…猫男と彼の妹に…異世界から持って来た料理…トマトカレーの一袋を…
「ナニコレ!?おいしい!!」
僕は忘れない、大人しく影が薄い村娘だった猫子ちゃんのあの笑顔を
「…え?…異世界の料理?…あと…2袋だけ?」
僕は忘れない、この料理が簡単に食べれる物じゃないと知り…絶望した猫子ちゃんの顔を
…
……こうして僕たちは、雪解けと共に村を後にした。
猫子ちゃんが好きなだけカレーを食べられるように、異世界の料理「カレー」を再現する冒険の旅へ!
カレー残:2袋
第三話「華麗なる冒険者」
地獄の日々だった、冒険者とは日本でいう派遣社員、日雇い労働者なのである。僕らは生き抜くためにどんな仕事でもした。山の芝刈りからドブ攫いなどマシな方で、モンスターの解体現場やらトイレの汲み取りまでありとあらゆる底辺を経験した…するしかなかった。だってモンスター怖いもん。
…それでもモンスター討伐等の仕事もあるので色々試した結果、僕と猫男が両手盾でモンスターを引き付けて、猫子ちゃんがカギ爪で仕留めるのが僕ら「華麗なる冒険者」のスタイルとなった。
いままで僕らが倒したモンスターを紹介すると
・ドリフタードック(野犬)…集団でいる上、噛まれたら発狂する場合がある、多分狂犬病
・ウォーキングキノコ(歩き茸)…有毒種を毒抜きすると辛い調味料になる、カレー食材の有力候補その1
・フライングポテト(飛芋)…肥沃な土地に植えた作物はモンスター化する事があるらしい、畑から逃げないように柵を設置する必要があるがその工事中めっさ体当たりしてくる。通常の芋より味は良いが身が固くなり煮込み料理に使用するらしい。カレーの材料候補2
・スライム(粘液)…冒険者は長靴必須なのだ。水たまりだと思ってスライムを踏むと足がめっちゃかぶれる、駆除としてバケツで集めて焼くしか無いがめんどいので我々底辺冒険者は松明で発見しだい焼き殺そうとして山火事を起こしたり、広場ではなく近場の河に投げ捨てたり穴に埋めたりとありとあらゆる手抜き駆除をする為、一行に駆除が進まない。
「スライムが増えれば仕事が増える」と考える底辺冒険者までいる始末で、ガチで被害がある農業ギルドや行商ギルドが人員を出し合ってガチ駆除作業を実施する事が増えて、近年冒険者ギルドへの依頼は「スライム駆除」から「スライム駆除の護衛」へと変わってきているらしい。
…
……さて、村を出て日銭を稼ぎつつ各地で食材を集め、カレー研究を進める日々も1年もせずに限界が見えて来た。すなわち…「自分達の足で食材探すの効率悪くね?」「港町とか世界中から食材集まる場所で定住した方がよくね?」である。
うん、目的地は徒歩3か月な港町「サカナール」に決まった。
一刻もはやく冒険者なんかやめたい。
カレー残:2袋
装備1:スパイスシールド=棘付き盾(正男・猫男)
装備2:カギ爪=まんま村伝統武器(猫子)
装備3:カレー食材各種粉末=辛い、目に染みる、傷に入ると激痛(全員)
冒険者としての功績
1:ミートボルの街で名物料理を開発「レッドポイズンキノコ+飛芋」
2:スパイスシールドの発明
3:虫よけの発明
4:魔獣ウシガエルの毒殺
第4話「結成カレー教団」
てんやわんやあって港町サカナールに辿り着き、街の郊外…漁村近くの浜辺に海の家的な店を持つことが出来た僕たちは冒険者を辞めてカレー屋を始めた。
カレーといっても、やたら辛い赤いスープなのであるが…まだ寒い早朝に極寒の海に出る漁師たちにそこそこ受けた。ちなみに一番の売れ筋は、まんま村名物のワサビとサカナールの市場で激安で手に入るタコを合わせた「タコわさ」である。
正直もうそこそこ幸せなのでここで物語をやめたいがそうもいかない…僕の恋人猫子ちゃんはカレーの夢を見て涎を垂らしまくるほどにカレーを切望しているのだ。
そして半年、一年と過ぎ…無駄に人脈が増えて来たある日…僕たちは次なる一手を打つことにした。
「これはこれは…ポイズンマスター正男殿!」カレー食材で数々のモンスターを退けていたらポイズンマスターという称号を得てしまい、殺虫剤や消毒液等を扱うマイナーギルド「ポイズンギルド」の長オイボレルさんと仲良くなった。
そんなオイボレルさんや、その他もろもろ、そこそこのサカナールの有力者を10人ほど集めて「二袋目のカレー」を開放し、スポンサーを付けるというのが作戦である。
作戦は大成功を収めた。
各地の毒草や薬草に精通するポイズンギルド
僕と同じく異世界からラーメンだけ持って転移し、ラーメン屋を開業し市場で顔役をしている青年岡村君(オカムラーメン店主)
なぜか魔王…地方の港町サカナールを治めてた吸血鬼らしい、最近ドーナッツ王国から独立宣言をして魔王になったとか。どうやら人と亜人間で最近戦争があったらしく、多種多様な人種で成り立つ港町サカナールは人間至上の世の気風に逆らい、亜人達の駆け込み寺的ポジションになったとか。そんな影響で他、外国からの亡命者やスパイス探しに力を発揮しそうな犬獣人やら多種多様な人材がスポンサーになってくれた…がだ。
「ウフフフ」
後でしったのだが、このカレーを振る舞ったスポンサー集めの食事会に犯罪ギルドの長が紛れ込んでいたらしい。知らん、知らんがな…
ヤバイ人に目を付けらたらヤバイ事になるのは当然の事、わずか一月後になぜかこの世界に新たな宗教「カレー教」が誕生してしまった。
カレー教はその後数々の事件を起こしてゆくのだが…それはまた今後語るとしよう。
カレー残:1
冒険者→飲食経営→宗教家
続く